Rutherford分類(ラザフォード分類)
- 公開日: 2021/11/5
Rutherford分類は何を判断するもの?
Rutherford分類は、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)や下肢閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)の重症度を分類するためのスケールです。
臨床所見から下肢の虚血を評価するスケールとしてはFontaine分類も用いられますが、重症の下肢虚血でも症状が乏しい症例もあります。その点、Rutherford分類は、臨床所見のほかに、足関節圧(ankle pressure:AP)や趾動脈圧(toe pressure:TP)、肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance:PVR)、運動負荷試験による歩行距離などの数値も加味されるため、客観的な評価が可能です。また、間歇性跛行や組織欠損の状態をより細かく分類している点も特徴といえます。
Rutherford分類はこう使う!
Rutherford分類は、0~Ⅲの4つのグレード(重症度)と、0~6の7つのカテゴリー(細分類)に分類されています(表)。
Rutherford分類重症度 | 細分類 | 臨床所見 | 客観的基準 |
---|---|---|---|
0 | 0 | 無症状 | 運動負荷試験は正常 |
Ⅰ | 1 | 軽度の間歇性跛行 | 運動負荷試験は可能 負荷後APは50mmHg未満で血圧より25mmHg以上低下 |
2 | 中等度の間歇性跛行 | 細分類1と3の間 | |
3 | 重度の間歇性跛行 | 運動負荷試験は終了できず、負荷後APは50mmHg未満 | |
Ⅱ | 4 | 虚血性安静時痛 | 安静時APは40mmHg未満、 足関節部および足背部でPVRはほとんど平坦、 TPは30mmHg未満 |
Ⅲ | 5 | 限局性組織欠損 | 安静時APは60mmHg未満、 足関節部および足背分でPVRはほとんど平坦、 TPは40mmHg未満 |
6 | 広範囲組織欠損 | 細分類5と同様 |
Rutherford RB, Baker JD, Ernst C, et al : Recommended standards for reports dealing with lower extremity ischemia: revised version. J Vasc Surg 1997;26(3): 517 – 38.より引用
循環障害の程度や重症度とも関連していることから、治療内容を選択する際にも有用です。例えば、カテゴリーの4~6に該当する場合は血流障害が進行し、安静時痛のほか、潰瘍や壊疽をきたす状態であり、重症下肢虚血(Critical limb ischemia: CLI)と呼ばれます。重症度は高く、疼痛を改善するための薬物療法や血管内治療(血管再建術)などが検討されますが、予後不良です。
なお、CLIの治療方針を決める際は、Rutherford分類も含めたWifi分類というステージングが提唱されています1)。
Rutherford分類の結果を看護に活かす!
急性下肢虚血では、Rutherford分類が治療方針を決める大きな目安となります。症状の程度により保存的加療、血管内治療が行われ、場合によっては下肢切断の可能性があります。看護の現場においては、重症度を念頭に症状の経過や下肢の観察を行い、早期に状態の悪化を把握し、迅速な治療と適切なケアにつなげることが重要です。
また、ASOやPADの患者さんは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を合併するリスクが高い状態です。下肢の状態だけでなく、胸痛や息切れなどの症状にも十分注意して、患者さんのケアにあたることが大切です。