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【連載】小児科で必要な看護技術を学ぼう!

第1回 プリパレーション(プレパレーション)|処置を受ける子どもへの支援

  • 公開日: 2022/1/17

はじめに

 ユニセフの「子どもの権利条約」では、18歳未満の子どもについて権利を持つ主体として位置づけ、人権を認めています。

 「子どもの権利条約」では、「生命、生存および発達に対する権利」「子どもの最善の利益」「差別の禁止」などが謳われていますが、「子どもの意見の尊重」として、子どもが自分自身に関係のある事柄に対する意見を表明できることが権利として認められた点が大きな特徴です。

 この条約が定める権利は大きく分けて、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の4つがあり、ここでも「参加する権利」として、「自由に意見を表したり、団体を作ったりできること」が認められています1)

 さらに、小児医療における子どもの権利については、「子どもの権利条約」に則り、1988年5月にオランダで開催された第1回病院のこどもヨーロッパ会議において「病院のこども憲章」が合意され、子どもにとって必要となる医療環境の原則が示されました。ここでは、子どもや親たちが年齢や理解度に応じた方法で説明を受けること、自らのヘルスケアにかかわるすべての決定において説明を受けて参加する権利を有することなどが示されています2)

 このように、病院という特殊な環境下であっても、医療行為を受ける子どもがそれぞれの年齢、発達や理解度に応じた説明を十分に受けた上で、治療やケアに参加する権利を持ち、その権利を擁護することが、私たち小児医療に携わる看護師には求められています。

 この子どもの権利を尊重し、具体的に推進していく心理社会的支援の一つがプリパレーションです。

プリパレーションとは

 プリパレーションは、準備、予習、心構えを意味する言葉です。小児医療のなかでは、「病気、入院、検査、処置などによる子どもの不安や恐怖を最小限にし、子どもの対処能力を引き出すために、その子どもに適した方法で心の準備やケアを行い、環境を整えること」3)と定義されます。

 病気になり体験する出来事のほとんどは、子どもにとって“~される”という受け身の体験が多く、“自分で選ぶ機会”は限定されます。プリパレーションを通して、子どもが持つ不安や恐怖を軽減し、子どもがこれから起こる出来事を正しく理解した上で、自分自身の力でその出来事に対処することができたと前向きに感じられるように支援します。

プリパレーションの意義と目的

 プリパレーションは、子どもに行われる検査や処置、治療などについて説明したり、オリエンテーションをすることだけを指す言葉ではありません。子どもが病気になって起こる出来事について心理的準備を行い、対処できる力を高められるように、家族(保護者)とともに子どもを支えるすべてのプロセスを指します。

 これらを通して、「子どもの権利」や「病院の子ども憲章」を尊重し、子どもと家族のQOLを高めることがプリパレーションの意義になります。その点を踏まえ、プリパレーションの目的は以下の通りです。

子どもの病気や入院、検査、治療、処置などに対する理解を助けること
子ども自身が気持ち(不安や恐怖など)や考えを表現できるような機会を提供し、環境を整えること
子どもが抱いているかもしれない空想や誤解について理解し、正すこと
子どもが病気や入院、検査、治療、処置などに向き合い、乗り越える力を高め、心理的にネガティブな影響を最小限にすること
子どもの病気や入院、検査、治療、処置などを通して体験する出来事によるネガティブな影響を最小限にすること
子どもと家族、医療者との信頼関係を築くこと
子どもの病気からの回復を促すこと

プリパレーションのプロセス

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