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【連載】麻酔を極めよう!

第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方法、副作用と合併症、観察項目

  • 公開日: 2021/3/25
局所浸潤麻酔とはどのような目的で実施するのか、どのような薬剤を使用するのかを解説します。

局所浸潤麻酔とは

 皮膚や皮下、粘膜に局所麻酔薬を注入することで目的とする部位の知覚神経を一時的に麻痺させる(痛みを取る)方法です。


 手術では、ホクロや皮膚病変の切除、切開排膿、抜歯など体表の小手術が主な対象となります。全身麻酔で行う手術であっても、硬膜外麻酔や末梢神経ブロックなど術後の鎮痛手段の一つとして創部の局所浸潤麻酔が行われています。手術以外にも、皮膚の小切開や穿刺を伴う処置時(中心静脈カテーテルや胸腔ドレーン挿入、裂傷縫合など)の麻酔としても使用されるなど、最も盛んに行われている麻酔方法です。2時間を超える手術や処置が広範囲に及ぶ場合などは他の麻酔方法が選択されます。


局所浸潤麻酔に用いる薬

 局所麻酔法で使用される薬は局所麻酔薬です。神経細胞内へのナトリウムの流入を抑え(神経細胞内にナトリウムイオンが流入すると活動電位が生じて神経の伝導が起こる)、投与部位で神経伝導を阻害し、痛み刺激を感じないようにします。局所麻酔薬はナトリウムチャネル阻害薬と呼ばれますが、化学的な構造から、エステル型とアミド型に分けられます。それぞれの薬の特性を表に示します。局所浸潤麻酔の作用発現は薬液を注入し数秒後から即座に効果が出てきます(薬剤にもよりますが、硬膜外麻酔や末梢神経ブロックでは10-30分程度かかります)。薬液を注射部位周辺にしっかり浸潤させるため、数分待ってから処置を開始することが望ましいです。


表 局所浸潤麻酔で使用する主な局所麻酔薬

薬品名
使用濃度(%)
作用持続時間(分)
最大投与量:極量(mg)
エステル型
プロカイン
0.25-1
45-60
1000
アミド型
リドカイン
0.5-2
60-120
200
メピバカイン
0.5-2
90-180
300
ロピバカイン
0.2-0.75
240-480
150


 エステル型は血漿のエステラーゼという酵素で即座に分解されるため短時間作用性です。アミド型は肝臓で代謝されるため肝機能障害のある患者さんでは中毒が生じやすくなります。


アドレナリン(エピネフリン)の添加

 10-20万倍にして局所麻酔薬に添加されることがあります。血管収縮作用により局所麻酔薬の血液内への吸収が緩徐になるため、作用時間を延長させ、局所麻酔薬中毒の可能性も低くなります。投与部位の止血効果も得られます。リドカインのアドレナリン添加製剤も販売されておりEpinephrineの頭文字を取り“E入り製剤”とも呼ばれています。注意点としては、指や耳介、陰茎など末梢の血流が阻害されると壊死に至る可能性がある部位への投与は禁忌です。また、ロピバカインには添加しても血管収縮による作用延長が望めないと言われています。


局所浸潤麻酔の実施方法

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