改変Davis分類
- 公開日: 2022/12/25
改変Davis分類は何を判断するもの?
改変Davis分類とは、糖尿病網膜症の重症度を評価するためのスケールです。
糖尿病網膜症は、微小血管の動脈硬化によって引き起こされる糖尿病の代表的な合併症の一つですが、進行すると失明に至る可能性があり、QOLに大きな影響を与えます。そのため、糖尿病患者さんは定期的な眼科受診が推奨されており1)、網膜症を発症した場合は適切な治療を行う必要があります。
改変Davis分類は、眼底所見から網膜症の重症度を簡便に評価できるため、日本で広く使用されていますが、眼底所見の数や程度、範囲などは定義されていないため、病変の些細な変化を捉えにくい点がデメリットといえます。
改変Davis分類はこう使う!
改変Davis分類は、眼底所見から糖尿病網膜症の重症度を「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の3段階に分類します。具体的な病期、病態、眼底所見は表のとおりです。
表 改変Davis分類
網膜症病期 | 病態 | 眼底所見 |
---|---|---|
単純網膜症 | 血管透過性亢進 | 毛細血管瘤 網膜点状・斑状・線状出血 硬性白斑・網膜浮腫 (少数の軟性白斑) |
増殖前網膜症 | 血管閉塞 | 軟性白斑 静脈異常 網膜内細小血管異常 (網膜無血管野:蛍光眼底撮影) |
増殖網膜症 | 血管新生 | 上新生血管(網膜・乳頭) 網膜前出血 硝子体出血 線維血管性増殖膜 牽引性網膜剥離 |
単純網膜症は軽症、増殖前網膜症は中等症、増殖網膜症は重症と単純に判定し、患者さんへの説明などに活かしやすいことが改変Davis分類のメリットです。
しかし、前述したように眼底所見の程度や数などが定義されておらず、それぞれ重症度の範囲が広いといった側面もあることから、同じ重症度であっても、眼底所見に変化がある場合は病状が進行していることも考えられるため注意が必要です。
改変Davis分類の結果を看護に活かす!
糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の一つであり、進行すると失明の危険があります。糖尿病患者さんの看護に当たるときは、血糖コントロールの状態によらず、改変Davis分類で網膜症の有無や重症度を把握しておくようにしましょう。
特に、糖尿病の罹患期間が長い患者さんが視力の変化を訴える場合は、網膜症を発症している可能性があるため、速やかに医師に報告します。
また、網膜症を発症している患者さんで血糖コントロールが悪い場合は、網膜症が重症化するリスクが高くなります。網膜症の発症・重症化予防には、血糖コントロールが不可欠です。適正な血糖コントロールに向けて、医師や管理栄養士などと連携しながら指導を行うことが大切です。
引用・参考文献
1)日本糖尿病学会,編・著:糖尿病網膜症.糖尿病ガイドライン2019.南江堂,2019,p.129-30.(2022年12月5日閲覧)http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-08.pdf●日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会:糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版). 日眼会誌 2020;124(12):958-65.(2022年12月5日閲覧)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf
●船津英陽:糖尿病網膜症の所見と重症度分類.糖尿病 2010;2 (3): 49-56.
●高村佳弘:糖尿病網膜症の分類.福井県医師会だより 2015;654号:223-4.(2022年12月5日閲覧) https://www.fukui-naikaikai.com/img/2019/11/SkillupDM-No.66.pdf
●日本糖尿病眼学会:ガイドラインその他.(2022年12月5日閲覧) https://www.jsod.jp/member/guideline.html