WIFI分類
- 公開日: 2022/1/3
WIFI分類は何を判断するもの?
WIFI分類は、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)などの下肢の末梢動脈硬化疾患の予後を予測するために用いられるスケールです。末梢動脈硬化疾患は重度な虚血が生じると下肢の切断を余儀なくされるケースも少なくありません。
WIFI分類では、虚血の程度、病変の広がり、感染徴候の3つを加味したスケーリングを行い、1年後の下肢の切断や血行再建の必要性を「非常に低い」「低い」「中間」「高い」「救肢できない」という5つの段階に分類します。
末梢動脈硬化病変の予後を左右する3つの状況を総合的に判断することでより正確な推測が可能になるとされ、2014年にアメリカ血管外科学会が提唱しました1)。
WIFI分類はこう使う!
WIFI分類は末梢動脈硬化疾患の予後を予測し、適切な治療や管理の方針を決めるために用いられます。具体的には、潰瘍や壊死などによる組織欠損(W:wound)、虚血(I:ischemia)、足部感染(FI:Foot Infection)の3つの項目で評価します(表)。
これら3つの項目のgradeが高いほど、下肢切断や血行再建などを要する可能性が高くなります。患者さんの予後を正しく予測するためにも、正確な評価を行うことが大切です。
表 WIFI分類 W:woundgrade0 | 潰瘍・壊死なく安静時の疼痛のみ |
---|---|
grade1 | 踵以外骨露出のない浅い潰瘍、壊死はない |
grade2 | 踵以外の骨・腱・関節に至る深い潰瘍、趾に限局する壊死 |
grade3 | 踵も含めた広範囲の深い潰瘍あるいは壊死 |
ABI | AP | TP、TcPO2 | |
---|---|---|---|
grade0 | ≧0.80 | >100 | ≧60 |
grade1 | 0.60~0.79 | 70~100 | 40~59 |
grade2 | 0.40~0.59 | 50~70 | 30~39 |
grade3 | ≦0.39 | <50 | <30 |
grade0 | 感染の徴候なし |
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grade1 | 局所の皮膚あるいは皮下組織に限局(発赤2cm以内)した感染 |
grade2 | 潰瘍周囲2㎝を超える発赤、深部の感染 |
grade3 | SIRSを伴う感染 |
WIFI分類を看護に活かす!
ASOは進行すると下肢の虚血を引き起こし、重症化すると血行再建術や切断を余儀なくされます。さらに全身状態が悪い患者さんも多いため、診断した段階で予後を予測して、適切な治療や管理方針を決めていく必要があります。
末梢動脈硬化疾患の患者さんには、初期対応時にWIFI分類に基づく評価を迅速に行い、今後の予測を立てながら対応していきましょう。救肢できない可能性が高い患者さんに対しては、心理面なども慎重なサポートが必要です。
また、治療・経過観察中の患者さんを外来や病棟で対応する際には前回までのスケーリングと比較し、病状の進行がないか確認することも大切です。何らかの変化を検知した場合は、速やかに医師に報告しましょう。