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【連載】ナースのための接遇セミナー

第4回 【ナースの接遇】相手に合わせた説明

  • 公開日: 2014/2/3

患者さんのために良かれと思って、優しく丁寧に説明をしていても、時には、相手をイライラさせてしまうことがあります。どうしたら、相手に合った方法で、相手に伝わりやすい説明ができるのでしょうか。具体的な方法を紹介します。


▼看護師のコミュニケーションとマナーについて、まとめて読むならコチラ
看護師のコミュニケーションとマナー


こんな「場面」は身に覚えがありませんか?

Episode1 親切な説明のつもりが…

 ──外来受診を終えた患者さんに、次回の検査に関する情報について、順を追って丁寧に説明していたところ、説明半ばで、「もうわかったから帰る!」と患者さんが行ってしまいました。

 *帰ってしまうまでではなくとも、説明している途中で患者さんのイライラを感じたことは、ありませんか?

Episode2 聞き返されたときの話し方って?

 ──診療を終えた患者さんに向けて、看護師が、「次回は1週間後にいらしていただけますか?」と声を掛けたところ、患者さんから「は?」と聞き返されました。そこで看護師が、「次回は1週間後にいらしていただけますか?」と、再度同じ表現を繰り返しています。

 *人から聞き返されて、もう一度伝えるときには、どのようなことを心掛けたらよいでしょうか?

丁寧な説明が望まれないこともある

 まず、最近の傾向として知っておいていただきたいのは、「待てない患者さん・ご家族」が増えていることです。性急で最後まで話を聞けない、段階的な説明を疎む(すぐ結論を聞きたがる)人が増えています。

 一方、看護師は職業柄、相手が理由を理解できるように、丁寧に説明をする傾向にあります。基本的には、親切で親身、かつ丁寧な説明が望まれがちですが、相手の気質によっては、テンポよく、かいつまんで結論を先に提示するような説明の方が、満足してもらえることがあるのです。

自分の気質、相手の気質は4つのうち、どれか?

 人の性格を見抜いてぴったり合った対応をするのは、難しいと思います。ただし、気質について自分と傾向が違うか似ているかの判断なら、つけやすいのではないでしょうか。そこで今回は、人を大きく4つの気質に分けて対応に生かす考え方を紹介します。

 4つの気質とは、(1)主導的気質、(2)行動的気質、(3)慎重的気質、(4)安定的気質です。まず、自分の気質はこれらのどれに当てはまるかを考えます。

 そして次に、対角の位置にある相手は、自分と真逆の行動や考え方を持つ相手だと考えてみてください。この方への対応が悩みどころなのです。

 エピソード1の例は、(3)慎重的気質と(4)安定的気質に当てはまる人が陥りやすい例です。スピードを求め、結論を急ぐタイプの人に対しても、ゆっくりと丁寧な説明をしてしまい、相手をイライラさせてしまうものです。最重要ポイントを3点ほど挙げて、補足事項は後で読める用紙をお渡しするなど、なるべく短時間にかいつまんで伝えます。

4つの気質

(1)主導的気質の雰囲気

 1. 話のスピード・・・速い
 2. 声の大きさ・・・大きい
 3. 表情・・・少し硬め
(※「素」の顔がみえやすい)

Check!
 1. 堂々としている
 2. 決断力があり、スピードを求める
 3. 変化に強い(アドリブに強い)

(2)行動的気質の雰囲気

 1. 話のスピード・・・速め
 2. 声の大きさ・・・大きめ
 3. 表情・・・人なつこい笑顔

Check!
 1. 積極的で明るい印象
 2. 人とのかかわりが好き
 3. 変化を楽しめる(アドリブに強い)

(3)慎重的気質の雰囲気

 1. 話のスピード・・・遅め、ゆっくり
 2. 声の大きさ・・・小さい
 3. 表情・・・あまり出ない
(※「素」の顔がみえやすい)

Check!
 1. 人前に出るのが苦手、控えめ
 2. 根拠を求める
 3. 急な変化に弱い(アドリブに弱い)

(4)安定的気質の雰囲気

 1. 話のスピード・・・遅め
 2. 声の大きさ・・・ふつう、小さめ
 3. 表情・・・優しいほほえみ

Check!
 1. 調和を大事に、控えめ、癒し系
 2. 人とのかかわりを大切にする
 3. 急な変化に弱い(アドリブに弱い)

聞き返されたときは言葉を換えてゆっくりと

 医療機関にはさまざまな人が訪れますが、高齢者の割合は高く、加齢により聞こえの悪い人も少なくありません。そのため、話を聞き返されることがたびたびあります。

 エピソード2のような場面について現場でよく見かけるのは、この看護師のように、同じスピード、言い回しで、「次回は、1週間後にいらしていただけますか?」と、もう一度繰り返して伝えるという対応です。「聞き取れなかったら、もう一度言えば伝わる」という考えなのでしょう。

 しかしこの対応では、再び「は?」と聞き返される可能性が高いのです。相手の反応を受けて、「今の言い方では、伝わりにくいのだ」と気づき、相手が耳が遠そうならば、そのことに留意した伝え方を工夫することが大切です。

 例えば、最初より少しスピードを落として、はっきり、ゆっくり、少し大きめな声で、「次回は、1週間後に、来てもらえますか?」と、言葉を短くして伝えましょう。急いでいたり慌てていたり、余裕がないときには、経験豊富な看護師にもこのようなことは起こりがちですので、注意が必要です。

「その場面」「その相手」に合ったコミュニケーション

 高齢者だから耳が遠いと思い込んでゆっくりと説明をし、相手をイライラさせてしまう例もあります。相手の状況をとらえて、相手に合った対応をすることは簡単ではありません。でも、自分のコミュニケーション傾向を知っておけば、相手に合わせた対応をとりやすくなります。上記のチェック項目を参照すると、自分の気質が見えてきます。わかりにくい場合は、家族や周りの先輩・同僚などに分類のヒントをもらいましょう。

 相手への対応を工夫する際は、その工夫が相手にどう受け取られているかもよく確認します。例えば、安定的雰囲気の人も、場合によってはスピーディーにテンポよく話してほしいという場面もあります。そこを察して、相手が好む表現を作り出すことです。それらを一つ一つ意識して行うことによって、人とのコミュニケーションがスムーズに運ぶようになります。

 ポイントは、誰でも同じように無意識に対応をしないこと。また、対角線上にある相手に対するコミュニケーションの経験を積んで、少しずつ慣れていくことです。うまくいかなかった時も、「学びのヒント」を得られたと前向きに考えましょう。相手に合わせることを苦痛にならず楽しんでいけることが、コミュニケーション上手になる第一歩です。焦らず進んでいきましょう。

好感度upのなるほどポイント

 3月11日の東日本大震災において、被災した方、関係者の方々には心よりお見舞い申し上げます。その時私は、仙台のクライアント先である医療機関にいました。震災直後は、患者さんの安否と安全確保が、最初にとるべき行動です。でも、若いスタッフが泣き崩れてしまう場面に遭遇した際、頭ではわかっていても行動するのは難しいこともあると身を持って知りました。

 震災では誰もが共通して、今までに体感したことのない恐ろしい思いをしており、被災地では誰もが何らかの被害に遭い、悲痛な体験をしています。例えば、患者さんに「震災時は大変でしたよね」などと聞かれた際、「何とかこちらは大丈夫でした。ところで○○さん(患者さん)は大丈夫でしたか?」などと相手を気遣う流れへと話を進めると思います。

 もちろん、患者さんが看護師の状況を知りたいというのなら、お話ししてよいでしょうが、医療者として接する際には、相手がどうであったのかを傾聴し気遣うことが最優先されます。ノウハウやテクニックも大事ですが、根本的な考えをしっかり持っていることで、緊急時などの際にも、落ち着いて相手のことを考え対応できるようになるのだと思います。日々の積み重ねを大切にしていきたいですね。

(『ナース専科マガジン』2011年4月号より転載)

 次回は「クレーム対応―考え方[前編]」について解説します。

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