網膜色素変性症の重症度分類
- 公開日: 2024/12/11
網膜色素変性症の重症度分類は何を判断するもの?
網膜色素変性症の重症度分類は、矯正視力と視野狭窄の有無から、網膜色素変性症の重症度を評価するためのものです。主に眼科の外来や病棟で用いられます。
網膜色素変性症は、夜盲、視力の低下、視野狭窄、羞明などを引き起こす、進行性の遺伝性疾患です。進行は個人差が大きく、良好な経過を辿る場合もあれば、社会的失明(矯正視力が約0.1以下)に至ることもあります。
現在、確立された治療法はなく、進行を遅らせることを目的として、サプリメントや内服薬が処方されることがあるほか、白内障や黄斑浮腫を合併している場合は、これらに対する治療が行われます。遺伝子治療や再生医療などの研究も進められています。
網膜色素変性症は進行が緩やかなため、初期段階ではほとんど自覚されないケースも少なくありません。進行状況を正確に判断し、治療方針の決定や適切なケアの提供につなげるためにも、重症度分類による評価を行うことが大切です。
また、網膜色素変性症は指定難病とされており、基準を満たすと判断されれば、医療費助成を受けることができます。基準を満たすか否かの判断にも、重症度分類による評価が必要となります。
網膜色素変性症の重症度分類はこう使う!
前述したように、網膜色素変性症の重症度分類では、矯正視力および視野狭窄の有無によって、網膜色素変形症の重症度を評価します(表)。
視力検査では、裸眼視力と矯正視力を測定します。矯正視力は、他覚的屈折検査の結果をもとに測定しますが、『網膜色素変性症診療ガイドライン』ではこれに加えて、「日常的に継続して装用可能な眼鏡やコンタクトレンズでの矯正視力も確認しておくことが望ましい」としています1)。
視野検査も、網膜色素変性症の重症度を評価するうえで非常に重要です。視野検査の結果は、検査者によってばらつきが生じる可能性があるため、信頼性の高い結果を得るためには、経験豊富な検査者による実施が求められます。
矯正視力と視野のいずれも、良好なほうの眼の測定値をもとに評価を行い、Ⅰ~Ⅳ度に重症度が分けられます。Ⅱ度以上で医療費助成の対象となりますが、Ⅱ度以上に該当しない患者さんであっても、高額な医療を継続することが必要な場合は、医療費助成の対象として認められます。
表 網膜色素変性症の重症度分類
Ⅰ度 | 矯正視力 0.7 以上、かつ視野狭窄なし |
---|---|
Ⅱ度 | 矯正視力 0.7 以上、視野狭窄あり |
Ⅲ度 | 矯正視力 0.7 未満、0.2 以上 |
Ⅳ度 | 矯正視力 0.2 未満 |
注1:矯正視力、視野ともに、良好な方の眼の測定値を用いる。 注2:視野狭窄ありとは、中心の残存視野がゴールドマンI-4視標で20度以内とする。 |
引用・参考文献
●厚生労働省:90 網膜色素変性症.(2024年11月14日閲覧) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/090-202404-kijyun.pdf