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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度

  • 公開日: 2024/5/6

メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度は何を判断するもの?

 メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度とは、検査結果や自覚症状の程度などをスコア化し、メニエール病の重症度を評価するためのスケールです。1999年に厚生労働省特定疾患前庭機能異常調査研究分科会により提唱され1)、改訂を経て、現在の形式で評価が行われるようになりました。

 メニエール病は、難聴・耳鳴・耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する疾患です。何らかの原因で内耳に浮腫が起こる(内リンパ水腫)ことで発症し、発作時は嘔気・嘔吐を伴うケースも多くみられます。発作の頻度や持続時間には個人差がありますが、症状の現れ方によっては日常生活に支障をきたしたり、発作を繰り返していくうちに、聴覚症状が進行していく場合もあるため注意が必要です。

 主な治療方法として、保存的治療、中耳加圧治療、外科的治療があり、保存的治療では生活指導(過労・睡眠不足・ストレス回避)、薬物療法(浸透圧利尿薬、内耳循環改善約薬、抗不安薬、ビタミンB12、漢方薬)、心理的アプローチなどが行われます。中耳加圧治療は、保存的治療と外科的治療の中間に位置し、外耳道を介して鼓膜に圧波(圧力)を送り込み、内耳に蓄積したリンパ液の排出を促します。外科的治療には、内リンパ嚢開放術や選択的前庭機能破壊術があり、保存的治療や中耳加圧治療で効果がみられない場合に実施が考慮されます。

 メニエール病の治療は、重症度を目安に段階的に進められるため、メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度を用いて、患者さんの状態を適切に評価することが重要です。

メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度はこう使う!

 メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度では、「平衡感覚・日常生活への障害」「聴覚障害」「病態の進行度」の3項目について、それぞれ0~4点にスコア化し(表1)、各項目の点数によって、総合的な重症度をStage1~5に分類します(表2)。

 重症度は治療内容を検討する際の指標として用いられ、Stage1は生活指導のみで薬物療法の必要はない段階、Stage2は生活指導と薬物療法を必要とする段階、Stage3は初期治療が不成功に終わり、対症療法を行う段階とされます1)、2)。さらに、Stage4は保存的治療に抵抗し、中耳外圧治療や外科的治療が考慮される段階、Stage5は症状が高度に進行して後遺症が明らかな段階とされます1)、2)

表1 メニエール病重症度分類

A:平衡障害・日常生活の障害
0点正常
1点日常活動が時に制限される(可逆性の平衡障害)
2点日常活動がしばしば制限される(不可逆性の軽度平衡障害)
3点日常活動が常に制限される(不可逆性の高度平衡障害)
4点日常活動が常に制限され、暗所での起立や歩行が困難(不可逆性の両側性高度平衡障害) 
注:不可逆性の両側性高度平衡障害とは、平衡機能検査で両側の半規管麻痺を認める場合
B:聴覚障害
0点正常
1点可逆的(低音部に限局した難聴)
2点不可逆的(高音部の不可逆性難聴)
3点中等度進行(中等度以上の不可逆性難聴)
4点両側性高度進行(不可逆性の両側性高度難聴) 
注:不可逆性の両側性高度難聴とは、純音聴力検査で平均聴力が両側70dB以上で70dB未満に改善しない場合
C:病態の進行度
0点生活指導のみで経過観察を行う
1点可逆性病変に対して保存的治療を必要とする
2点保存的治療によっても不可逆性病変が進行する
3点保存的治療に抵抗して不可逆性病変が高度に進行し、侵襲性のある治療を検討する
4点不可逆性病変が高度に進行して後遺症を認める
診断基準化委員会:めまいの診断基準化のための資料 診断基準 2017年改定.Equilibrium Res Vol 2017;76(3):235.より引用

表2 メニエール病総合的重症度

Stage1:準正常期
A:0点、B:0点、C:0点
Stage2:可逆期
A:0~1点、B:0~1点、C:1点
Stage3:不可逆期
A:1~2点、B:1~2点、C:2点
Stage4:進行期
A:2~3点、B:2~3点、C:3点
Stage5:後遺症期
A:4点、B:4点、C:4点
診断基準化委員会:めまいの診断基準化のための資料 診断基準 2017年改定.Equilibrium Res Vol 2017;76(3):235.より引用

メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度の結果を看護に活かす!

 メニエール病と診断された患者さんの看護にあたるときは、メニエール病重症度分類・メニエール病総合的重症度による評価をもとに状態把握に努め、症状や進行度に合わせたケアの提供を心がけます。

 メニエール病は進行していくケースも多いため、治療が必要な患者さんには、継続して治療に取り組むことの必要性を説明するとともに、前向きな気持ちで治療に取り組めるよう支援していきます。発作の頻度や症状の程度によっては、日常生活に支障をきたし、精神的な負担が大きくなることも考えられます。日常生活を送るうえで不安や悩みがないか傾聴し、必要に応じて精神面のケアも行えるとよいでしょう。

 重症度が変わると、治療内容が変更になることがあるため、重症度の変化を疑わせる訴えや所見が認められる場合は、速やかに医師に報告します。

引用・参考文献

1)厚生労働省特定疾患前庭機能異常調査研究分科会:メニエール病の重症度分類について.Equilibrium Res Vol 1999;58(1):61-4.
2)日本めまい平衡医学会,編:メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン 2020年版 第2版.金原出版,2020.
●渡辺行雄,他:3.メニエール病重症度評価についての考察.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾等政策研究事業「難治性平衡機能障害に関する調査研究」(2024年4月15日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/143061/201415095A/201415095A0006.pdf
●診断基準化委員会:めまいの診断基準化のための資料診断基準 2017年改定.Equilibrium Res Vol 2017;76(3):233-41.
●北原糺:メニエール病の診断と治療―メニエール病の治療.日本耳鼻咽喉科学会会報 2018;121(8):1056-62.
●將積日出夫:メニエール病の診断と治療.日本耳鼻咽喉科学会会報 2019;122(9):1191-7.
●北原糺:難治性メニエール病の治療―中耳加圧と内リンパ嚢開放術.日本耳鼻咽喉科学会会報 2019;124(10):1-4.
●角南貴司子:急性期・慢性期めまいの治療方針.日本耳鼻咽喉科学会会報 2021;124(10):1348-54.
●將積日出夫:メニエール病の病態・診断・治療Update 中耳加圧療法.日本耳鼻咽喉科学会会報 2022;125(12):1449-54.

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