【連載】術後疼痛管理のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
					
					意思疎通が困難な小児に対する術後の鎮痛剤投与のタイミングはどう判断する?				
				- 公開日: 2022/6/3
 
A 受け持ちの看護師や保護者からの情報と術式から痛みを予測し、投与のタイミングを図りましょう。
今回の質問のように、痛みの有無や強さを伝えることが困難である新生児や障害を持つ一部のお子さんでは、表情や行動から痛みの評価をすることは成人に比べると難しくなります。基本的には、フェイススケールやBPS(Behavioral Pain Scale)など医療者側の視点で客観的に評価するツールを使用しますが、受け持ち看護師や保護者からの情報も参考になります。
硬膜外麻酔や神経ブロックなど持続カテーテルがない場合、開腹・開胸手術や四肢骨折の手術など強い痛みが予想される術式では数日アセトアミノフェンの定時投与も検討されます。アセトアミノフェン以外の鎮痛薬の頓服処方がない場合、投与のタイミングは迷います。手術後数日は痛みが全くないことは考えづらいですし、意思疎通が困難な患者さんの場合は睡眠と覚醒リズムや体動時の表情や行動の様子などから見極めるのが良いかもしれません。
また、小児患者さんで手術直後に興奮状態のことがありますが、痛みなのか麻酔覚醒時の興奮(せん妄)なのかうまく判断がつかないことは少なくありません。ある報告では、目が合わない、周囲の状況が理解できない様子は麻酔覚醒時の興奮が多く、異常な顔の表情、泣いている、なだめられない小児では痛みのよるものが多いと言われています。
BPSは痛みの評価スケールの1つです。フェイススケールは患者さんの表情から客観的に評価する方法で、BPSは人工呼吸器装着中の患者さんの表情、行動、呼吸器との同調性の3点から評価できます。スコアは3〜12となり、数字が大きいほど鎮痛が得られていないと考えられます。
| 項目 | 説明 | スコア | 
| 表情 | 
    穏やかな | 
    1 | 
| 一部硬い(たとえば、まゆが下がっている) | 
    2 | |
| 全く硬い(たとえば、まぶたを閉じている) | 
    3 | |
| しかめ面 | 
    4 | |
| 上肢 | 
    全く動かない | 
    1 | 
| 一部曲げている | 
    2 | |
| 指を曲げて完全に曲げている | 
    3 | |
| ずっと引っ込めている | 
    4 | |
| 呼吸器との同調性 | 
    同調している | 
    1 | 
| 時に咳嗽、大部分は呼吸器に同調している | 
    2 | |
| 呼吸器とファイティング | 
    3 | |
| 呼吸器の調節がきかない | 
    4 | 
日本呼吸両方医学会 人工呼吸中の鎮静ガイドライン作成委員会:人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン(2022年5月11日閲覧)http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page03.htmlより引用
引用・参考文献
●日本呼吸両方医学会 人工呼吸中の鎮静ガイドライン作成委員会:人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン(2022年5月11日閲覧)http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page03.html
●M Somaini, T Engelhardt, et al:Emergence delirium or pain after anaesthesia–how to distinguish between the two in young children: a retrospective analysis of observational studies. Br J Anaesth 2016;116(3):377-83.
 
 
												