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【連載】ICU・HCU看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

せん妄患者さんの身体抑制を回避するには?

  • 公開日: 2026/1/27

Q.せん妄がひどく、自己抜去リスクが高い患者さんでも、基本的に身体抑制は控えることになっています。常時見守りができるならいいのですが、その体制を確保できない場合、どのような対策を取るとよいでしょうか?
A.せん妄の発症・増悪予防に努めるとともに、ルートの視認性を下げるなど自己抜去を防ぐ工夫を重ねることで、常時見守りが困難な状況でも身体抑制に頼らず、患者さんの安全を確保できる仕組みを整えることが必要です。

身体抑制の回避が求められる背景

 理想を言えば、せん妄によって自己抜去リスクが高い患者さんであっても、身体抑制は可能な限り回避することが望まれます。身体抑制がもたらす身体的・精神的苦痛だけでなく、ADL(日常生活動作)の低下、せん妄の増悪、スキン-テアといった合併症のリスクにも十分な配慮が必要です。

 さらに2024年度の診療報酬改定では、精神科病棟以外のすべての病棟で、身体抑制の最小化や原則禁止への取り組みが重視されるようになりました。

 こうした背景から、身体抑制を極力回避することを基本としつつ、患者さんの安全と尊厳を両立させるための代替的な介入や環境整備を実践していくことが求められています。

せん妄の発症・増悪の予防

 せん妄は、さまざまな要因で生じる一過性の意識障害で、見当識障害、幻覚・妄想、認知機能障害がみられるようになります。要因としては、準備因子(高齢、認知症、脳血管障害の既往など)、直接因子(感染症、手術、薬剤、代謝異常など)、誘発因子(入院による環境変化、生活リズムの乱れ、身体的苦痛など)などが挙げられ、これらが相互に影響し合って発症します。

 ICUの場合、状況により介入が困難な場合もありますが、看護師として介入可能な部分を確認することが必要です(表)。せん妄のリスクとなる要因に対して、可能な範囲で早期から介入していくことができれば、発症の予防や重症化の回避につながります。

表 看護師の介入例

具体的な介入例
環境調整せん妄では昼夜逆転が起こりやすいため、朝はカーテンを開け、日中はできる限り自然光に近い明るさを心がける。また、夜間は照明を落として静かな環境に整えることで、昼夜のリズムを保てるように配慮する
疼痛管理疼痛はせん妄の誘発因子となるため、適宜、鎮痛薬を使用し、苦痛を緩和する
栄養・水分管理便秘はせん妄の誘発因子となるため、食事や水分摂取量、In-Outバランス(水分出納)を確認・調整し、便秘を予防する
コミュニケーション患者さんに話しかける際は、ゆっくりと落ち着いた声で、短く明瞭に伝える。患者さんの理解を助けるために、必要に応じて繰り返し説明し、見当識の維持と不安の軽減に努める

自己抜去の予防

 ルートやドレーン類の管理においては、ルートの走行を工夫したり、刺入部を覆って隠したりすることで視認性を下げ、患者さんが触れにくい状況を作ります。

 例えば、右前腕の刺入部から点滴ルートを接続した場合、そのままでは点滴ルートの大部分が患者さんから見える状態になります。このとき、点滴ルートを右上腕に沿わせて寝衣の内側を通して襟元から出す、あるいは刺入部を包帯などで覆って見えにくくすることで、自己抜去リスクを低減できる可能性が高くなります。固定用テープの貼付位置や素材(痒みや違和感を抑える低刺激な素材)の変更、寝衣の上からカバーをかけるといった工夫も有効な手段となります。

 このように、「患者さんの目に入らない」「患者さんが触れにくい」状況を工夫して作ることで、自己抜去の予防、ひいては身体抑制の回避へとつながります。

 また、患者さんがルートやドレーン類に触れようとした際に、迅速な声かけや対応ができるよう、受け持ち看護師の配置を調整したり、ナースステーション近くのベッドに移動したりするなどの運用も検討します。こうした環境整備によって頻繁な声かけや細やかなかかわりが可能になり、せん妄の発症リスクの軽減に寄与します。

 家族の面会がある患者さんに対しては、面会時間に合わせて覚醒や離床を促すことも、見当識の維持やせん妄予防において重要な役割を果たします。

 身体抑制の是非については、その時々で繊細な判断が必要とされます。日常の観察や現場でできる工夫を積み重ね、看護チーム全体でケアにあたることで、自己抜去リスクが高い患者さんに対しても、身体抑制を最小限に抑えた看護の実現につなげていくことができます。

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