ペースメーカーを装着しているのに不整脈が起こるのはなぜ?
- 公開日: 2025/12/12
ペースメーカーとは
ペースメーカーとは、心臓の電気的活動が不十分なとき、人工的に電気刺激を発生させて心筋に伝え、拍動リズムを維持するための機器です。この電気刺激によって、心臓の動きをコントロールすることをペーシングといいます。ペースメーカーには、恒久的(植込み型)ペースメーカーと一時的(体外式)ペースメーカーの2種類があり、洞不全症候群や高度房室ブロックなどの徐脈性不整脈に対して用いられます。
また、ペースメーカーと似たようなデバイスとして、繰り返す心室頻拍など致死性不整脈に対応する植込み型除細動器(ICD)や、重度の心不全や脚ブロックなどによる同期不全に対して用いられる心臓再同期療法(CRT)があります。CRTは両心室ペーシングとも呼ばれます。
一口に不整脈といってもさまざまで、患者さんの病態生理に応じたデバイスが選択されます。デバイスによって適応や機能が異なるだけでなく、トラブルや異常がみられた際の対応も変わってくるため、患者さんの病態を理解し、どのデバイスを使用しているのかを正しく把握することが重要です。
ペースメーカー装着中の患者さんで不整脈がみられる理由
では、ペースメーカーを装着している患者さんで心房細動がみられるのはなぜでしょうか。それは、ペースメーカーが徐脈に対するペーシングを主機能とした機器であり、頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動など)を抑制する機能を有するものではないためです。したがって、ペースメーカーを装着していても、心房細動は起こり得ます。
例えば、高血圧、脂質異常症、高脂血症などの基礎疾患、冠動脈疾患や弁膜症といった心疾患の既往をもつ患者さんでは、感染症にかかったり、塩分や水分を過剰に摂取したりするなど、何かしらの要因で心臓に負荷がかかると、ペースメーカーを装着中であっても心房細動が生じる可能性があります。既往歴のない患者さんに比べてリスクも高いでしょう。
なお、デバイス類を扱う際は、誤作動や動作不良などの要因を考える必要がありますが、ペースメーカーには心拍数を下げる機能はそもそもないため、今回は機械の要因ではないと考えられます。
看護師に求められること
看護師には、デバイスの特徴を理解したうえで、観察や看護につなげていくことが求められます。
ペースメーカーは、心房細動に対する根本的な治療法ではないため、ペースメーカーを装着していても不整脈が起こることはありますし、心房細動が生じれば心房の収縮がうまく働かず、心拍出量の低下や血栓形成のリスクが生じることもあります。
ペースメーカーを装着している患者さんで心房細動を認めた場合には、循環動態や心不全に関連する症状の有無を観察するのとあわせて、ペースメーカーが適切に作動しているか、バッテリーの消耗による影響はないかといったデバイスに関連する情報も収集し、異常の早期発見と患者さんの安全につなげることが看護師の大切な役割といえます。
特に、心房細動に伴い循環動態が変化している場合、心不全に関連した症状が疑われる場合は、速やかに医師に報告します。
