Lekholm&Zarbの骨質分類
- 公開日: 2024/5/14
Lekholm&Zarbの骨質分類は何を判断するもの?
Lekholm&Zarbの骨質分類とは、骨質を評価するためのスケールです。インプラント治療計画の指標として1985年に提唱されました1)。
インプラント治療では、専用のドリルで顎骨に穴を開けるドリリングを行い、インプラント体と呼ばれる人工歯根を埋入させます。インプラント体が骨によって固定される初期固定が得られ、インプラント体と骨が結合するオッセオインテグレーションを獲得できたら、インプラント体と上部構造(人工歯)をつなぐためのアバットメントをインプラント体に連結させ、その上に上部構造を取り付けます。骨質によっては、初期固定やオッセオインテグレーションが得られにくい可能性があるため、治療を行う前に、Lekholm&Zarbの骨質分類などにより骨質を評価することが重要です。
Lekholm&Zarbの骨質分類は、術者の手指の感覚を用いた臨床的な分類で、簡便に骨質を評価できるメリットがあります。一方で、術者の感覚が重要な評価指標となるため客観性に乏しい側面があるほか、近年ではインプラント治療の適応範囲が1985年時よりも広がっており、Lekholm&Zarbの骨質分類によるスケーリングのみでは対応できない患者さんも増えています2)。このようなことから、Lekholm&Zarbの骨質分類を活用しつつ、個々の症例に適した検査を行ったうえで、インプラントの治療計画を立てる必要があります。
Lekholm&Zarbの骨質分類はこう使う!
Lekholm&Zarbの骨質分類では、皮質骨と海綿骨の割合から骨質を4つに分類し(表)、タイプⅡとタイプⅢがインプラントに適した骨質とされています3)。
タイプⅠは硬い骨質で、ドリリング時の発熱による火傷を起こしやすく、インプラント体を埋入する際の締め込む力(埋入トルク)が大きすぎると圧迫壊死による骨吸収を起こす可能性があるとされます3)。軟らかい骨質のタイプⅣでは、初期固定やオッセオインテグレーションが得られにくいとされており3)、それぞれの骨質のタイプに合わせた対応が考慮されます。
表 Lekholm&Zarbの骨質分類
Lekholm&Zarbの骨質分類の結果を看護に活かす!
インプラント治療を受ける患者さんは、手術がうまくいくか、術後に強い痛みや腫れが出たりしないかなど、不安や恐怖を抱くことが考えられます。インプラント治療を計画中の患者さんの看護では、治療に対する不安や恐怖に寄り添った対応を心がけるのと同時に、治療の流れ、治療後の療養生活上の注意点などを丁寧に説明していきます。インプラント治療後は、感染予防のための口腔ケアや安静維持の大切さを伝えつつ、療養生活を支援します。
治療に関する疑問について、遠慮や緊張で医師に聞くことができなくても、看護師にはリラックスして話せるという患者さんもいます。医師の説明でわからないところがなかったか確認し、質問の内容によっては、改めて医師に説明してもらう機会を設けるなど配慮します。
また、骨質によっては、初期固定やオッセオインテグレーションが得られにくいケースもあるため、Lekholm&Zarbの骨質分類による評価を把握し、特にリスクが高いと考えられる患者さんについては、気になる症状などの確認を行い、変化があるときは些細なことでも速やかに医師に報告します。
引用・参考文献
2)田村聡,他:インプラント患者における顎骨の骨質・骨量分布.日本口腔インプラント学会誌 2002;15(1):32.
3)日本口腔インプラント学会:口腔インプラント治療指針2020.p.34-5.(2024年4月15日閲覧)https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf
●宮本郁也:インプラント治療における骨評価の重要性.日本口腔インプラント学会誌 2015;28(1):11-8.
●日本歯科放射線学会,他:インプラントの画像診断ガイドライン 第2版.(2024年4月15日閲覧) https://www5.dent.niigata-u.ac.jp/~radiology/guideline/implant_guideline_2nd_080901.pdf