新国際病期分類(R-ISS分類)
- 公開日: 2023/2/20
R-ISS分類は何を判断するもの?
新国際病期分類(R-ISS分類)は、多発性骨髄腫の病期を評価するためのスケールです。
多発性骨髄腫は、血液細胞の一種である形質細胞が悪性化して増殖していく疾患ですが、血液細胞が正常に作られなくなるため汎血球減少症を引き起こし、貧血や倦怠感のほか、腎機能障害、骨折など、さまざまな症状が現れるようになります。
他のがんと同じく、病期によって予後予測や治療方針が異なりますが、多発性骨髄腫の病期分類としては、血清β2ミクログロブリン値と血清アルブミン値でスケーリングする国際病期分類(ISS分類)が広く使用されていました。しかし近年では、ISS分類に高リスク染色体異常の有無と血清 LDH 値という新たな評価項目を加えたR-ISS分類が用いられるようになってきています。
R-ISS分類はこう使う!
前述したように、R-ISS分類では血清β2ミクログロブリン値と血清アルブミン値のほか、高リスク染色体異常の有無と血清 LDH 値によって、多発性骨髄腫の病期を1~3の3段階に分類します(表)。
多発性骨髄腫の予後は、染色体・遺伝子異常の有無により大きく左右されます。現在は、プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬といった新規の薬剤の開発も進んだことで、以前に比べて予後や疾患のコントロールも改善してきており、R-ISS分類によるスケーリングは、新規の薬剤や自家末梢血幹細胞移植による治療を受けた患者さんの予後を予測するうえでも役立っています。
表 R-ISS分類
Stage | 基準 | 生存期間中央値(月) | 無増悪生存割合(月) |
---|---|---|---|
Ⅰ | 血清β2ミクログロブリン値<3.5mg/L、かつ血清アルブミン値≧ 3.5g/dL、かつ高リスク染色体異常*がなく血清LDH値正常範囲 | NR | 66 |
Ⅱ | StageⅠでもⅢでもない | 83 | 42 |
Ⅲ | 血清β2ミクログロブリン値>5.5mg/L、かつ高リスク染色体異常または血清LDH値高値 | 43 | 29 |
Reprinted with permission. American Society of Clinical Oncology. All rights reserved. Palumbo A, et al.J Clin Oncol 2015;33 (26):2863-9.を参考に作成
R-ISS分類の結果を看護に活かす!
多発性骨髄腫は進行すると予後も悪くなるため、R-ISS分類で病期や予後を把握し、起こりうる症状などを考慮に入れながら、身体的・精神的なケアにつなげることが大切です。
また、多発性骨髄腫では骨髄腫細胞が破骨細胞を活性化させるため、わずかな負担や衝撃でも骨折する可能性があります。特に病期が進むとリスクが高くなりますので、医師の指示のもとで適度な運動に取り組み骨折を予防したり、転倒防止策も含めた安全対策を講じられるとよいでしょう。
引用・参考文献
●日本血液学会:第Ⅲ章 骨髄腫.造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 (2023年1月25日閲覧) http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/3_1.html
●木崎 昌弘:教育講演 多発性骨髄腫の病態と治療の進歩.日本内科学会雑誌 2021;110 (9):2028-36.
●村上博和:多発性骨髄腫診療の進歩と将来.THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2020;70:175-85.