Kirklin分類(カークリン分類)
- 公開日: 2022/11/18
Kirklin分類は何を判断するもの?
Kirklin分類とは、心室中隔欠損症(ventricular septal defect:VSD)を中隔の欠損位置で分類するスケールです。
VSDは、先天性心疾患の約20%を占めるとされています1)。生まれつき左室と右室を隔てる中隔に欠損孔が存在する疾患ですが、欠損孔の位置や大きさによって重症度や予後、自然閉鎖率などは異なります。
Kirklin分類では、欠損孔の位置を4つに分類して評価することで、大動脈弁逸脱や大動脈弁閉鎖不全症などの合併リスクを予測できるほか、将来的な治療方針を考慮する際にも重要な指標となります。
なお、欠損孔の位置でVSDを分類するスケールとしては、Kirklin分類以外にも、Soto分類や東京女子医科大学日本心臓血圧研究所分類が知られています。Soto分類は欠損孔の位置を3つに分類した簡易的なスケールであるのに対し、東京女子医科大学日本心臓血圧研究所分類は、日本人を含む東洋人に多い漏斗部欠損を2つのタイプに分けた5つの分類で評価します。どのスケールを用いるかは医療機関によって異なりますが、近年ではSoto分類が広く活用されています。
Kirklin分類はこう使う!
Kirklin分類は、VSDを欠損孔の位置で分類するスケールです。心エコー検査で欠損孔の位置を確認したうえで、VSDを4つに分けます(表)。
表 Kirklin分類
Ⅰ型 | 漏斗部欠損 |
---|---|
Ⅱ型 | 膜性部欠損 |
Ⅲ型 | 流入部欠損 |
Ⅳ型 | 筋性部欠損 |
例えば、Ⅰ型は日本人を含む東洋人に多いタイプですが、右室流出路の肺動脈弁直下が欠損しており、大動脈弁右冠尖の逸脱や大動脈弁閉鎖不全症を起こしやすいとされています。一方、Ⅳ型は発症頻度が低く、小欠損では自然閉鎖する可能性が高いタイプです。
上述したように、VSDの重症度や予後は欠損孔の大きさだけでなく、位置にも依存します。Kirklin分類を用いて欠損孔の位置を可視化することで重症度や予後を予測して、経過観察や治療方針の決定に役立てていきます。
Kirklin分類の結果を看護に活かす!
Kirklin分類によるスケーリングは、基本的に医師が行いますが、VSD患者さんの看護にあたる場合は、どのような分類・評価がされているか確認しておくようにしましょう。特に、Ⅰ型など重症化しやすいタイプの患者さんでは、心不全徴候の有無を把握し、慎重にバイタルサインをチェックすることが大切です。
また、欠損が小さく、特に症状を認めない場合は、自然閉鎖を期待して経過観察となることもあります。定期的に検査を受け、気になる症状があればすぐに受診するよう指導します。
引用・参考文献
1)日本循環器学会,他:2021年改訂版 先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン.2021,p.27-8.(2022年11月8日閲覧) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Sakamoto_Kawamura.pdf●日本循環器学会,他:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).2018,p.69-71.(2022年11月8日閲覧)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_h.pdf
●山岸敬幸:基礎 心臓の発生「房室中隔の発生」.日本小児循環器学会雑誌 2013;29(2):18-24.
●富松宏文:心室中隔欠損─心エコー診断について─.J Pediatr Cardiol Card Surg 2010;26(2):132-9.