1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 消化器科
  5. 消化器疾患
  6. 厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)

  • 公開日: 2023/2/22

厚生労働省急性膵炎重症度判定基準は何を判断するもの?

 厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)は、予後因子と造影CT所見から急性膵炎の重症度を評価するためのスケールです。

 急性膵炎は年々増加傾向にあるとされており1)、2)、重症例では救命が困難になるケースもあることから、発症が疑われた場合は速やかに重症度評価を行い、治療を選択・開始することが求められます。

 本スケールは、迅速かつ簡便に明快なスケーリングができるように改定が重ねられ、評価項目なども改められていますが、感度が低いという特徴があり、入院時に軽症と判断されても、後になって重症化する患者さんもいます3)。そのため、過小評価に注意し、繰り返し重症度判定を実施して状態変化を見逃さないことが重要です。

厚生労働省急性膵炎重症度判定基準はこう使う!

 厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)は、予後因子スコアと造影CT Gradeで構成されており、どちらを使用しても重症度を判定することができます。

 予後因子スコアについては、バイタルサインや採血データなどでの評価が可能なため、予後因子スコアによる重症度判定は少なくとも診断時、翌日、さらにその翌日までは繰り返し実施することが推奨されています3)

 予後因子スコアが2点以下の場合、症状が軽く状態が安定していれば一般病棟での管理が可能ですが、重症例では厳重な呼吸・循環管理が必要になり、自施設で対応できないときは対応可能な施設への転送を検討することが求められます4)

表 厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)

厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)
武田和憲,他:急性膵炎重症度判定基準(2008)の検証.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究.平成20年度 総括・分担研究報告書 2009:49-50.より引用 (2023年1月25日閲覧) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/kenkyuhan_pdf/houkoku1_10.pdf

厚生労働省急性膵炎重症度判定基準の結果を看護に活かす!

 急性膵炎は良性疾患であるものの、未だ致死率が高い疾患の一つです。特に、重症例では救命率が低くなるため、バイタルサインや状態チェックの頻度、インアウトの管理などに注意します。

 前述したように、厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)は感度が低く3)、初期評価が軽症であっても急激に増悪するケースがあるほか、予後因子スコアが2点以下でも、全身状態が不安定な場合は厳重な呼吸・循環管理や慎重な経過観察が必要になります。治療開始後の数日間はスケーリングを繰り返し行い、患者さんの状態に変化がみられた場合は、速やかに医師に報告することが大切です。

引用・参考文献

1)S Hamada,et al:Nationwide epidemiological survey of acute pancreatitis in Japan.Pancreas 2014;43(8):1244-8.
2)A Masamune,et al:Clinical practice of acute pancreatitis in Japan: An analysis of nationwide epidemiological survey in 2016.Pancreatology 2020;20(4):629-36.
3)急性膵炎診療ガイドライン 2021 改定出版委員会,編:急性膵炎診療ガイドライン 2021 第5版.金原出版,2021,p.59-60.(2023年1月25日閲覧) http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2021.pdf
4)急性膵炎診療ガイドライン 2021 改定出版委員会,編:急性膵炎診療ガイドライン 2021 第5版.金原出版,2021,p.82.(2023年1月25日閲覧) http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2021.pdf
●片岡慶正:急性膵炎重症度判定基準2008改訂 検証と今後の展開.日本消化器病学会雑誌 2008;105 (8):1166-73.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
4位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
5位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
6位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
7位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636