STAS-J(STAS日本語版)
- 公開日: 2022/4/15
STAS-Jは何を判断するもの?
Support Team Assessment Schedule (STAS)は、ホスピス・緩和ケアの成果とケアの質を客観的に評価するために、1990年代初めにイギリスで開発されたスケールです。STAS-Jはその日本語版として、臨床で活用されています。
STAS-Jによる評価は、普段、患者さんのケアにあたるスタッフが行うため、患者さんへの負担も抑えられ、全身状態に関係なく評価することができます。
また、緩和ケアにおいては患者さんだけでなく、家族の苦痛の緩和も含めたケアが必要となります。STAS-Jでは、家族の不安や病状認識を評価するための項目が含まれている点も特徴といえます。
STAS-Jはこう使う!
STAS-Jによる評価は、評価シートをもとに行います。評価シートの見本とスコアリングマニュアルは、ウェブ上でも公開されています。STAS-Jによる評価を行う際は活用するとよいでしょう。
http://plaza.umin.ac.jp/stas/stas-j.pdf
◆STAS-J スコアリングマニュアル
http://plaza.umin.ac.jp/stas/stas_manualv3.pdf
STAS-Jでは、次の9項目について、普段ケアを提供しているスタッフが評価します。
・症状が患者に及ぼす影響:痛み以外の症状が患者に及ぼす影響
・患者の不安:不安が患者に及ぼす影響
・家族の不安:不安が家族に及ぼす影響
・患者の病状認識:患者自身の予後に対する理解
・家族の病状認識:家族の予後に対する理解
・患者と家族とのコミュニケーション:患者と家族とのコミュニケーションの深さと率直さ
・職職間のコミュニケーション:患者と家族の困難な問題についての、スタッフ間での情報交換の早さ、正確さ、充実度
・患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション:患者や家族が求めたときに医療スタッフが提供する情報の充実度
項目はそれぞれ0~4の5段階に分けられており、段階ごとに記された説明と患者さん(または家族)の状態を照らし合わせて評価します。
例えば、痛みのコントロールに関する段階ごとの説明では、「0=なし」「1=時折の、または断続的な単一の痛みで、患者が今以上の治療を必要としない痛みである」「2=中程度の痛み。時に調子の悪い日もある。痛みのため、病状からみると可能なはずの日常生活動作に支障をきたす」「3=しばしばひどい痛みがある。痛みによって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障をきたす」「4=持続的な耐えられない激しい痛み。他のことを考えることができない」となっており1)、スコアが高くなるほど症状が重い(問題が大きい)ことを表します。
患者さんの状態や状況により評価が難しい項目については、その理由に応じて、7、8、9のいずれかの数字を評価シートに記入します。
7:情報が少ないため評価できない場合(例えば、入院直後や家族はいるが面会に来ないなど)
8:家族がいないため、家族に関する項目を評価できない場合
9:認知の低下や深い鎮静のため評価出来ない場合
STAS-Jを看護に活かす!
前述したとおり、STAS-Jは患者さんが自己記入するものではなく、ケアを提供しているスタッフが評価・記入します。同じスタッフが継続して評価することが好ましく、入院のタイミングで評価を行った後は、週1~2回程度の割合で評価していきます。
いずれの項目もスコアが低いほうが望ましいですが、状態が悪化するにつれ、スコアが高くなる場合もあります。そのため、スコアが「0」になることを目指すのでなく、継続的かつ客観的に患者さんや家族の状態をアセスメントし、適切な看護介入につなげるために役立てることが大切です。また、緩和ケアチームや病棟で複数の患者さんをまとめて評価することで、ケアの効果を確認したり、振り返りを行うのもよいでしょう。