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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

脂肪萎縮症の重症度分類

  • 公開日: 2024/11/11

脂肪萎縮症の重症度分類は何を判断するもの?

 脂肪萎縮症の重症度分類は、脂肪萎縮症の重症度を評価し、医療費助成の対象となるかを判定するために用いられるスケールです。

 脂肪萎縮症は、脂肪組織が減少または消失する疾患です。病因により、先天性(遺伝子変異など)と後天性(自己免疫、感染、薬剤など)に大別され、さらに、脂肪萎縮の分布によって、全身性、部分性、限局性に分けられます。また最近では、早老症候群や自己炎症症候群に伴う脂肪萎縮も分類に加えられています。非常に稀な疾患で、指定難病とされています。

 根本的治療は確立されておらず、脂肪萎縮症に起因する代謝異常(糖尿病、高中性脂肪血症、脂肪肝、インスリン抵抗性など)に対する治療が中心となります。主に、食事療法、運動療法、薬物療法が行われ、薬物療法では、2013年にレプチン補充治療(メトレレプチン治療)が保険適用となりました。レプチン補充治療は、脂肪萎縮症に伴う代謝異常の主因がレプチンと呼ばれるホルモンの欠乏であると考えられることから、不足したレプチンを補う治療法で、合併症や予後の改善につながることが期待されています。

 レプチン補充治療の適応と判断されれば、治療を受けることができますが、治療に用いる薬剤であるメトレレプチンは高価なため、患者さんの経済的負担は大きくなります。また、レプチン補充治療以外の治療を行う場合でも、長期にわたり治療を継続することで負担がかかる可能性もあります。患者さんの負担を減らし、安心して治療を続けられるようにするためにも、医療費助成の対象となるかどうか、重症度分類を用いて判定することが必要です。

脂肪萎縮症の重症度分類はこう使う!

 脂肪萎縮症の診断は、診断基準に基づいて行われ、先天性全身性脂肪萎縮症、後天性全身性脂肪萎縮症、家族性部分性脂肪萎縮症、後天性部分性脂肪萎縮症(抗HIV治療薬や骨髄移植等による薬剤性または二次性の場合は除く)で、それぞれの診断基準が策定されています。

 診断基準により確定診断がなされ、かつ、重症度分類(表)にて重症例と判定されると、医療費助成の対象となります。また、症状の程度により、重症度が一定以上に該当しない患者さんでも、高額な医療の継続が必要な場合は、医療費助成の対象と認められることがあります。

表 脂肪萎縮症の重症度分類

Aを認め、B、C、Dのいずれか1つを認める場合を重症例とし、対象とする。

A.HOMA-IR(空腹時血糖値mg/dL×空腹時インスリン値µU/mL/405)≧2.5

B.以下のいずれか1つを満たす
1.早朝空腹時血糖値 126mg/dL以上
2.75gOGTTで2時間値 200mg/dL以上
3.随時血糖値 200mg/dL以上
4.HbA1c 6.5%以上

C. 空腹時インスリン値 30µU/mL以上

D. 血中中性脂肪値 150mg/dL以上
厚生労働省:265 脂肪萎縮症.(2024年10月10日閲覧)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/265-202404-kijyun.pdfより引用

参考文献

●「脂肪萎縮症診療ガイドライン」作成委員会:臨床重要課題「脂肪萎縮症診療ガイドライン」の作成.日本内分泌学会雑誌 2018;94 Suppl.(2024年10月10日閲覧)https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/94/S.September/94_1/_pdf/-char/ja
●厚生労働省:265 脂肪萎縮症.(2024年10月10日閲覧)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/265-202404-kijyun.pdf
●海老原健:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業.脂肪萎縮症に関する調査研究 平成25年度 総括・分担報告書.(2024年10月10日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133151/201324098A/201324098A0001.pdf

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