Mallampati分類(マランパチ分類)
- 公開日: 2024/11/18
Mallampati分類は何を判断するもの?
Mallampati分類は、気管挿管の難しさ(挿管困難)を予測するために用いられるスケールです。1980年代に、麻酔科医のMallampatiによって作られました1)。
気管挿管は、気管内にチューブを挿入・留置し、気道を確保する方法です。心肺蘇生を行う場合や人工呼吸管理を行う場合などに実施されます。
例えば、全身麻酔下では、意識が消失するとともに呼吸が抑制され、自発呼吸がなくなることから、多くの場合において気管挿管を行い、人工呼吸器による呼吸管理を行います。全身麻酔導入後に挿管困難となった場合、あらゆる機能が抑制された状態の患者さんにとって大きなリスクとなるだけでなく、複数回にわたり挿管を試みることになれば、計り知れない負担がかかることになります。そのため、Mallampati分類をはじめとするさまざまな指標を用いて、挿管困難の可能性があるかどうかを事前に評価しておくことが重要です。
Mallampati分類はこう使う!
Mallampati分類では、開口状態での口蓋垂の見え方で、挿管困難の可能性を予測します。
具体的には、患者さんに座った状態で、最大限に開口してもらいます。そして、声を出さず、前方に舌を突出させるよう伝え、口腔内を観察します。口蓋垂の見え方によって、ClassⅠ~Ⅳの4段階に分類し、ClassⅢ以上で挿管困難の可能性が高いと考えます(図)。
Mallampati分類の大きな利点は、なんといっても、その簡便さです。口腔内を観察するだけで、気管挿管に関するリスクを予測できるだけでなく、挿管前に適切な対策を講じることができ、トラブルを未然に防ぐことにつながります。
ただし、Mallampati分類はあくまでも目視での評価であり、検査者により評価に差が生じることがあるため、注意が必要です。また、口腔内の観察のみで評価を行うため、正確に予測できるとはかぎらず、ClassⅠやClassⅡに分類されても、実際には気管挿管が難しい場合もあります。Mallampati分類だけに頼るのではなく、他の評価方法や患者さんの全体的な状態を考慮したうえで、評価することが大切です。
なお、Mallampati分類は、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)のスクリーニングとしても用いられており、OSA陽性者の比率はClassⅠで約30%、ClassⅡで約50%、ClassⅢとClassⅣで約70%であるという報告があります2)。
図 Mallampati分類
引用・参考文献
2)TJ Nuckton,et al:Physical examination: Mallampati score as an independent predictor of obstructive sleep apnea.Sleep 2006;29(7):903-8.
●日本麻酔科学会≪安全委員会≫:安全な鎮静のためのプラクティカルガイド.(2024年10月10日閲覧)https://anesth.or.jp/files/pdf/practical_guide_for_safe_sedation_20220628.pdf
●浅井隆:Dr. あさいの みんなの気道確保 第2巻 気道確保のエキスパートになろう!.中外医学社,2016.
●足立裕史,他:挿管困難のリスクファクター,扁桃腺!.日本臨床麻酔学会誌 2019;39(1):42-6.
●寺井岳三:気道確保困難に役立つ気道の解剖学.日本臨床麻酔学会誌 2010;30(3):333-41.
●佐藤大三:気道管理困難例への対処.人工呼吸 2011;28(2):177-83.
●小澤章子:気道の確保と挿管困難症 ②挿管困難症.日本臨床麻酔学会誌 2014;34(3):439-45.
●對木悟,他:歯科医師による閉塞性睡眠時無呼吸の早期発見.睡眠口腔医学 2022;9(2):25-32.