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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

ECS(エマージェンシー・コーマ・スケール)

  • 公開日: 2025/3/17

ECSは何を判断するもの?

 ECSはEmergency Coma Scaleの略で、主に救急医療の現場で使用されるスケールです。患者さんの意識レベルを迅速かつ正確に評価するために用いられます。

 意識レベルを評価するスケールとしては、Japan Coma Scale(JCS)やGlasgow Coma Scale(GCS)が広く知られています。JCSは3-3-9度方式とも呼ばれ、意識レベルを「Ⅰ:覚醒している」「Ⅱ:刺激に応じて一時的に覚醒する」「Ⅲ:刺激しても覚醒しない」の3段階に大別し、さらにそれぞれを3段階に細分化して評価を行います。簡便で実用性の高いスケールであるものの、評価者により結果にばらつきが生じるところが欠点として挙げられます。

 GCSでは開眼、発語、運動の3項目をそれぞれ評価してスコア化し、その合計をもとに緊急度・重症度を評価します。評価者によるばらつきが少ない一方、複雑で算出に時間がかかるという問題があります。

 こうした両スケールの問題点を改善する目的で開発されたのがECSです。ECSは評価者間の一致率が高く、簡潔かつ正確な評価が可能であることが示されており1)、2)、非常に有用な評価スケールといえます。しかし、医療の現場ではJCSやGCSが使われることが圧倒的に多く、広く普及しているとはいえないのが現状です。

ECSはこう使う!

 ECSでは、意識レベルを「Ⅰ桁:覚醒している」「Ⅱ桁:覚醒できる」「Ⅲ桁:覚醒しない」の大きく3段階に分類し、それぞれをさらに細分化して評価していきます(表)。

 意識レベルを1桁、2桁、3桁に分類して評価する構成はJCSと変わりませんが、覚醒の判断材料を「自発的な開眼、発語または合目的な動作のうちどれか一つを観察できること」と明確にしている点が特徴として挙げられます。また、1桁と2桁の小分類は2段階に簡略化され、3桁の小分類は脳幹障害の存在を表現できるように配慮されています。患者さんの状態をスケールに沿って分類してスコアリングを行い、スコアが高いほど意識障害が深刻であることを示します。

表 Emergency Coma Scale

ECS(エマージェンシー・コーマ・スケール
高橋千晶,他:新しいスケール:Emergency Coma Scaleの開発の経緯と有用性の検討について.Journal of the Japanese Council of Traffic Science 2016;16(1):4.より引用

引用・参考文献

1)Takahashi C et al:A simple and useful coma scale for patients with neurologic emergencies: the Emergency Coma Scale.Am J Emerg Med 2011;29(2):196-202.
2)Takahashi C et al:Evaluation of the accuracy of the Emergency Coma Scale: E-COMET STEP II.Am J Emerg Med 2016;34(1):100-1.
●高橋千晶,他:新しいスケール:Emergency Coma Scaleの開発の経緯と有用性の検討について.Journal of the Japanese Council of Traffic Science 2016;16(1):3-8.
●高橋千晶,他:Emergency Coma Scaleの有用性の検証.Journal of Japanese Congress on Neurological Emergencies 2015;27(3):17-22.

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