Artzの基準
- 公開日: 2021/11/7
Artzの基準は何を判断するもの?
Artzの基準は、熱傷(やけど)の重症度を評価するためのスケールです。重症度と合わせて、外来レベルでの治療で問題ないか、救命救急センターや熱傷センターといった、より高度な治療が必要とされる状態なのかなど、どのレベルの医療機関で治療すべきか判断できるところも大きな特徴です。
熱傷の重症度を評価するものとしては、Artzの基準を改変したMoylanの基準も広く用いられています。
Artzの基準はこう使う!
熱傷はその深さで、表皮の熱傷にとどまるものをⅠ度、真皮まで及ぶものや水疱ができるほどの熱傷をⅡ度、皮膚全層に及ぶものや皮膚が炭化するほどの熱傷はⅢ度と分類されます。
Artzの基準では、この深さによる分類と面積、合併症から熱傷の重症度を三段階(軽症、中等度、重症)で評価します。熱傷の深さが同程度でも、熱傷の範囲や合併症の有無により重症度は異なります(表)。
表 Artzの基準
重症度 | 状態 |
---|---|
重度熱傷 (総合病院、救命救急センター、熱傷センターで入院加療が必要) | ・Ⅱ度熱傷が30% TBSA*以上(小児・高齢者は20%TBSA以上) ・Ⅲ度熱傷が10% TBSA以上(小児・高齢者は5%TBSA以上) ・顔面、手、足のⅢ度熱傷 ・気道熱傷の合併 ・軟部組織の損傷や骨折の合併 ・電撃傷 |
中等度熱傷 (一般病院で入院加療が必要) | ・Ⅱ度熱傷が15~30% TBSA (小児・高齢者は10~20%TBSA) ・Ⅲ度熱傷が10% TBSA以下(顔、手、足を除く) |
軽症熱傷 (外来で治療可能) | ・Ⅱ度熱傷が15%TBSA以下 ・Ⅲ度熱傷が2%TBSA以下 |
Artz CP, Moncrief JA:The Treatment of Burns,2nd ed, WB Saunders, Philadelphia, 1969, p.94-8.より引用一部改変
また、前述したように、Artzの基準では、どのレベルの医療機関で治療を受けるべきか判断する際に役立ちます。深い熱傷が広範囲に及ぶ場合や合併症を認めるケースでは、全身管理や皮膚移植など高度な治療が必要になることが考えられます。そのため、救命救急センターや熱傷センターといった専門施設での治療が適していると判断できます。
Artzの基準の結果を看護に活かす!
熱傷の場合、救急の現場で重症度を判断し、医療機関を選定・搬送されることが多い一方、患者さん自身が外来を受診する場合もあります。Artzの基準では、おおよその見た目で熱傷の重症度を判定できるため、熱傷で受診した患者さんのトリアージとして利用することが可能です。
重症熱傷の患者さんでは、不安定な状態が続き、治療も長期におよびます。また、熱傷による外見の変化にショックを受けることも考えられます。身体的ケアとともに、精神的ケアも行っていくことが重要です。
参考文献
●熱傷診療ガイドライン改訂第3版作成委員会:熱傷診療ガイドライン改訂第3版,2021(2021年10月13日閲覧).http://www.jsbi-burn.org/members/guideline/pdf/guideline3.pdf ●日本創傷外科学会:やけど(熱傷)(2021年10月13日閲覧).https://www.jsswc.or.jp/general/yakedo.html