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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症度分類

  • 公開日: 2024/12/2

OHSSの重症度分類は何を判断するもの?

 卵巣過剰刺激症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome:OHSS)の重症度分類は、 OHSSの重症度を評価するためのスケールです。婦人科、生殖医療の現場で活用されます。

 主に不妊治療で用いる排卵誘発剤によって卵巣が過度に刺激され、卵巣の腫大、胸水・腹水の貯留、血管内脱水による血液濃縮などの症状が起こることをOHSSといいます。

 OHSSが起きやすい症例として、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」「第2度無月経患者などゴナドトロピンの使用量が多量になりやすい症例」「AMHが高値の症例」「過去にOHSSや多胎妊娠の既往がある症例」などがあり1)、リスクが高い患者さんについては予防を考えた治療が必要です。

 OHSSが重症化すると、急性腎不全、血栓症、肺水腫といった生命を脅かす合併症が生じる危険もあります。最近では、クリニックで不妊治療を受けるケースも多くみられますが、OHSSが重症化する可能性が高いと考えられる場合は、速やかに設備の整った高次医療機関に管理を依頼するといった対応が求められます。

 OHSSのリスクをゼロにすることは難しいため、早期の発見に努めるとともに、重症度分類を用いて患者さんの状態を評価し、適切な対応につなげることが重要です。

OHSSの重症度分類はこう使う!

 OHSSの重症度分類では、自覚症状、胸水・腹水の程度、卵巣の大きさ、血液検査の4つの項目をもとに、OHSSを軽症、中等症、重症の3つに分類します(表)。

 また、前述したように、OHSSが重症化する可能性が高い場合、高次医療機関での管理を検討する必要がありますが、適切な判断が行えるように、「高次医療機関での管理を考慮する基準」(中等症に相当)が設けられています(表2)。

 さらに、患者さんを受け入れた高次医療機関が、入院による管理が必要か否かを判断するための指標として「入院管理を考慮する基準」(重症に相当)も設けられています(表3)。重症度分類とあわせて、これらの基準も参考にしながら、管理方法が検討されます。

表1 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症度分類

軽症中等症重症
自覚症状腹部膨満感腹部膨満感、嘔気・嘔吐腹部膨満感、嘔気・嘔吐、腹痛、呼吸困難
胸腹水小骨盤腔内の腹水上腹部に及ぶ腹水腹部緊満を伴う腹部全体の腹水、あるいは胸水を伴う場合
卵巣腫大*≥6cm≥8cm≥12cm
血液所見血算・生化学検査がすべて正常血算・生化学検査が増悪傾向Ht>45%
WBC>15,000/mm3
TP<6.0 g/dLまたはAlb<3.5g/dL
*左右いずれかの卵巣の最大径を示す
**ひとつでも該当する所見があれば、より重症な方に分類する

表2 高次医療機関での管理を考慮する基準

所見基準
症状腹部膨満感、嘔気・嘔吐
腹水の程度上腹部に及ぶ腹水
卵巣最大径≥8cm
血算・生化学検査増悪傾向
妊娠の有無妊娠あり

表3 入院管理を考慮する基準

所見基準
自覚症状腹部膨満感、嘔気・嘔吐、腹痛、呼吸困難
腹水の程度腹部緊満を伴う腹部全体の腹水、あるいは胸水を伴う場合
卵巣腫大(最大径)≥12cm
血液所見Ht≥45%
WBC≥15,000/mm3
TP<6.0g/dLまたはAlb<3.5g/dL
卵巣過剰刺激症候群の管理と防止のためのガイドライン作成小委員会:卵巣過剰刺激症候群の管理方針と防止のための留意事項.平成20年度生殖・ 内分泌委員会報告.日本産科婦人科学会 2009;61(5):1138-45.より引用

引用・参考文献

1)卵巣過剰刺激症候群の管理と防止のためのガイドライン作成小委員会:卵巣過剰刺激症候群の管理方針と防止のための留意事項.平成20年度生殖・内分泌委員会報告.日本産科婦人科学会 2009;61(5):1138-45.
●厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS) 平成23年3月(令和3年4月改定).p.11.(2024年11月14日閲覧)https://www.pmda.go.jp/files/000240131.pdf
●日本産婦人科医会:(3)生殖補助医療.4.不妊症の治療.研修ノート No.112.(2024年11月14日閲覧)https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%883%EF%BC%89%E7%94%9F%E6%AE%96%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E5%8C%BB%E7%99%82/

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