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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

GRACEリスクスコア

  • 公開日: 2021/11/30

GRACEリスクスコアは何を判断するもの?

 Global Registries of Acute Coronary Events(GRACE)リスクスコアは、急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome:ACS)におけるリスクを評価するためのスケールです。


 ACSでのリスクを評価する方法としては、GRACEリスクスコアのほかに、非ST上昇型急性冠症候群(non-ST-segment elevation acute coronary syndrome:NSTE-ACS)の予後予測に用いるTIMIリスクスコアなどが挙げられます。


 GRACEリスクスコアではNSTE-ACSだけでなく、ST上昇型心筋梗塞(ST elevation myocardial infarction:STEMI)を含むACSの包括的リスク評価が可能です。入院時および6カ月後までの死亡率または心筋梗塞の発症率を算出でき、スコアが高くなるにつれ、死亡率も上昇することが報告されています1)


GRACEリスクスコアはこう使う!

 GRACEリスクスコアで評価の対象となる項目は、①年齢、②心拍数、③収縮期血圧(mmHg)、④初期血清クレアチニン(mg/dL)、⑤Killip分類、⑥心停止による入院、⑦心筋バイオマーカーの上昇、⑧ST部分の偏位の8項目です(表)。各項目に重み付けをし、リスク評価を行います。


 年齢、心拍数、入院時の血清クレアチニンでは数値が高いほど、収縮期血圧に関しては数値が低いほど、スコアが高くなります。心不全の合併や入院時の心肺停止状態、心筋バイオマーカーの上昇、心電図のST偏位は加算の対象です。前述したように、スコアが上昇するにつれ、リスクも高まります。


表 GRACE ACSリスクスコア

日本循環器学会,他:急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版),2019,p.28 (2021年11月15日閲覧).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_kimura.pdf より引用


 また、インターネット上に、8つの項目を入力することで自動でスコアを算出し、リスクを評価するツールもあります。こういったツールを活用するのもよいでしょう。


インターネット上の算出・評価ツールの例

https://www.mdcalc.com/grace-acs-risk-mortality-calculator


GRACEリスクスコアの結果を看護に活かす!

 GRACEリスクスコアは入院時の状態で評価が可能なことから、入院後、比較的早い段階でスコアを算出することができます。


 高リスクの患者さんでは、急変の可能性が高いと考えられます。事前の心構えだけでなく、厳重なモニター管理、ナースステーションに近い部屋を用意するといった対策を講じることで、急な状態の変化にも速やかに対応することができます。


 退院後6カ月のリスクが高いと判断される場合には、退院後のイベント発症リスクを踏まえた生活習慣の改善指導など、適切な患者教育につなげることができるでしょう。


引用・参考文献

1)Nakatani D, et al:Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Investigators. Impact of beta blockade therapy on long-term mortality after ST-segment elevation acute myocardial infarction in the percutaneous coronary intervention era. Am J Cardiol 2013;111(4): 457–64.
●日本循環器学会,他:急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版),2019,p.28 (2021年11月15日閲覧).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_kimura.pdf

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