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給食栄養委員会で取り組む!患者さんのQOLの向上を目指した排便コントロール【PR】

  • 公開日: 2021/10/13
  • # 注目ピックアップ
  • # 排泄ケア
  • # 排泄援助

 

実施の背景

 リハビリテーション病院である熱川温泉病院は、回復期リハビリテーション病棟(41床)と療養病棟(158床)を備えています。療養病棟では、経管栄養により便秘症状を呈する患者に対し、下剤や浣腸による排便コントロールを行うことが少なくありません。しかし水様便を誘発し、下痢症状と便秘症状が繰り返される状態になっていました。これは患者のQOLを著しく低下させる一方で、看護・介護職の排泄ケアにかかわる業務負担を重くするものとしても問題視されていました。


 給食栄養委員会は、日頃から栄養管理にかかわる管理栄養士、看護師、介護職、言語聴覚士で構成されています。そこで委員会として、経管栄養患者の状況を改善することを目的に、現状の把握と要因分析を行いました。

 

現状の把握と要因分析

 療養病棟(4階)の患者から水様便を繰り返す経管栄養患者8例(男性5、女性3)を抽出し、便性状と排便回数を記録しました。便性状の評価にはブリストルスケール(以下、BS)を使用しました。


 この結果、8例の1週間合計の排便回数は36回、うち水様便を示すBS6とBS7の回数は18回となり、排便の50%が下痢症状であることがわかりました。また、BS3~5と評価された正常便の割合は50%で、BS1とBS2はありませんでした。対象者が摂取している流動食の食物繊維は難消化性デキストリンで、含有量は12.6±1.3g、食物繊維の充足率*は69.2±5.5%でした。


 要因について、療養病棟スタッフを交えて分析したところ、(1)排便コントロールがうまくできていない、(2)加水タイプの流動食では個別の水分調整が難しい、(3)腸内細菌叢が乱れている、 (4)下剤・浣腸の使用ルールが守られていない、(5)食物繊維の量が少ないことが挙げられました。


 これをさらに、対応可能な項目に絞り込み、(1)~(4)の要因についてそれぞれ対策を講じることで、下痢と便秘を繰り返す経管栄養患者の症状の改善が期待できると判断し、総合的に取り組むことにしました。

 

対策と実施


対 策

 要因(1)の対策として、流動食の変更を考えました。メインで使用する流動食が決まっていたこともあり、個々の患者に対し排便状況に応じたコントロールが難しかったためです。要因(2) の対策としては、個別の水分調整が可能な流動食を、要因(3)に対しては、腸内細菌叢に効果的に働くグアーガム分解物(以下、PHGG)が配合された流動食を導入することをそれぞれ考えました。PHGGは、下痢を防ぐものとして欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN)のコンセンサス会議でも推奨度Aの評価を得ています1)


 これら(1)~(3)の条件を満たす流動食を数種類の候補のなかで検討し、PHGGが100kcalあたり1.5g配合されている高濃度流動食(1.5kcal/ml)を採用することにしました。同製品を使用した症例報告が豊富にあること、血糖コントロールなど排便以外の面でも使用用途があること、ラインナップも院内で採用しているものと同じであることが決め手となりました。流動食変更前後の比較は表1のとおりで、結果的に、食物繊維の個別添加は病棟スタッフの手間になるからと除外した要因⑤の対策にもなりました。


 要因(4)については、現状行っている下剤・浣腸の使用記録は継続し、使用ルールの徹底を図るため、再度病棟スタッフへの周知を行うこととしました。



実施方法

 実施期間は、2017年9月13日~10月24日の6週間としました。先に抽出した患者8例に対し、PHGG配合流動食を経鼻投与し、個人の必要水分量に応じ、追加で白湯による水分投与を行いました。


 効果確認は、8例について各々の1日あたりの便性状と回数を観察・記録し、1週間ごとの全例の合計数で、BS6・7とBS3~5の割合の変化をみていきました。

 なお、食事時間は基本的にこれまでと変えないこととしました。

 

実施結果

 流動食をPHGG配合流動食に変更して2週目までは、BS6・7とBS3~5の割合は、変更前とあまり変わらない割合で推移しました。3週目からは、BS6・7が減少傾向をみせ始め、 BS3~5の割合が増加の傾向を示しました。6週間後にはBS6・7の割合は32%まで減り、変更2週前と比較すると18%の減少となりました(図1)。


 患者1例においては、変更6週間後に向けて便性状が改善していく様子が示されました(図2)。また、 BS6・7の割合が減少するに従って、観察をしていた病棟スタッフからは、「鼻につく臭いが軽減した」「黒っぽかった便の色が明るい黄土色にな った」「肛門周辺から臀部にかけての皮膚の赤みが軽減した」などの報告がもたらされました。



 

考 察

 結果的に要因(1)~(5)までの対策として、PHGG配合流動食を取り入れ、下剤・浣腸の適正使用が図られたことで、6週間後にはBS6・7の割合が32%まで減少し、患者が下痢症状を呈する回数が少なくなりました。当初チームで設定したBS6・7を現状の70%まで削減するという目標も達成することができました。


 加えて、便臭気が軽減し、便の色が明るくなったという報告から、腸内の善玉菌が増え腸内細菌叢の状態が整ってきたことがうかがえます。同時にpHのバランスが酸性に傾いてきたことも予想されます。皮膚トラブルの軽減は、水様便(アルカリ性・黒色)による皮膚(弱酸性)への刺激が減ったためとみることができます。これらはPHGGの働きが作用したものと考えられました2)


 さらに、下痢症状が抑えられたことで、看護・介護職の業務負担の軽減が図られました。排便記録からは、水様便では15分ほど要していた排泄ケアが、正常便では8分となり、ケアの時間が短縮されたこともうかがわれました。


 一方で、これまでメインで使用していた流動食に加えて、新たにPHGG配合流動食を導入することで、取り扱う流動食の種類が増えて在庫管理が複雑化したという側面もありました。しかし、腸内細菌叢のバランスが整うことで、下剤・浣腸の使用頻度や皮膚トラブルに対する処置が減り、これに伴い看護・介護従事者の業務負担軽減につながりました。おむつやシーツの交換などの時間が短くなることで、患者とコミュニケーションをとる時間が増えました。皮膚トラブルが軽減することで離床やリハビリテーションを進めることもでき、トータルコストの削減にもつながりました(表2)。これらを考え合わせると、メリットが多いと判断できます。


 今回の取り組みの実施に際しては、病棟スタッフの協力を得て観察・記録を行いましたが、これが着実な排便記録の定着につながりました。また、看護・介護職や管理栄養士らは、排便コントロールは重要な観察項目であることを改めて認識することができました。さらに、PHGG配合流動食を取り入れてから6週間後に、患者に使用感を確認したところ、「今のほうがよい」という声を数名から聞くことができました。


 

おわりに

 ここで得られた結果をもとに、排便コントロールが難しい経管栄養患者に対するPHGG配合流動食の本格的な導入を行いました。この取り組みは2017年に行われたものですが、2021年現在では治療の一つの選択肢としてその使用が定着しています。患者の排便状況に問題が生じた場合、病棟から主治医に連絡がいき、主治医から主体的にPHGG配合流動食への変更と必要水分量に応じた加水量などの指示が出されます。


 導入当初は、加水型からの変更により、水分投与の手間が増えましたが、排便管理は療養病棟にとっては大きな問題であるため、「患者の排便コントロールが順調になり、排泄ケアにかかる時間が減少するメリットのほうが大きい」と看護師の立場からコメントがありました。下剤・浣腸の使用についても、新たな流動食の使用で投与量の調整に苦労した経緯はありますが、現在では使用ルールの標準化が図られています。

 今後もPHGG配合流動食の使用を継続し、経管栄養患者がQOLを低下させずに療養できる環境を提供していきたいと考えています。


*食物繊維の必要量は日本人の食物繊維摂取基準2015年版の生活習慣病の一時予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量を基に算出。

 


 

【参考引用文献】

1) Meier R, Gassull MA: Consensus recommendations on the eff ects and benefi ts of fi ber in clinical practice. Clin Nutr Suppl. 1: 73-80, 2004.
2) 厚生労働省: e-ヘルスネット. 栄養・食生活, 腸内細菌と健康. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html(2021年8月5日閲覧)



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