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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Sarnat分類

  • 公開日: 2022/12/26

Sarnat分類は何を判断するもの?

 Sarnat分類とは、新生児仮死における低酸素虚血性脳症(Hypoxic ischemic encephalopathy:HIE)の重症度分類に用いられるスケールです。

 HIEを発症すると患児には重篤な後遺症が残る可能性が高く、重症な場合には死に至るおそれもあります。そのため、分娩時のトラブルなどからHIEが疑われる際は、速やかに低体温療法などの導入が求められます。

 Sarnat分類は、神経所見から簡易的にHIEの重症度を判定することができるため、治療開始や高次医療機関への搬送などの基準として広く取り入れられています。

Sarnat分類はこう使う!

 Sarnat分類は、早急に適切な対処を要するHIEの重症度を簡易的に評価することができ、新生児仮死への初期対応における方針決定の場で非常に役立ちます。

 具体的には、意識レベル、神経筋コントロール(筋緊張、姿勢、腱反射)、原始反射(吸啜反射、Moro反射、眼球前庭反射、緊張性頸反射)、自律神経機能(瞳孔、心拍、気管唾液分泌、消化管蠕動)、痙攣発作の状態を評価し、Stage1~3の3つの段階に分類します(表)。

 Stage1はHIEの可能性は低く正常と判断されますが、Stage2はHIEによって後遺症が残ったり、死亡したりする可能性がある状態とされます。さらにStage3では、後遺症残存や死亡のリスクが高いと判断されます。

表 Sarnat分類
Stage 1Stage 2Stage 3
意識状態不穏傾眠、鈍麻昏迷
筋緊張正常軽度低下弛緩
姿勢軽度の遠位部屈曲高度の遠位部屈曲間欠的除脳硬直
腱反射亢進亢進減弱または消失
吸啜反射減弱減弱~消失消失
Moro反射顕著減弱、不完全、閾値上昇消失
眼球前庭反射(人形の目)正常亢進減弱~消失
緊張性頸反射減弱亢進消失
自律神経機能交感神経優位副交感神経優位両神経系の機能低下
瞳孔散瞳縮瞳不同、対光減弱
心拍頻脈徐脈不定
気管唾液分泌減少増加不定
消化管蠕動正常~減弱亢進、下痢不定
痙攣発作なしありまれ
予後正常正常~後遺症~死亡後遺症~死亡
鮫島浩:1)新生児仮死(19.新生児の管理と治療,D.産科疾患の診断・治療・管理,研修コーナー).日本産科婦人科学会雜誌 2008;60 (7): N146./日本リハビリテーション医学会,監:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2班.金原出版,2014,p.47.(2022年12月5日閲覧)http://www.jarm.or.jp/wp-cntpnl/wp-content/uploads/2017/05/member_publication_isbn9784307750387.pdfを参考に作成

Sarnat分類の結果を看護に活かす!

 分娩時のトラブルによるHIEは、早急な対処が必要な疾患の一つです。HIEが疑われる患児に遭遇したときは、医師が評価したSarnat分類のスケーリングに合わせて、適切かつ速やかに対応します。

 Stage1の予後は良好とされますが、出生直後の新生児は体調の変化が生じやすいため、分娩時に何らかのトラブルがあった場合は慎重な経過観察が必要です。Stage2やStage3では後遺症が残ったり、死亡したりする可能性があるため、NICU (NICUを有していない施設では他院へ搬送)で速やかに適切な治療を行うことが求められます。NICU搬送までの流れや必要な準備などを事前に調べておくようにしましょう。

 突然の出来事に家族は混乱に陥り、計り知れない不安を抱えることになります。患児の状態や今後の対応について丁寧に説明するのとあわせて、精神的なケアも欠かさないことが大切です。

引用・参考文献

●鮫島浩:1)新生児仮死(19.新生児の管理と治療,D.産科疾患の診断・治療・管理,研修コーナー).日本産科婦人科学会雜誌 2008;60 (7): N145-9.
●日本リハビリテーション医学会,監:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2班.金原出版,2014,p.45-7.(2022年12月5日閲覧)http://www.jarm.or.jp/wp-cntpnl/wp-content/uploads/2017/05/member_publication_isbn9784307750387.pdf
●Mrelashvili A,et al:The Sarnat score for neonatal encephalopathy: looking back and moving forward.Pediatr Res 2020; 88(6):824-25.
●日本産科婦人科学会,他:産婦人科診療ガイドライン 産科編2020.(2022年12月5日閲覧) https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf

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