潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類(厚生労働省研究班)
- 公開日: 2024/8/1
潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類は何を判断するもの?
潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類(厚生労働省研究班)は、潰瘍性大腸炎の活動性を分類するためのスケールです。潰瘍性大腸炎の診断や治療効果を評価することを目的とし、日本国内の医療機関で広く活用されています。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症を引き起こす疾患です。病変が広がる範囲によって、全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型の3タイプに大別され、頻度は少ないですが、右側あるいは区域性大腸炎型というタイプもあります。はっきりした原因はわかっておらず、指定難病とされています。
潰瘍性大腸炎を発症すると腹痛、下痢、血便などの腹部症状を引き起こし、重症な場合は貧血、体重減少、発熱といった全身症状が生じて、日常生活に支障を来すこともあります。また、炎症の継続や病状の悪化に伴い、腸管合併症(大量下血、大腸穿孔、大腸狭窄、大腸がんなど)や腸管外合併症〔関節炎、眼病変(虹彩炎、結膜炎)、皮膚病変(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)、膵炎など〕が起こることもあります。
多くの患者さんは、症状が現れる活動期と、症状が落ち着いた状態の寛解期を繰り返すのが特徴で、根本的な治療法はなく、寛解を維持するための薬物療法が主体となります。活動期か寛解期かにより、治療方針のみならず、日常生活の過ごし方や注意点なども異なるため、潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類で活動性を評価することが必要です。
潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類はこう使う!
潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類では、内視鏡検査の所見から、潰瘍性大腸炎の活動性を軽度、中等度、強度の3段階にスケーリングします(表)。
活動性の評価は、潰瘍性大腸炎の診断を行う際や治療方針を決定するうえで重要な指標となるだけでなく、治療効果を判定する際にも役立てられます。定期的に内視鏡検査を行い、活動性を評価しながら、治療方針の見直しを行っていくのが一般的です。
表 潰瘍性大腸炎の活動期内視鏡所見による分類(厚生労働省研究班)
炎症 | 内視鏡所見 |
---|---|
軽度 | 血管透見像消失 粘膜細顆粒状 発赤、アフタ、小黄色点 |
中等度 | 粘膜粗ぞう、びらん、小潰瘍 易出血性(接触出血) 粘血膿性分泌物付着 |
強度 | 広汎な潰瘍 著明な自然出血 |
内視鏡的に観察した範囲で最も所見の強いところで診断する。内視鏡検査は前処置なしで短時間に施行し、必ずしも全大腸を観察する必要はない。 |
参考文献
●久松理一,他:潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針.厚生労働科学研究費補 助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和 5年度分担研究報告書(2024年7月17日閲覧) http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
●日本消化器病学会:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020 第2版.(2024年7月17日閲覧) https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/ibd2020.pdf
●田中信治,他:潰瘍性大腸炎(UC).これで納得!画像で見ぬく消化器疾患 vol.2大腸.医学出版,2014,p.18-9.