Integrated Palliative care Outcome Scale:IPOS
- 公開日: 2022/4/21
IPOSは何を判断するもの?
IPOSは、ホスピス・緩和ケアで用いられる評価尺度の1つで、ケアの質を評価するためのスケールです。同様のスケールにSTAS-Jがありますが、IPOSはSTAS-Jの後継版として、臨床で広く活用されています。
SATS-Jはケアを提供しているスタッフが評価を行いますが、IPOSは原則として、患者さん自身で専用の質問用紙に回答し、評価します。ただし、意識状態の悪化や認知機能の低下により、患者さん自身での回答・評価が難しい場合には、代わりにスタッフが行います。
質問用紙には、「身体症状」に関する項目のほか、「不安や心配、抑うつ」「スピリチュアリティ」「患者と家族のコミュニケーション」「病状説明の十分さ」「経済面な面や個人的な気がかりに対する対応」について評価する項目も含まれており、包括的・全人的な評価につなげることができます。
IPOSはこう使う!
IPOSによる評価は、専用の質問用紙を用いて行います。
【IPOS質問用紙】
◆IPOS患者版(3日版)
http://plaza.umin.ac.jp/pos/IPOS_Patient_3days.pdf
◆IPOS患者版(7日版)
http://plaza.umin.ac.jp/pos/IPOS_Patient_7days.pdf
◆IPOSスタッフ版(3日版)
http://plaza.umin.ac.jp/pos/IPOS_Staff_3days.pdf
◆IPOSスタッフ版(7日版)
http://plaza.umin.ac.jp/pos/IPOS_Staff_7days.pdf
過去3日間または過去7日間を振り返り、主に次の項目について患者さん自身で回答・評価します。先述したように、意識状態の悪化や認知機能の低下により患者さん自身での評価が難しいケースでは、スタッフ版の質問用紙を用いて、ケアを提供しているスタッフが評価を行います。
・身体的症状(痛み、息切れ、倦怠感、嘔気・嘔吐など)について
・患者さんの不安などの気持ちについて
・家族の不安について
・コミュニケーションについて
・病状説明について
・経済面や個人的なことに対する対応について
・回答の状況について
項目はそれぞれ0~4の5段階に分けられています。患者さんから評価について質問された場合、スタッフ版のIPOSを使用する場合、スコアリングに迷った場合は、段階ごとに記された解説を参考にして、最も近いものを選択します。
例えば、身体的症状に関する段階ごとの説明では、「0=全くなし」「1=たまに。【解説】時折の、または断続的な症状があるが、日常生活を普通に送っており、患者が今以上の治療を必要としない症状である。現在の症状マネジメントに満足している」「2=ときどき。【解説】時に調子の悪い日もある。病状からみると可能なはずの日常生活動作に支障をきたすことがある。薬の調節や何らかの処置が必要であるが、それほどひどい症状ではない」「3=たいてい。【解説】たびたび強い症状がある。症状によって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障をきたす。我慢できない症状が出現することがある」「4=いつも。【解説】持続的な耐えられない激しい症状。他のことを考えることができない。我慢できない症状が持続的にある」1)となっており、0は問題がない状態で、スコアが高くなるほど症状が重い(問題が大きい)ことを意味します。
評価ができない項目については「評価不能」とし、欠損データとして扱います。
IPOSを看護に活かす!
IPOSの理想的なスコアは、全ての項目において「0」であることですが、全身状態の悪化に伴い、身体的項目や心理的項目など「0」になりにくい項目も出てきます。スコアを「0」にすることを目指すのではなく、患者さんや家族の状態をアセスメントし、適切なケアにつなげるためのツールとして役立てるとよいでしょう。
また、合計スコアだけに注目するのではなく、各項目の得点から患者さんの状態を評価すること、IPOSの導入により、どのようにケアが変わったのか振り返ることも大切です。