突発性難聴の重症度分類、突発性難聴・聴力回復の判定基準
- 公開日: 2024/12/20
突発性難聴の重症度分類は何を判断するもの?
突発性難聴の重症度分類は、突発性難聴の程度を評価するためのスケールです。
突発性難聴は、何の前触れもなく、ある日突然、聴力が低下する疾患です。発症のピークは男女とも60歳前後で1)、ほとんどが左右どちらか一方の耳(ごくまれに両耳)に発症し、耳鳴りや耳閉塞感、めまいを伴うケースもみられます。発症には、内耳の循環障害、ウイルス感染、免疫異常、ストレスなどが関与していると考えられていますが、原因は未だ解明されていないのが現状です。
突発性難聴を放置すると、聴力が失われるリスクもあります。有効な治療法が確立されておらず、発症後、いつまでに治療をすれば効果が期待できるのか明確なエビデンスもありませんが、できれば発症7日以内、遅くとも2週間以内に治療を行うことが重要と考えられており、『急性感音難聴診療の手引き 2018年度版』でも、早期に治療を開始することを推奨しています2)。
重症度によって、予後や治療内容が変わってくるため、患者さんが急な難聴を訴える場合は速やかに診断を行うとともに、突発性難聴の重症度分類で重症度を評価し、適切な治療に結びつけることが求められます。
突発性難聴の重症度分類はこう使う!
突発性難聴の重症度分類では、初診時の純音聴力を測定し、突発性難聴の程度を評価します(表1)。聴力レベルによりGrade1~4に分類し、めまいがある場合はa、めまいがない場合はbで表します。Gradeが上がるほど重症度が高いと判断され、めまいがあるaのほうが、めまいのないbに比べて、予後不良の傾向にあることを示すデータもあります3)、4)。
また、重症度分類のほかに、聴力回復の判定基準も設けられており(表2)、突発性難聴の進行具合や聴力回復の程度を評価し、診断や治療の際に役立てられます。
表1 突発性難聴の重症度分類
重症度 | 初診時聴力レベル |
---|---|
Grade1 | 40dB未満 |
Grade2 | 40dB以上、60dB未満 |
Grade3 | 60dB以上、90dB未満 |
Grade4 | 90dB以上 |
注1 標準純音聴力検査における0.25kHz、0.5kHz、1kHz、2kHz、4kHzの5周波数の閾値の平均とする 注2 この分類は発症後2週間までの症例に適用する 注3 初診時めまいのあるものではaを、ないものではbを付けて区分する(例:Grade3a、Grade4b) |
表2 突発性難聴・聴力回復の判定基準
治癒(全治) | 1.0.25kHz、0.5kHz、1kHz、2kHz、4kHzの聴力レベルが 20dB以内に戻ったもの 2.健側聴力が安定と考えられれば、患側がそれと同程度まで改善したとき |
---|---|
著明回復 | 上記5周波数の算術平均が30dB以上改善したとき |
回復(軽度回復) | 上記5周波数の算術平均が10~30dB改善したとき |
不変(悪化を含む) | 上記5周波数の算術平均が10dB未満の改善のとき |
引用文献
2)日本聴覚医学会:急性感音難聴診療の手引き 2018年度版.2018年,金原出版,P.62-3.(2024年11月14日閲覧) https://audiology-japan.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/Web%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%94%A8PDF%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB%EF%BC%9B%E6%80%A5%E6%80%A7%E6%84%9F%E9%9F%B3%E9%9B%A3%E8%81%B4%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D2018%E5%B9%B4%E7%89%88.pdf
3)中島務,他:全国疫学調査における突発性難聴、特発性感音難聴の重症度基準.急性高度難聴調査研究班 平成10年度研究業績報告書.p.15-9.(2024年11月14日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/2900
4)佐藤美奈子,他:突発性難聴の重症度分類と予後との関係.日本耳鼻咽喉科学会会報 2001;104(3):192-7.