RomeⅣ診断基準
- 公開日: 2022/10/13
RomeⅣ診断基準は何を判断するもの?
RomeⅣ診断基準は、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の国際的な診断基準です。
RomeⅣ診断基準は2016年に発表されましたが、それ以前に用いられていたRomeⅢ診断基準と異なる点として、診断要件から腹部不快感が除外されたこと、腹痛がより高頻度に起こるものを病的であるとしたことなどが挙げられます。
なお、Rome診断基準では、便の性状や排便頻度といった症状のみでIBSの診断を行うため、類似した症状を引き起こす器質的疾患の除外が困難ですが、不必要な検査を省略することができ、有意に疾患を絞り込める点が評価されています1)。
RomeⅣ診断基準はこう使う!
RomeⅣ診断基準は、表1のとおりです。この基準に照らしてIBSの診断が行われます。IBSと診断された場合はさらに、便の性状によって「下痢型」「便秘型」「混合型」「分類不能型」の4つのタイプに分類され(表2)、治療方針を検討する際の指標として役立てられます。
表1 RomeⅣ診断基準
繰り返す腹痛が、最近3カ月の間で平均して少なくとも週1日あり、次のうち2つ以上の基準を満たす
①排便に関連する
②排便頻度の変化を伴う
③便形状(外観)の変化を伴う
表2 IBSの分類
便秘型 IBS(IBS-C) | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの |
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下痢型 IBS(IBS-D) | 軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの |
混合型 IBS(IBS-M) | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの |
分類不能型 IBS | 便性状異常の基準が上記3タイプのいずれも満たさないもの |
前述したように、RomeⅣ診断基準を用いることで、簡易的かつ効率的にIBSの診断につなげることができますが、器質的疾患の除外が難しいというデメリットもあるため、診断をする際は、体重減少や血便の有無など、他疾患を示唆する所見がないか慎重に問診、触診を行う必要があります。
RomeⅣ診断基準の結果を看護に活かす!
IBSは、頻回な排便や腹痛などで日常生活に支障を来すケースも多く、症状を悪化させないための指導が求められます。
例えば、食生活に関しては、規則正しい食事と十分な水分摂取を心がけるよう伝えます。脂質、カフェイン、香辛料、ミルクや乳製品(乳糖不耐症の場合)などは、IBSの症状を増悪させる可能性があり2)、3)、摂取を控えるように指導することも重要です。
また、IBSのタイプによって、症状や選択される治療法は異なります。RomeⅣ診断基準において、患者さんがどのタイプに分類されているかを確認し、状態把握に努めるとともに、症状が改善するまで治療が継続できるよう支援します。
引用・参考文献
2)Susan J Shepherd,et al:Dietary triggers of abdominal symptoms in patients with irritable bowel syndrome: randomized placebo-controlled evidence.Clin Gastroenterol Hepatol 2008;6(7):765-71.
3)日本消化器病学会:機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版).p.38.(2022年9月10日閲覧) https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf#page=49
●日本大腸肛門病学会「過敏性腸症候群について」(2022年9月10日閲覧) https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=5