CARGスコア(抗がん剤の有害事象予測ツール)
- 公開日: 2024/1/12
CARGスコアは何を判断するもの?
CARGスコア(抗がん剤の有害事象予測ツール)とは、高齢者に抗がん剤を投与するにあたって、有害事象の発生リスクを予測するためのスケールです。
一般に高齢者は、身体機能や臓器機能の低下、多剤併用による服薬量の増加などにより、抗がん剤による有害事象の発生リスクが高い傾向にあります。有害事象が発生すると、QOLの低下や予後に影響を及ぼすおそれもあるため、高齢者に抗がん剤を投与する場合は、事前に治療効果や有害事象の発生リスクを予測することが必要です。
スケーリングによって、有害事象が生じる可能性が高いと予測される場合は、毒性が低い抗がん剤を選択したり、投与量を調整したりするなど、事前の対策につなげることができると考えられています。
CARGスコアはこう使う!
CARGスコアでは、表にある11のリスク因子に該当するか否かでスケーリングを行い、有害事象が生じる可能性を「low」「medium」「high」の3つの段階に分類します。スコアは19点が最高となり、点数が高いほど、抗がん剤による有害事象のリスクも高いと判断されます。リスクごとの有害事象の発現率は、Low riskで36.7%、medium riskで62.4%、high riskで70.2%とされ1)、抗がん剤の毒性の予測が可能となることが証明されています。
表 CARGスコア
リスク因子 | スコア |
---|---|
72歳以上 | 2 |
消化管または尿生殖器原発腫瘍 | 2 |
計画された薬剤用量が標準投与量 | 2 |
多剤併用レジメン | 2 |
ヘモグロビン<11g/dL(男性)、10g/dL(女性) | 3 |
クレアチニンクリアランス<34mL/分 | 3 |
聴力は普通か、やや難聴 | 2 |
過去6カ月間に転倒の既往あり | 3 |
服薬に介助を要する | 1 |
ワングロック歩くことができない | 2 |
過去4週間に肉体的、精神的理由で社会参加が減っている | 1 |
low:0~5
medium:6~9
high:10~19
Hurria A,et al:Validation of a Prediction Tool for Chemotherapy Toxicity in Older Adults With Cancer.J Clin Oncol 2016;34(20):2366-71.より引用
CARGスコアの結果を看護に活かす!
抗がん剤はがん細胞のみならず、正常な細胞をも攻撃するため、さまざまな有害事象を引き起こします。発熱、倦怠感、嘔気・嘔吐、口内炎といったQOLを低下させる症状が生じるほか、場合によっては、命にかかわる重篤な有害事象が出現することもあります。また、抗がん剤の投与により心身に過度な負担が生じると、身体能力や社会性が低下することも考えられます。
抗がん剤を投与する高齢の患者さんの看護を行う際は、CARGスコアを参考にして有害事象の発生リスクを把握しながら、状態観察の頻度や日常生活の介助などについて考えられるとよいでしょう。ただし、リスクが低いからといって有害事象が起こらないわけではありません。リスクが高い患者さんはもちろん、リスクが低いと評価された患者さんに対しても、バイタルサインや検査データなどを確認しつつ、いつもと様子が変わったところはないか、注意してみていくことが重要です。
引用・参考文献
●澤木正孝:高齢がん患者のがん薬物療法.日本老年医学会雑誌 2022;59(4):472-7.
●日本臨床腫瘍学会,他:高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?.高齢者のがん薬物療法ガイドライン.南江堂,2019,p.2-6.(2023年12月8日閲覧) https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001132/4/cancer_drug_therapies_for_the_elderly.pdf