PaPスコア(Palliative Prognosis Score)
- 公開日: 2022/7/21
PaPスコアは何を評価するもの?
PaPスコア(Palliative Prognosis Score)は、月単位の中期的な生命予後を予測するためのスケールです。
生命予後を正しく予測することは、患者さんや家族が終末期に向かって行うべき医療の選択をする上で重要となります。そのため、世界的にさまざまな研究が行われ、より高い精度で生命予後の予測が可能となるスケールが研究されてきました。
PaPスコアでは、臨床的な予後の予測、Karnofsky Performance Scale(ADL)、食思不振、呼吸困難、白血球数、リンパ球の割合についてそれぞれスケーリングを行い、総合点から予後の予測を立てます。高い精度をもちますが、臨床的な予後の予測に関する点数が高い割合を占めるため、検者の臨床的な経験や見解によってスケーリングに差が出る点がデメリットといえます。
なお、一般的な生命予後のスケールは主にがん患者さんが対象となりますが、PaPスコアは、がん患者さん以外にも使用することができます。
PaPスコアはこう使う!
上述したように、PaPスコアでは、臨床的な予後の予測やADLなどついてスケーリングを行い、総合点から予後を予測します(表1)。
最も大きな割合を占めるのは臨床的な予後の予測であり、「1~2週」「3~4週」「5~6週」「7~10週」「11~12週」「13週以上」をそれぞれ8.5~0点にスケーリングします。ADLに関しては「Karnofsky Performance Scale」という独自のスケールを用いて評価します(表2)。
カットオフ値を用いての評価と、合計点からリスク群を分類した上での評価が可能で、カットオフ値を用いて評価する場合は、9点以上を「21日以下(週単位)の可能性が高い」とし、5.5点以下を「30日以上(月単位)の可能性が高い」と予測します。
一方、リスク群を分類して評価する場合は、0~5.5点をGroup A 、5.6~11点をGroup B、11.1~17.5点をGroup Cとして3群に分けて予後を予測しますが、点数が高くなるにつれ予後は短くなります。
表1 PaPスコア
臨床的な予後の予測 | 1~2週 | 8.5 |
---|---|---|
3~4週 | 6.0 | |
5~6週 | 4.5 | |
7~10週 | 2.5 | |
11~12週 | 2.0 | |
>12週 | 0 | |
Karnofsky Performance Scale | 10~20 | 2.5 |
≧30 | 0 | |
食思不振 | あり | 1.5 |
なし | 0 | |
呼吸困難 | あり | 1.0 |
なし | 0 | |
白血球数(/㎜3) | >11,000 | 1.5 |
8,501~11,000 | 0.5 | |
≦8,500 | 0 | |
リンパ球% | 0~11.9% | 2.5 |
12~19.9% | 1.0 | |
≧20% | 0 |
リスク群 | 30日生存率 | 生存期間の95%信頼区間 |
---|---|---|
A(0~5.5点) | >70% | 67~87日 |
B(5.6~11点) | 30~70% | 28~39日 |
C(11.1~17.5点) | <30% | 11~18日 |
表2 Karnofsky Performance Scale
Score | 定義 | |
---|---|---|
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状があるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な欲求によるものである。さまざまな程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、時々介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分でできない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が迫っている | |
0 | 死 |
PaPスコアを看護に活かす!
PaPスコアは、中期的な生命予後を予測するための代表的なスケールです。終末期に向かうと考えられる患者さんの看護では、生命予後予測スコアを適切に活用して、患者さんや家族の意思を反映した治療選択ができるよう支援していきます。
また、終末期は患者さん、家族ともに精神的な負担が大きくなるため、精神面でのケアやサポートをしていくことも大切です。
参考文献
●日本緩和医療学会:苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン(2010年版).(2022年6月22日閲覧) https://www.jspm.ne.jp/guidelines/sedation/2010/chapter05/05_03_01.php●日本緩和医療学会:終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン.(2022年6月22日閲覧) https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/glhyd_2006/glhyd01.pdf
●聖隷三方原病院:症状緩和ガイド.(2022年6月22日閲覧) http://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents7/71.html