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【連載】ICU・HCU看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

循環動態が不安定な患者さんの褥瘡予防について知りたい!

  • 公開日: 2025/12/10

Q.循環動態が不安定で、体位交換が困難な患者さんがいます。グローブを使ってこまめに除圧したり、エアマットレスを使ったりしても褥瘡ができてしまいます。循環動態が不安定な患者さんの褥瘡予防について教えてください。
A.褥瘡予防に特別なことはなく、基本が重要です。体位変換が困難であれば、頻回な除圧による同一部位への圧迫の回避、湿潤環境の回避、スキンケアなど、多面的なアプローチが必要になります。

循環動態が不安定な患者さんの褥瘡発生リスク

 褥瘡は、ADLの低下や意識障害による寝たきりなどの影響で、同一部位に長時間の圧迫が加わり、皮下の軟部組織の血流が阻害され、組織が障害されることにより生じる創傷です。

 特に、循環動態が不安定な患者さんの場合、そもそも皮膚の血流が低下していることに加え、高容量のノルアドレナリン投与による末梢血管の収縮、ショックによる全身組織への酸素供給の不足など、さまざまな要因で酸素や栄養が組織に十分に供給されず、褥瘡の発生リスクが高い状態であるといえます。

除圧、体圧分散のポイント

 同一部位への長時間の圧迫を避けるため、定期的に体位変換を行うことが必要です。しかし、循環動態が不安定な患者さんで体位変換を行うと、状態が悪化するリスクもあるため、頻回な除圧が重要になります。

 グローブを使ってこまめに除圧されているとのことですが、頻回な除圧は褥瘡の予防や悪化を防ぐことにつながるため、継続して行っていきましょう。グローブを使う以外に、簡単に実践できる方法として、タオルを使った除圧があります。例えば、臥床している患者さんの足首の下にタオルを差し込み、踵部を浮かせ、除圧を図ります。骨突出部やその周囲に使用することで、同一部位にかかる圧力を緩和し、十分な体位変換が実施できない場合でも、一定の除圧効果が期待できます。

 また、エアマットレスを使用されているとのことですが、使い方によっては褥瘡発生のリスクにつながります。例えば、フラットシート(オムツ)などを敷いてしまうと、マットレスがもつ体圧分散性能を損なうおそれがあります。

 ほかに、ハンモック現象にも注意が必要です。シーツをピンと張ると、マットレスが沈む距離が浅くなり、身体とマットレスとの接触面積が減少します。接触面積が減少すると圧力が分散されず、特定の狭い範囲に集中し、結果として骨突出部の圧が上昇します。シーツは緩めに敷くのがポイントです。普段のケアのなかで、褥瘡発生のリスクにつながる要因がないかどうか、見直してみるとよいでしょう。

 マットレスによっては、自動で圧を分散する機能が搭載されているものもあります。体圧管理ができているか、皮膚に過剰な圧がかかっていないか、良肢位が保たれているか、発赤がみられないかなどを適切に観察することができれば、体位変換を行わなくても、同一部位に長時間の圧迫が生じるのを防げる可能性が高くなります。

スキンケアのポイント

 褥瘡予防においてはスキンケアも重要です。循環不全がある患者さんは、そもそも皮膚の血流が少なく、組織に十分な酸素や栄養が行き渡っておらず、皮膚の脆弱性が高まった状態です。さらに、皮膚が菲薄化し、衣服の摩擦やテープ剥がしなどの刺激で損傷が生じる可能性があるほか、皮膚の乾燥によりバリア機能が低下することも考えられます。そのため、清潔の保持だけでなく、保湿剤を用いて皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚の摩擦の軽減、外力による損傷や表裏剥離の予防につなげることが重要です。

 発汗や失禁により湿潤環境が長時間継続されると皮膚が浸軟となり、褥瘡発生リスクが高まります。特に、尿失禁や便失禁の状態が長時間続くことは避けたいため、清拭やオムツ交換の頻度を増やして清潔を保持します。洗浄後は、清潔なタオルやガーゼで軽く押さえるようにして水分を拭き取り、臀部や肛門周囲にバリアクリームを塗布して、尿や便から皮膚を保護します。患者さんに発汗がみられる場合は、室温や寝衣を適宜調整しましょう。

ケアを継続する重要性

 前述したように、循環動態が不安定な患者さんは褥瘡発生リスクが高いため、最大限の予防策を講じても、褥瘡が発生してしまうことはあり得ます。だからとって、これまでのケアが無駄であったということにはなりません。予防的なケアを行っていなければ、褥瘡はより早く発生し、より重症化していた可能性が高いと考えられます。新たな褥瘡の発生を予防したり、さらなる悪化を防ぐためにも、ケアを継続していくことが極めて重要です。

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