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【連載】看護師のための口腔ケア

第3回 口を開けてくれない患者さんへの口腔ケア

  • 公開日: 2009/5/21
  • 更新日: 2020/10/21

なぜ患者さんは口を開けてくれないのでしょうか

看護師さんが臨床で口腔ケアを行う際、一番の障害ともいえるのが、患者さんの「開口障害」「開口拒否」です。口を開けてくれないといった困った状況は、あなたにも経験があるのでは? それでは一体、なぜ患者さんは口を開けてくれないのでしょうか。その原因は大きく2つ、病的原因と心的原因に分けられます。

病的原因による開口障害

病的原因による開口障害は、「口が開けられない」という状態。おもな原因として、中枢神経障害の後遺症など認知障害、意識障害、口腔周囲筋などの機能低下や廃用、顎関節の脱臼などの顎関節異常などがあげられます。

《認知障害のある患者さんへの口腔ケアはあせらずに》

認知障害の場合、基本的に意思の疎通が困難になっています。何をされているのかが理解できない、何を指示されているのかがわからない、あるいは何をして欲しいかを表現することができなくなっていることもあります。こういった状態で無理矢理ケアを行っても、結果的に開口拒否につながります。

大事なのは、あせらずに患者さんへアプローチすることです。具体的な方法としては、後述する心的原因による開口障害ある患者さんへのケアとほぼ同じとなります。

《意識障害のある患者さんへの口腔ケアは誤嚥に気をつけて》

意識障害といってもその程度も様々ですが、昏迷、半昏睡、昏睡状態では、口頭での応答は不可能です。また、せん妄や錯乱がある場合には、意思疎通が困難なだけでなく、口腔内に歯ブラシなどを入れると反射的に噛んでしまう場合もありますので、術者の指を守るための対策・器具も必要となります。更に、嚥下が自分で制御できないことが多いので、誤嚥のリスクは高くなります。

口腔状態が悪化しているということは、口腔内には通常よりも細菌が繁殖していますから、唾などを誤嚥すると、難治な誤嚥性肺炎を誘発する原因となります。吸引をしながらの口腔ケアや、誤嚥をしないような体位の工夫が必要になります。

《顎関節異常のある患者さんや口腔機能低下を起こしている患者さんへは機能向上をめざしたリハビリから》

顎関節異常の場合は、口を大きく開けられなくなるとともに、口を開け続けることができなくなります。その場合、開口補助具などを使って開口を保持してケアを行いますが、根本的な原因は解決されません。

身体を動かしていないと筋肉の伸びや動きが悪くなるのと同様に、長期間にわたる経管摂取や胃ろうにより口腔機能が低下していたり廃用に近い状態になっている場合は、当然ながら開口や閉口に関係する筋肉の動きが悪くなり、口の開け閉めが難しくなっています。ですから、まずは機能を回復させてあげることからはじめましょう。口腔の外側からは、ストレッチをはじめとする可動域訓練などを行います。

少しでも口が開くようであれば内側からは口腔内や舌のマッサージを行い、口腔機能を向上させるような機能的口腔ケア、つまり口腔リハビリを行うことが重要になります。

心的原因による開口拒否

《拒否するには理由があります》

看護師さんが現場で最も困るのが、心的原因による開口障害でしょう。人それぞれ、その原因は、いろいろと考えられますが、主なものとしては次のようなことが原因として考えられます。

まず、過去の口腔ケアや口腔の治療で痛い思いや不快感を経験したことがある、あるいは術者との信頼関係がまったく築かれていなかったために、ケアを拒否するというものです。つまり、口にものを入れられる恐怖感が根付いてしまっている場合です。

次に、これは特に女性に多いのですが、他人に口の中を見せたくない、触らせたくないという羞恥心が原因となっている場合もあります。また、口腔ケアの必要な患者さんは、口腔状態が悪化していることが多いので、口臭がきつくなっていて、それを引け目に感じてしまい、口を開けないということもあります。更には、高齢者の中には、今さら何を行ってもらっても駄目だというあきらめから、手間のかかるケアをわざわざしてもらわなくてもいいという感情があることもあります。

これらすべての患者さんに必要なのは、その患者さんが拒否する原因が何なのかをつきとめて、手順を追ってアプローチすることです。何が何でもケアをするという考えではなく、何日もあるいは何ヶ月もかけて根気良く取り組む姿勢が重要です。患者さんが口腔ケアを受け入れる心構えができていないのに、無理にケアを行ってプラスになることはほとんどありません。

《口腔ケアはコミュニケーションから》

具体的には、患者さんとコミュニケーションをとることからはじめましょう。排泄ケアでも褥瘡ケアでもそうですが、患者さんとのコミュニケーションがとれなければ、何事もうまくいきません。

挨拶からはじまって、まずは簡単な会話をしてみましょう。一緒に歌を歌うのもよい方法です。

とにかく患者さんに、心を開いてもらうようなコミュニケーションが必須となります。いくら頑張ってみても患者さんに拒否反応があるのであれば、その日は、それ以上先に進むことはあきらめるという判断をすることも重要です。 また、会話をする時には、自分の声のトーン、姿勢、表情などにも注意してください。明るい声で、笑顔で、そして相手に安心感を与えるような視線の高さを保ちましょう。

《スキンシップも大切です》

次のアプローチはスキンシップです。スキンシップは、肩に触れたり、握手をしたりという本当にシンプルなところから始まります。それから徐々に段階を追って、フェイスマッサージや唾液腺マッサージをしたりしてスキンシップを深めていってください。マッサージは、気持ちが良ければ心を開いてくれるきっかけになります。そして、順々に、頬、顎、口唇にさわらせてもらえるようにすれば、最後に自然と口を開けてもらえるようになっていきます。

《本格的口腔ケア介入は順々に》

いよいよ口腔内のケアをさせてもらえるようになったとしても、いきなり、清掃とリハビリのフルメニューを行っていいものとは限りません。やはり、心的要因があって今までケアを拒否されていた患者さんですので、最初は短時間のケアが望ましいでしょう。口腔用保湿ジェルを口唇のまわりに塗るだけとか、歯ブラシや球状ブラシを口に入れてみるだけでもかまいません。 それに慣れたら、徐々に、歯を磨いてみたり、球状ブラシでリハビリを行ったりといった、本格的な口腔ケアに移行しましょう。

《口を開けてくれない患者さんへの口腔ケアにあせりは禁物》

開口障害・開口拒否の患者さんには、それぞれに口腔ケアを拒否する理由があります。そして、その理由がわかったところで、すぐに解決するものではないことも多くあります。 まさに「継続は力なり」です。あきらめずに、根気良く患者さんと向き合って、少しずつでも一歩ずつでも前進するように、口腔ケアを続けましょう。

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