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手術看護認定看護師に聞く! 手術室での単回使用製品の取り扱い

  • 公開日: 2021/3/31

手術室ではさまざまな単回使用製品が取り扱われています。ナース専科では、そのなかでも特に看護師が深くかかわる保温用ブランケット、温風式加温装置用ブランケット、体温測定用センサー・プローブの単回使用の状況についてアンケートを実施しました。その結果をもとに手術看護認定看護師のみなさんに、単回使用製品の取り扱いについてお勤めの医療機関での実際の使用状況、再使用についての認識などについて話し合っていただきました。


座談会参加者
都内大学病院勤務 手術看護認定看護師 Aさん
関東近郊大学病院勤務 手術看護認定看護師 Bさん
地方大学病院勤務 手術看護認定看護師 Cさん
一般病院勤務 手術看護認定看護師 Dさん

アンケート結果に「衝撃」と「納得」という感想

—— スリーエム ジャパン株式会社との協賛で実施した「COVID-19パンデミックを迎えて考える、手術室での”あるべき”単回使用」のアンケート結果を見て、どのように感じられましたか。


Aさん 単回使用製品をリユースしている病院があることは知っていましたが、このコロナ禍でのアンケート調査にも関わらず、こんなにもリユースされているという現状を数値で見ると「衝撃的」でした。


Cさん 私は「そうだろうな。これぐらいの数字だろうな」という感じがしました。


Bさん 私も同じくそれほど驚きはなかったです。ただ、単回使用製品をリユースするリスクを認識している看護師が「6割強」との結果でしたが、もう少し高いかと思っていました。また、このコロナ禍で病院の収益も下がっているので、単回使用をしている施設は少ないのかなとも思います。


Dさん 私のところでも、一部の単回使用製品をリユースしているので、アンケートの結果を見ると、当院のスタッフの意識も同じような感じかなと思いました。


—— アンケートでは、COVID-19感染拡大前と比べると、やや適正な単回使用が増え、鎮静化したらまた少し単回使用が減るのではという結果が出ています。皆さんの施設では、このコロナ禍で、感染管理/対策の意識はどのように変わってきているのでしょうか。


Dさん 当院はCOVID-19の感染者を受け入れています。当初は感染対策を徹底し、全例を適正に単回使用としていました。最近はPCR検査や抗原検査が拡充したので、PCR検査の結果で判断しています。温風式加温装置のブランケットはPCR検査陰性の手術患者さんに関しては、手術前後に使用する全身用ブランケットはリユースするケースもありますが、手術中に使用するものはすべて単回使用です。


—— このコロナ禍で、手術室で気をつけていることや単回使用が増えたということはありますか。


Cさん 当院では緊急手術においても術前にPCR検査やCTでの診断を実施して、感染者であれば万全の態勢をとる事になっています。幸い今までは感染のケースが無かったので、通常通り(新型コロナ以外の)感染症であれば捨てるけれども、そうではなければリユースのケースもある。これまでと大きな変化はないです。


Aさん 当院では、予定手術の患者さんに関しては、早い段階で全員にPCR検査を行い、手術も患者さんの陰性を確認してから実施していました。緊急手術の患者さんに関しては、PCR検査とCT、翌日にもう1回PCR検査を行っています。緊急時には陰性の確認ができないこともあり、その場合は手術室の物を全て撤去したり、ビニールを貼る、ごみ箱も一括して捨てられるものに変えました。陰性を確認していても、挿管、抜管の際にはN95マスクを装着するなどの感染対策を実施しています。

 また単回使用製品である温風式加温装置のブランケットも、基本的に全部1回で破棄しています。それに関してはコロナ禍だからということは関係なく、いままでと大きくは変わっていません。


単回使用製品をリユースしている理由は?

—— アンケートでは、COVID-19流行下では単回使用が増えていると答えている人の中にも、鎮静化したら単回使用が減ると予想している人がいますが、一度単回使用にした製品を、またリユースするという方向に戻すのは、どのような理由が考えられますか。


Aさん スタッフ個々で判断するのではなく、病院としてどうするかを決めて欲しいとは思いますが、やはり経済的な問題、コストだと思います。


Bさん 私もおそらく経済的な問題がなければ、全て破棄してしまうと思います。当院では病院長から収益減を数字で示されるので、そうすると現場のスタッフは、「使えるものは使おう」という気持ちになりがちです。また、当院の手術室では、直接患者さんの肌に触れていないものは、COVID-19の感染の有無にかかわらず、単回使用製品でもリユースしているものもあるようです。


Dさん やはりコストの問題だと思います。感染管理室からは、「直接患者さんの皮膚に触れないものは、基本的に感染管理上でも単回で捨てる必要はないし、コストのことも考えて、できるだけリユースしてほしい」と言われていますが、術中使用の温風式加温装置のブランケットは直接患者さんの皮膚に触れますし、リユースするにしても、「血液がついていないか」とか、リユースに際しての保管方法などの問題もあります。当院では破棄してしまったほうが人件費も労力もかからないということで全て破棄しています。


Cさん 感染や危険性を考えると、単回使用のものは単回にすべきだということは十分理解していますが、当院もやはりコストの問題だと思います。例えばリユースではなく、リサイクルのような仕組みにするとよいのかなと思います。


適正な単回使用を増やすためにはどうするか

—— 経済的な問題がクリアできれば、単回使用がもっと増えてくるということですね。その他リユースしていることについて気になることはありますか。


Aさん 10年ほど前に北海道の病院で、単回使用製品の温風式加温ブランケットを複数回使用し、送風管とブランケットの接続部分が外れ、その温風で患者さんが低温熱傷を起こし、下肢を切断するという衝撃的なニュースがありました。コネクションの部分が使えば使うほど緩み外れやすくなってくるなど、安全性に関して使用者のみなさんはしっかり認識した上でリユースしているのだろうかと疑問に思います。何か問題が起こったときに、それを選択した看護師が責任を問われる場合もあることを考えて使っているのだろうかと、考えてしまいます。


Cさん 下肢切断というニュースはみんな知っていて、危険性は重々承知しているので、体位をチェックするときに、必ず接続部が外れていないか、破れていないかは、1時間ごとにチェックしています。一方で、単回使用=感染対策とも言われますが、ブランケットをリユースすることで感染するという実感がないので、感染対策としての単回使用には踏み切れないのではないかと思います。


Dさん 先ほどの低温熱傷の事故ですが、そういったリスクをスタッフが理解できているかは疑問です。私もホース接続部の破損部分をテープで補強し使っているところを注意したことがあります。スタッフの知識についてはしっかりモニタリングして行く必要があると感じます。恐らくメーカーが単回使用を推奨するのは、感染というよりは、事故や適切な効果が得られない可能性があるからだと思いますので、今回はコロナが収束してしまえば、元通りリユースが増えてくるのかなとも思います。


Bさん 当院では厚生労働省から「単回使用医療機器の取り扱い」についての通知が出たときには、「全て単回使用にしよう」という方向に病院自体が動いたことがありましたが、長続きはしませんでした。やはりみなさんがおっしゃるように、感染に関しては意識が低いのかもしれません。当院でも、破損部にテープを貼って再使用していたりするので、「もったいない」という意識が強いのかもしれませんね。


事故や「効果が得られない」などのリスクを意識するには

—— 感染以外のリスク、例えば事故が起こったり、得たい効果が得られないなどを、皆さんが意識するようになるためには、どうしたらいいと思われますか。


Dさん 適正な使い方に関する説明動画を医療機器メーカーがホームページにアップしたりしていますが、スタッフがわざわざメーカーのサイトを見たり、添付文書を読むことは難しいと思っていました。ただ、このコロナ禍でオンラインセミナーが増えていて、当院でも参加する人が多くなってきているので、オンラインセミナーが1つの効果的方法かなと思います。


Aさん 添付文書をきちんと読むって本当に大事だと思うんですね。患者さんに使う以上最低限の理解は必要です。


Bさん 学会セミナーなどでは動画、雑誌では写真など、映像的なものがいいのかなと思います。「単回使用のものを使い続けるとこうなるよ」ということが、実体験でわかると効果的かなと思います。


Cさん 私も映像を見て、「熱傷したんだ」とショックを受けた記憶があるので、映像的なもので啓蒙していくことが大切ではないでしょうか。


Aさん 勉強会もオンラインであればハードルが低くなり、参加しやすくなるのではないでしょうか。また、SNSを利用している人も多いので、ナース専科がメーカーとつないでくれるなど、SNSを利用して学べるものがあれば、若い人たちも参加してくれるのではないかと思います。


—— ナース専科もメディアとして、参加しやすいセミナーや情報発信などを考えていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。


知っておきたい! 単回使用に関する通知

単回使用医療機器の取扱いの再周知及び医療機器に係る医療安全等の徹底について (平成29年9月21日 厚生労働省通知)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000095986_1.pdf

この通知は、添付文書にて再使用の禁止が明記されている単回使用医療機器の取り扱いについて、再度周知するために出されたものです。5つの内容から構成されており、そのなかで、医療機器の単回使用について記されているのは下記の部分です。


1.単回使用医療機器に関する取扱いについては、平成16 年局長通知において、「ペースメーカーや人工弁等の埋め込み型の医療材料等については医療安全や感染の防止を担保する観点から、その性能や安全性を十分に保証し得ない場合は再使用しない等の措置をとるなど、医療機関として十分注意されるよう関係者に対する周知徹底方よろしくお願いする」としている。
また、医療機器の添付文書等の管理については、「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(平成19 年3月30 日付け医政指発第0330001 号・医政研発第0330018 号厚生労働省医政局指導課長・研究開発振興課長連名通知。以下「平成19 年課長連名通知」という。)において、「医療機器の使用に当たっては、当該医療機器の製造販売業者が指定する使用方法を遵守すべきである」としている。
医療機器の使用に当たっては、これらの通知を踏まえ、平成26 年局長通知及び平成27 年局長通知で示したとおり、感染の防止を含む医療安全の観点から、その種類を問わず、添付文書で指定された使用方法等を遵守するとともに、特に単回使用医療機器については、特段の合理的理由がない限り、これを再使用しないこと。



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