Binetの病期分類
- 公開日: 2023/12/7
Binetの病期分類は何を判断するもの?
Binetの病期分類とは、慢性リンパ性白血病の病期を評価するためのスケールです。慢性リンパ性白血病の病期分類のスケールは、Binetの病期分類のほかにRaiの病期分類があり、一般的にアメリカではRaiの病期分類が使用され、Binetの病期分類はヨーロッパを中心に使用されています。
慢性リンパ性白血病は、がん化したBリンパ球が血液や骨髄などで増殖する疾患です。一般に50歳以降の中高年に好発し、女性よりも男性に多くみられます。日本では稀な疾患で、年間の発症率は10万人に1人となっています1)。緩徐に進行することから、発症初期はほとんど症状を認めませんが、進行するとリンパ節腫大、貧血、倦怠感、発熱などが出現します。そのため、病期を評価し、適切な治療につなげることが必要です。
Binetの病期分類は、治療開始時期や治療方針を決定していく際はもちろん、経過観察をするうえでも大切な指標であり、予後の予測にも役立ちます。
Binetの病期分類はこう使う!
Binetの病期分類では、ヘモグロビン値、血小板数、リンパ節腫大の有無によって、慢性リンパ性白血病をA~Cの3段階に分類します。リンパ節領域は、頭頸部、腋窩、鼠径部、脾臓、肝臓の5領域で評価(両側でも1領域として評価)しますが、腫大の有無を確認する際はCTや超音波検査といった画像検査は用いず、触診などの身体診察のみで判断します。
病期ごとの平均生存期間は、A期で10年以上、B期で8年以上、C期で6.5年とされています2)。なお、慢性リンパ性白血病の治療は化学療法が主体となりますが、活動性病変がない早期の患者さん(A期またはB期)については、治療をしても生存期間は延長しないため、治療は行いません3)。
表 Binetの病期分類
病期 | 分類規準 |
---|---|
A | Hb≧10g/dL+血小板≧10万/μL+リンパ領域腫大が2カ所以下 |
B | Hb≧10g/dL+血小板≧10万/μL+リンパ領域腫大が3カ所以上 |
C | Hb<10g/dLまたは血小板<10万/μL リンパ節腫大領域数は規定しない |
Binetの病期分類の結果を看護に活かす!
慢性リンパ性白血病の患者さんの看護にあたるときには、病期を把握し、状態観察などに活かせるとよいでしょう。Binetの病期分類でC期と判定されるなど、予後が良好ではない患者さんに対しては、精神的なサポートも含めたケアを心がけることも大切です。
疾患や治療の影響で抵抗力が低下するため、感染症には十分注意する必要があります。人混みを避け、手洗い、うがいをしっかり行うよう指導します。また、貧血や出血傾向がある場合には、思わぬ転倒に注意が必要です。
引用・参考文献
2)Eichhorst B, et al:Chronic lymphocytic leukaemia:ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis,treatment and follow-up.Ann Oncol 2015 ; 26(5): 78-84.
3)日本血液学会:白血病.造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版.(2023年11月13日閲覧).http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html
●日本癌治療学会:白血病.がん診療ガイドライン(2023年11月13日閲覧).http://jsco-cpg.jp/guideline/12.html