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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

口腔乾燥の臨床診断基準(柿木分類)

  • 公開日: 2024/8/7

口腔乾燥の臨床診断基準は何を判断するもの?

 口腔乾燥の臨床診断基準(柿木分類)は、口腔乾燥の程度を評価するためのスケールです。いわゆるドライマウスと呼ばれる口腔乾燥症を診断する際の指標の1つとして用いられています。

 口腔乾燥症は、「自覚的な口腔乾燥感または他覚的な口腔乾燥所見(唾液の量的減少と唾液の質的変化を含む)を認める症候」と定義されています1)。原因は自己免疫疾患(シェーングレン症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症、橋本病)、神経疾患・障害(パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中)、精神疾患、精神的ストレス、薬剤の副作用、脱水など多岐に渡り、症状も口渇、口臭、粘つき、舌痛感、味覚障害、嚥下障害などさまざまです。

 また、自浄作用のある唾液が減少することで口腔内が不衛生な状態となり、誤嚥性肺炎につながるおそれもあります。

 口腔乾燥は、特に高齢者に多くみられます2)。QOLの低下や誤嚥性肺炎などを予防するためにも、口腔乾燥の臨床診断基準を用いて定期的な評価を行いながら、薬物療法や生活指導などを見直し、適切に管理していくことが求められます。

口腔乾燥の臨床診断基準はこう使う!

 口腔乾燥の臨床診断基準では、舌背部の唾液の状態から口腔乾燥の程度をスケーリングします(表)。重症度が上がるほど自覚症状を認める割合も高くなると考えられており、0度で43.8%、1度で60.2%、2度で70.4%、3度で79.2%の患者さんが口腔乾燥の自覚症状を有しているというデータもあります2)

 口腔乾燥の臨床診断基準は、治療方針を検討する際にも役立てることが可能で、0度の場合は原則として治療の必要はなく、1度で症状がなければ生活指導のみ行うとしています3)。2度以上の場合は生活指導に加え、唾液分泌を促す治療薬や口腔乾燥症に効果がある漢方薬の投与、口腔保湿剤の使用、唾液腺マッサージなどを必要に応じて行い、シェーグレン症候群の患者さんについては、疾患そのものの治療も実施することとしています3)

 一方で、患者さんの実際の不快感と口腔乾燥の程度が乖離しているケースもあります2)。口腔乾燥の臨床診断基準は、唾液湿潤度検査紙や口腔水分計とも有意な相関関係があることがわかっているため2)、治療方針を決めるにはスケーリングの結果だけでなく、各検査結果も加味する必要があります。

表 口腔乾燥の臨床診断基準(柿木分類)

0度(正常)口腔乾燥や唾液の粘性亢進はない
1度(軽度)唾液が粘性亢進、やや唾液が少ない。唾液が糸を引く
2度(中等度)唾液が極めて少ない。細かい泡がみられる
3度(重度)唾液が舌粘膜上にみられない
唾液の泡は、粘性亢進や口腔乾燥の傾向がある
細かい泡=おおよそ1ミリ以下の泡あるいは白くみえる泡
粘液亢進は、糸引き状態で判定する。1~2ミリ以上の泡の場合は1度と判定する
柿木保明,他:口腔乾燥症の診断基準に関する調査研究.高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究 厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 平成14年度 総括・分担研究報告書.p.39.(2024年7月17日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/6520 より引用

参考文献

1)4学会合同口腔乾燥症用語・分類検討委員会(日本口腔内科学会,日本歯科薬物療法学会,日本老年歯科医学会,日本口腔ケア学会):2022年 口腔乾燥症の新分類.老年歯科医学 2022;37(3):20-2.
2)柿木保明,他:口腔乾燥症の診断基準に関する調査研究.高齢者の口腔乾燥症と唾 液物性に関する研究 厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 平成14年度 総括・分担研究報告書.p.22-9、p.37-41.(2024年7月17日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/6520
3)柿木保明:口腔乾燥症の治療方法.口腔乾燥症のWhy&How.看護学雑誌 2003;67(12):1177.
●柿木保明:口腔乾燥症の病態と治療.日本補綴歯科学会誌 2015;7 (2):136-41.
●伊藤加代子,他:口腔乾燥症の基本的な診査・診断と治療.老年歯科医学 2017;32 (3):305-10.

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