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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Crowe分類

  • 公開日: 2023/12/5

Crowe分類は何を判断するもの?

 Crowe分類とは、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)による股関節脱臼の程度を評価するためのスケールです。

 股関節は、腸骨・坐骨・恥骨が癒合してできた寛骨臼に、先端がボール状に丸くなった大腿骨頭(骨頭)がはまり込むような形で構成されています。正常な場合、寛骨臼が骨頭を覆うことで関節の安定が維持されていますが、発育性股関節形成不全では、何らかの原因で、骨頭が寛骨臼から完全に外れた脱臼や外れかかったりする亜脱臼が起こるほか、寛骨臼の発育が不完全な寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)により、股関節が不安定な状態になります。乳児期に健診などで発見されることが多く、二次性変形性股関節症の原因にもなるため、早期に治療することが重要です。

 発育性股関節形成不全の治療としては、整復治療(リーメンビューゲルと呼ばれる治療用装具の装着)、牽引治療、手術治療がありますが、脱臼の程度により治療が異なるため、Crowe分類で脱臼の程度を評価することが求められます。

Crowe分類はこう使う!

 Crowe分類では、発育性股関節形成不全による股関節の脱臼の程度を4段階に分類します。具体的には、両側の涙痕を結んだ線と骨頭下縁までの距離をA、腸骨上縁から坐骨下縁までの距離をBとし、5A/B×100で算出された数値をもとに評価していきます。骨頭直径の0~1/2(50%未満)の上方偏移をGroup1、1/2〜3/4(50~75%)の上方偏移をGroup2、3/4〜1(75~100%)の上方偏移をGroup3、骨頭1つ分以上(100%以上)の上方偏位をGroup4に分類します(図)。

図 Crowe分類

Crowe分類

A:両側の涙痕を結んだ線(Y)から骨頭下縁までの距離
B:骨盤高。腸骨上縁(X)から坐骨下縁(Z)までの距離。通常、骨頭直径は骨盤高の 1/5程度とされる

Crowe分類の結果を看護に活かす!

 前述したように、発育性股関節形成不全を適切に治療しないまま放置すると、二次性変形性股関節症につながるおそれがあります。発育性股関節形成不全が発見されたら早期に治療を開始し、経過観察を行っていくことが重要です。治療方針は脱臼の程度により異なるため、Crowe分類による評価を正確に把握して、どの程度の脱臼なのか、どういった治療が必要になるのかを理解し、状態観察や介助などに活かせるとよいでしょう。

 脱臼を予防するための育児指導も大切です。抱っこの仕方やおむつの当て方などを指導するのとあわせて、気になることがあればかかりつけ医に相談したり、小児を対象とした整形外科を受診したりするよう伝えます。

参考文献

●日本整形外科学会/日本股関節学会:変形性股関節症診療ガイドライン2016.(2023年11 月13日閲覧)https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/osteoarthritis-of-the-hip/osteoarthritis-of-the-hip.pdf
●熊谷匡晃:股関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社,2020.
●Crowe JF,et al:Total hip replacement in congenital dislocation and dysplasia of the hip.J Bone Joint Surg Am 1979;61(1):15-23.

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