心拍数と脈拍数に差が出るのはなぜ?
- 公開日: 2026/2/19
心拍と脈拍が生じる仕組み
まず、心臓の解剖生理をおさらいしましょう。
心臓は、洞房結節から発生する電気的刺激によって収縮します。電気的刺激は洞房結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維へと順に伝わり(刺激伝導系)、この電気的な興奮に連動して心筋細胞が収縮することで、全身に血液が送り出されます(図)。
こうした心臓の電気的刺激の流れを体表面の電極で捉えたものが心電図(P波やQRS波)で、電気的な興奮が1分間に繰り返される回数を「心拍数」といいます。
次に、電気的刺激によって心臓が収縮するときの動き考えてみます。心房の収縮によって心室へ血液が送り込まれ、続いて心室が収縮することで、大動脈を介して全身へと血液が拍出されます。このときに生じた拍動が末梢の動脈壁まで伝わり、頸部や手首などで「脈拍」として触知可能となります。
適切な刺激伝導、心臓の収縮、心臓から全身への血液の拍出がすべて連動していれば、心拍数と脈拍数はほぼ一致します。しかし、臨床現場ではさまざまな要因によって、両者にズレが生じることがあります。
図 刺激伝導系
心拍数と脈拍数にズレが生じる主な要因
心房細動(AF)
では、心拍数と脈拍数にズレが生じる要因として、何が考えられるでしょうか。
臨床で遭遇する頻度の高いものに心房細動(AF)があります。心房細動は、洞房結節とは異なる場所から発生する不規則な電気的刺激により、心房が細かく震えている状態です。この不規則な刺激の一部が房室結節を介して心室へと伝わるため、心室の収縮が心房と連動することが難しくなり、モニター心電図上ではR-R間隔(QRS波とQRS波の間)が不規則になります。
心房と心室の連動がうまく行われない場合、心室に血液が充満する前に次の収縮が起こります。その結果、全身へ送り出される血液量(1回拍出量)が不十分となり、モニター心電図上では心拍としてカウントされても、橈骨動脈では拍動が触知できず、心拍数より脈拍数が少なく測定されることがあります。
期外収縮(PAC・PVC)
ほかに遭遇頻度の高いものとして、心房期外収縮(PAC)や心室期外収縮(PVC)が挙げられます。期外収縮では、本来のリズムより早いタイミングで電気的刺激が発生し、心房や心室が収縮します。心房や心室に血液が充満していない状態で心筋が収縮するため、1回拍出量が減少し、モニター心電図では心拍数が確認できても、橈骨動脈では拍動が触知できず、正確な脈拍数が測れないことがあります。
循環血液量の低下、心機能の低下
さらに重篤な状態として、電気的刺激は発生しているものの、心収縮が極めて弱いために、十分な血液を全身に拍出できないケースがあります。これは、出血や脱水により循環血液量が減少している患者さんや、心筋梗塞などで心機能が著しく低下している患者さんで起こり得ます。こうした状態でも心臓の電気的刺激は発生しているため、モニター心電図上では心拍数が測定されますが、実際に送り出される血液は少ないことから脈拍が微弱になり、触知不能になる場合があります。
以上のことから、心拍数と脈拍数に差が出る主な理由は、「電気的刺激は発生しているが、何らかの要因で心臓が十分な量の血液を全身に拍出できていないこと」であるといえます。
心拍数と脈拍数の差を単なる数字のズレとして片づけるのではなく、患者さんの循環動態を評価するための情報の1つとして捉え、適切なアセスメントにつなげていくことが重要です。
イラスト/早瀬あやき
