CREDO-Kyotoリスクスコア
- 公開日: 2024/7/17
CREDO-Kyotoリスクスコアは何を判断するもの?
CREDO-Kyotoリスクスコアとは、経皮的冠動脈インターベーション(percutaneous coronary intervention:PCI)治療後の血栓リスクと出血リスクを評価するためのスケールです。PCI治療後の血栓イベントや出血イベントの高リスクな患者さんを同定するため、日本人のデータをもとに提唱されました1)。
PCIは、撓骨動脈や大腿動脈からカテーテルを挿入し、狭窄・閉塞した冠動脈を拡張させる治療法です。ガイドワイヤーを通じて、バルーンやステントといった治療デバイスを病変部まで運び込み、バルーンを拡張させることで血管を広げて血流を回復させます。バルーンで広げた血管が元に戻ってしまう(リコイル)のを防ぐことを目的とし、ステントが留置されることがありますが、ステント留置後はステント血栓症を予防するため、抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)が行われます。
PCI治療後は、さまざまな因子が重なることによって、血栓リスクや出血リスクが高くなります。出血リスク因子と血栓リスク因子には共通する因子が多く、CREDO-Kyotoリスクスコアでも、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)、心房細動、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)、心不全の4つが血栓リスクと出血リスクの共通因子となっています1)。
臨床の場では、CREDO-Kyotoリスクスコアによるスケーリングを参考に、患者さんが抱えるリスクを適切に評価したうえで、薬物療法や生活指導といった管理方針を決め、血栓イベントや出血イベントを予防していくことが大切です。
CREDO-Kyotoリスクスコアはこう使う!
CREDO-Kyotoリスクスコアでは、既往歴、血液検査結果、年齢などの因子をスコア化し、その合計で、PCI治療後の患者さんの血栓イベントと出血イベントのリスクを評価します(表)。
急性冠症候群の患者さんを対象とした日本国内の研究において、CREDO-Kyotoリスクスコアが高いほど出血イベントの発生率が高いことが報告されており、高リスク群では22.7%、中リスク群では18.6%、低リスク群では9.8%と、高リスク群と中リスク群は有意に出血イベントが生じたことが明らかになっています2)。
高リスクに分類された場合はもちろん、中リスクや低リスクの患者さんであっても、PCI治療後に血栓イベントや出血イベントなどの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、慎重な経過観察が求められます。
表 CREDO-Kyotoリスクスコア
【血栓リスク】
因子 | スコア |
---|---|
CKD(透析または eGFR<30mL/分/1.73m2) | 2 |
心房細動 | 2 |
PVD | 2 |
貧血(ヘモグロビン値<11g/dL) | 2 |
年齢(≧75歳) | 1 |
心不全 | 1 |
糖尿病 | 1 |
慢性完全閉塞(CTO) | 1 |
【出血リスク】
因子 | スコア |
---|---|
血小板減少(<100,000/μL) | 2 |
CKD(透析または eGFR<30mL/分/1.73m2) | 2 |
PVD | 2 |
心不全 | 2 |
心筋梗塞の既往 | 1 |
悪性腫瘍合併 | 1 |
心房細動 | 1 |
引用・参考文献
2)Minematsu Y, et al:Clinical impact of CREDO-kyoto risk score on in-hospital bleeding in patients with acute coronary syndrome.Eur Heart Journal 2021;42(Suppl): ehab724.1412.
●日本循環器学会:2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法.(2024年6月12日閲覧)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020_Kimura_Nakamura.pdf