好酸球性副鼻腔炎の重症度分類
- 公開日: 2025/3/27
好酸球性副鼻腔炎の重症度分類は何を判断するもの?
好酸球性副鼻腔炎(Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis:ECRS)の重症度分類は、疾患の進行度を評価し、治療方針の決定や医療費助成の対象となるかを判断するために用いられる指標です。
ECRSは、両側の鼻腔に多発性の鼻茸(鼻ポリープ)を認める難治性の慢性副鼻腔炎です。成人以降に発症し、主な症状として粘稠性の高い鼻汁、高度の鼻閉、嗅覚障害などがみられます。アスピリン喘息を含め気管支喘息を合併するケースが多く、鼻閉による口呼吸で喘息発作が誘発されると呼吸困難に陥るおそれがあるほか、難治性の中耳炎(好酸球性中耳炎)を合併し、高度な難聴を来すこともあります。
ECRSに対しては、内視鏡下鼻副鼻腔手術や経口ステロイド薬などによる治療が行われますが、手術をしても再発しやすく、6年で50%が再発すると報告されています1)。経口ステロイド薬は即効性があり、鼻茸が縮小して鼻閉や嗅覚障害の改善につながる反面、副作用の観点から、長期の使用は避けたほうがよいと考えられています。また、経口ステロイド薬で軽快しても、体調の変化や上気道感染などで増悪するため、生涯にわたり悩まされる可能性が高い疾患といえます。
近年では、生物学的製剤(デュピルマブ)が保険適用になり、一部の患者さんに用いられるようになりましたが、薬価が高く、大きな負担がかかります。生物学的製剤を使っていない患者さんでも、長期の治療が必要になることから、経済的な負担は避けられません。患者さんの負担を軽減し、継続して治療を受けられるようにするためにも、重症度を評価して、医療費助成の対象となるかどうかを判断することは大切です。
好酸球性副鼻腔炎の重症度分類はこう使う!
重症度評価の対象となるのは、好酸球性副鼻腔炎の診断基準「JESRECスコア」で11点以上の患者さんです(表1)。そのため、まずはJESRECスコアによる評価を行い、対象に該当する場合はCT 所見、末梢血好酸球率、合併症の有無をもとに、軽症、中等症、重症の3段階に分類します(表2)。
重症度分類で中等症以上の患者さん、または、好酸球性中耳炎を合併する場合は、医療費助成の対象となります。症状の程度により基準を満たさない患者さんでも、高額な医療の継続が必要な場合は、医療費助成の対象と認められることがあります。
表1 好酸球性副鼻腔炎の診断基準(JESRECスコア)
項目 | スコア |
---|---|
①病側:両側 | 3点 |
②鼻茸あり | 2点 |
③CTにて篩骨洞優位の陰影あり | 2点 |
④末梢血好酸球(%) 2< ≦5 | 4点 |
5< ≦10 | 8点 |
10< | 10点 |
JESREC スコア合計:11点以上を示し、かつ鼻茸組織中好酸球数(400倍視野:視野数22)が70個以上存在した場合をDefinite(確定診断)とする。 |
表2 重症度分類
1)又は2)の場合を対象とする。
1)重症度分類で中等症以上を対象とする。
2)好酸球性中耳炎を合併している場合。
1)重症度分類
CT所見、末梢血好酸球率及び合併症の有無による指標で分類する。
A項目:①末梢血好酸球が5%以上
②CTにて篩骨洞優位の陰影が存在する。
B項目:①気管支喘息
②アスピリン不耐症
③NSAIDアレルギー
診断基準JESRECスコア11点以上であり、かつ
1.A項目陽性1項目以下+B項目合併なし:軽症
2.A項目ともに陽性+B項目合併なし or
A項目陽性1項目以下+B項目いずれかの合併あり:中等症
3.A項目ともに陽性+B項目いずれかの合併あり:重症
2)好酸球性中耳炎を合併している場合を重症とする。
好酸球性中耳炎の診断基準
大項目:
中耳貯留液中に好酸球が存在する滲出性中耳炎又は慢性中耳炎
小項目:
(1)にかわ状の中耳貯留液
(2)抗菌薬や鼓膜切開など、ステロイド投与以外の治療に抵抗性
(3)気管支喘息の合併
(4)鼻茸の合併-4つの項目のうち、
大項目と小項目の2項目以上を満たす場合を確実例とする。
ただし好酸球性肉芽腫性多発血管炎、好酸球増多症候群を除外する。
引用・参考文献
●藤枝重治,他:「第115回日本耳鼻咽喉科学会総会臨床セミナー」好酸球性副鼻腔炎:診断ガイドライン(JESREC Study).日本耳鼻咽喉科学会会報 2015;118(6):728-35.
●日本鼻科学会「鼻副鼻腔炎診療の手引き作成委員会」:鼻副鼻腔炎診療の手引き.日本鼻科学会会誌 2024;63(1):1-85.
●秋山貢佐:好酸球性副鼻腔炎治療における内服ステロイド薬の役割.日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 2024;4(3): 139-42.