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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

シンシナティ病院前脳卒中スケール(Cincinnati Prehospital Stroke Scale:CPSS)

  • 公開日: 2021/9/29

CPSSは何を判断するもの?

 CPSSは、脳卒中の可能性を判定するためのスケールです。


 脳卒中の可能性を判定するためのスケールとしては、CPSSのほかにロサンゼルス病院前脳卒中スクリーン(Los Angeles Prehospital Stroke Screen:LAPSS)や、倉敷病院前脳卒中スケール(Kurashiki Prehospital Stroke Scale:KPSS:)があり、KPSSでは重症度まで評価できることで知られています。


 これらのスケールのなかでも、CPSSは評価項目が少なく、比較的高い確率で脳卒中の可能性を判定できるため、救急の現場でも広く活用されています。


 脳卒中は、発症から治療までの期間が短ければ短いほど予後が良好となります。脳卒中を疑った場合には速やかに対応が可能な医療機関、専門医につなげる必要があります。


CPSSはこう使う!

 CPSSでは、顔のゆがみ、上肢挙上、構音障害の3つの徴候から脳卒中の可能性を評価します(表)。項目はいずれもわかりやすく、特殊な検査なども必要ないため、このスケールを用いることで誰でも脳卒中が疑われるか否かを評価することが可能です。


表 CPSS

◆顔のゆがみ(歯を見せるように、あるいは笑ってもらう)

正常:顔面が左右対称

異常:片側が他側のように動かない


◆上肢挙上(閉眼させ、10秒間上肢を挙上させる)

正常:両側とも同様に挙上、あるいはまったく挙がらない

異常:一側が挙がらない、または他側に比較して挙がらない


◆構音障害(患者に話をさせる)

正常:滞りなく正確に話せる

異常:不明瞭な言葉、間違った言葉、あるいは全く話せない

※3つの徴候のうち、1つでも異常を認めた場合は脳卒中を強く疑う


Kothari RU, et al:Cincinnati Prehospital Stroke Scale:reproducibility and validity.Ann Emerg Med 1999;33(4):373-8.より引用


 ただし、CPSSの項目がすべて陰性だった場合でも、嘔吐を伴う頭痛が続いている、意識がなく瞳孔が小さくなっている、突然の激しい頭痛を認めるなどといったときには、脳卒中の可能性を否定できないため注意が必要です。


CPSSの結果を看護に活かす!

 CPSSは、主に救急搬送の場で活用されています。救急救命士が現場でCPSSを用いて脳卒中を疑った場合に、適切な医療機関を選定し、速やかな検査や早期の治療介入につなげることに役立っています。


 ただ、脳卒中は救急の場面だけでなく、病棟や外来でも遭遇する疾患です。病棟でいつもと様子が違う患者さんがいた場合や、外来を受診した患者さんのトリアージなど、看護の臨床の現場でCPSSを用いることで、脳卒中の可能性を高い確率で発見することができます。


 迅速な評価と、医師や看護師をはじめとする多職種で適切な連携をとることで、検査や治療開始までの時間を短縮し、良好な予後につなげることが大切です。


参考文献

●梁成勲,他:脳卒中病院前救護.神経治療学 2019;36(2):67-72.(2021年9月13日閲覧)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/36/2/36_67/_pdf/-char/ja

●鈴木伸行:脳卒中病院前救護の標準化 PSLS(Prehospital Stroke Life Support)の位置付け.脳卒中の外科;39(1):31-4.(2021年9月13日閲覧) https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/39/1/39_1_31/_pdf

●Kothari R et al:Early stroke recognition:developing an out-of-hospital NIH Stroke Scale. Acad Emerg Med 1997;4(10):986–90.

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