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【連載】術後疼痛管理のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

高齢者への鎮痛薬の使用の注意点

  • 公開日: 2022/7/1

Q 高齢者の場合、鎮痛剤を使用して不穏になったり、使用しても効果がなく不穏になったり、基礎疾患のある場合には副作用も考慮しなければならないと思います。高齢者への鎮痛剤の使用で特に気をつけたほうがよいことはありますか。

A オピオイド鎮痛薬では、特に鎮静作用による上気道閉塞や呼吸抑制が起きやすいことに注意が必要です。

 高齢者では鎮痛薬の副作用には注意を要するものが少なくありません。麻薬性オピオイド鎮痛薬(フェンタニルやモルヒネ、ペチジンなど)や非麻薬性オピオイド鎮痛薬(ペンタゾシン、ブプレノルフィン、トラマドールなど)は強力な鎮痛効果の反面、呼吸抑制、鎮静・傾眠、嘔気嘔吐などの副作用が強く現れることがあります。鎮静作用では上気道開大筋が緩み舌根沈下や気道閉塞が起きやすく、元々組織が脆弱で張りがないため若年成人に比べると特に注意が必要です。呼吸数低下を特徴とする呼吸抑制や、嚥下機能低下に加え嘔気嘔吐による誤嚥も気になる監視ポイントです。

 またオピオイド鎮痛薬を抗うつ薬や抗パーキンソン病薬の服用中の患者さんに投与した際、セロトニン症候群(不穏や興奮、発熱、発汗、下痢、振戦など)発症の可能性があることも覚えておきましょう。

 NSAIDsでは腎機能低下、喘息、消化性潰瘍の既往では注意が必要ですが、アセトアミノフェンは比較的に安全に使用できます。アセトアミノフェンでは規定量以上の大量使用にならなければ肝機能障害のリスクは低いです。副作用の観点から、鎮静や呼吸への影響のないアセトアミノフェンから開始しNSAIDsへ、痛みの強さに合わせてオピオイド鎮痛薬の順に使用を検討します。

 不穏やせん妄は特に高齢者で好発しますが、最近では術後せん妄予防には、入院時より非薬理学的な多職種による介入を行うことが強く薦められています。早期離床、適切な栄養と体液量の維持、服用薬の評価(リスク薬剤の確認と調整)、適切な疼痛コントロール(オピオイドの必要量の低減も目指す)、睡眠リズム適正化、聴覚と視覚サポート(補聴器や眼鏡など)、身体抑制の最小化、見当識(時刻や場所など)を意識したコミュニケーション、定期的なスクリーニング評価、適切な手術麻酔プロトコール(せん妄予防の投薬はしない、リスク薬剤の使用低減、脱水予防、脳波を参考に全身麻酔は深くしすぎない等)が具体的な項目に挙げられます1)。ちなみに術後使用する鎮痛薬ではメペリジン(ペチジン)やモルヒネは術後せん妄の誘因にもなります。

引用文献
1)CG Hughes, CS Boncyk, DJ Culley, et al. American Society for Enhanced Recovery and Perioperative Quality Initiative Joint Consensus Statement on Postoperative Delirium Prevention. Anesth Analg. 2020;130(6):1572-90.


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