エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)
- 公開日: 2023/3/1
エジンバラ産後うつ病自己評価票は何を判断するもの?
エジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)とは、産後うつ病のスクリーニングを行うためのスケールです。10種類の質問項目に対して、患者さん自身が記入した結果を点数化してスケーリングを行います。
産後うつ病は、うつ病の既往がない女性でも有病率が17%に及ぶとされており1)、重症な場合には自死や虐待、児との愛着障害を引き起こすことも少なくありません。産後の女性にとって注意すべき合併症の一つといえます。
EPDSは、簡易的に産後うつ病のスクリーニングが可能であるため、近年では、妊娠中から産褥期まで健診などの際に複数回行われることが多くなっています。スケーリングによって産後うつ病が疑われる場合には、適切な医療へのアクセスを促すだけでなく、行政機関とも連携した支援の仕組みも各自治体で調えられています。
エジンバラ産後うつ病自己評価票はこう使う!
EPDSは、10種類の質問項目で構成され、患者さん自身が検査用紙に記入する方式のスケールです(表)。
過去1週間の気分について、それぞれの項目を0~3点で患者さん自身が評価し、全体の合計点でスケーリングを行います。日本国内では、産後4週目において合計点が9点以上の場合に産後うつ病の可能性が高いと判断されますが、8点以下は産後うつ病ではないということではありません2)、3)。また、項目7~10は特に重症度が高い産後うつ病の症状に当てはまるため、これらの項目の点数が高い場合は、十分な注意が必要とされています4)、5)。
EPDSは、あくまで産後うつ病のスクリーニングを行う検査であるため、確定診断や鑑別診断には、精神科医による診察や他の検査を行うことが求められます。
表 エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)
※著作権については、日本産婦人科医会が英国のCambridge University Pressに許諾を得ている
エジンバラ産後うつ病自己評価票の結果を看護に活かす!
産後うつ病は自死や虐待のリスクが高くなるため、医療機関だけで対応するのではなく、行政機関とうまく連携し、継続した支援を行っていく必要があります。
また、上述したとおり、EPSDの合計点が低いからといって産後うつ病ではないというわけではなく、不眠、悲哀感、流涙、自傷の衝動の点数が高い患者さんでは重度な産後うつ病の可能性もあります。患者さん本人や家族への対応に注意し、適切なケアと支援につなげることが大切です。
引用・参考文献
2)岡野禎治,他:日本版エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の信頼性と妥当性.精神科診断学 1996;7(4):525-33.
3)山下洋,他:産後うつ病の母親のスクリーニングと介入について.精神神経学雑誌 2003;105(9):1129-35.
4)Postpartum Depression:Action Towards Causes and Treatment (PACT)Cosortium:Heterogeneity of postpartum depression:a latent class analysis. Lancet Psychiatry 2015;2(1):59-67.
5)日本精神神経学会,他監:周産期うつ病に対するエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の使用方法.精神神経学雑誌第124巻別冊 精神疾患を合併した,或いは可能性のある妊産婦の診療ガイド 総論編.日本精神神経学会 2022,p.G13-8.(2023年2月15日閲覧) https://fa.kyorin.co.jp/jspn/guideline/sG13-18_s.pdf
●日本周産期メンタルヘルス学会:周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017.(2023年2月15日閲覧) http://pmhguideline.com/consensus_guide/consensus_guide2017.html
●三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社:令和元年度 厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業:産婦健康診査におけるエジンバラ産後うつ病質問票活用に関する調査研究「外国語版EPDS活用の手引き」.(2023年2月14日閲覧) https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/04/koukai_200427_8_2.pdf
●浅野友理恵,他:エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)を用いた支援に関する文献的考察.新潟医療福祉学会誌 2019;18(2):6-12.