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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

熱傷深度(Burn Depth:BD)

  • 公開日: 2021/12/15

熱傷深度は何を判断するもの?

 熱傷深度(Burn Depth:BD)は、臨床症状から熱傷による障害が皮膚組織のどの部位までおよんでいるのか評価するスケールです。

 臨床症状から熱傷の深度を推定するため、実際の熱傷の深度とは必ずしも一致しないものの、見た目で判断でき、簡便であることから、熱傷面積とともに、熱傷の重症度を決める際の指標の一つとして広く用いられています。救急の現場で搬送時に行うトリアージ、救急救命医や皮膚科医などが治療を判断する際にも有用です。

 より正確に深度を推定する場合には、ビデオマイクロスコープやレーザードプラ血流計測法などが実施されます。ほかに、創部に針を刺して疼痛の有無を確認するピンプリックテストや、皮下組織まで熱傷がおよんでいると容易に毛を抜くことができるため、抜毛テストなどが併用されることもあります。

熱傷深度はこう使う!

 熱傷深度はⅠ~Ⅲ度までの段階で表され、Ⅱ度は浅層、深層の二段階に分けられます(表)。

表 臨床症状による熱傷深度
分類臨床症状
Ⅰ度熱傷(epidermal burn)
紅斑、有痛性
浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn)
紅斑、水疱、有痛性
水疱は圧迫で発赤が消失
深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn)
紅斑、紫斑~白色、水疱、知覚鈍麻
水疱は圧迫しても発赤が消失しない
Ⅲ度熱傷(deep burn)
黒色、褐色または白色
水疱(-)、無痛性

玉置邦彦,他編:最新皮膚科学体系 第2巻 皮膚科治療学 皮膚科救急.中山書店,2003,p.241.より引用一部改変

 皮膚は浅いところから表皮、真皮、皮下組織の3層で成り立っており、Ⅰ度は表皮部分のみ、浅層Ⅱ度は熱傷が真皮まで達するものの部分的で済んでいるもの、深層Ⅱ度は真皮まで完全に損傷している状態をいいます。

 Ⅲ度では表皮、真皮のみならず、脂肪や血管などを含む皮下組織まで熱傷がおよびます。皮膚の深いところまで障害されると治癒までに時間を要し、Ⅲ度熱傷では表皮、真皮が完全に損傷され痛みもなく、皮下組織まで障害が達していることから自然治癒は見込めません。

熱傷深度を看護に活かす!

 熱傷の重症度により、治療方針だけでなく治癒までの期間なども大きく変わってきます。Ⅰ度では痛みなどの自覚症状も軽度で、数日で治癒が見込めます。

 浅層Ⅱ度では、治癒までに1~2週間かかるもののほとんど瘢痕(創跡)は残りませんが、深層Ⅱ度に関しては治癒まで3週間以上を要し、ケロイドなど瘢痕化する可能性も高くなります。Ⅲ度に至っては、皮下組織まで障害されているため皮膚の再生は望めません。また、植皮術を施行しない場合には、創部の周囲が上皮化することで瘢痕が残り、ケロイドに至ります。

 熱傷深度は、見た目で判断することができるため、熱傷で外来受診した患者さんのトリアージや、熱傷で入院中の患者さんの経過予測などを行う際に活用するとよいでしょう。

参考文献

●日本皮膚科学会:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン1:創傷一般.(2021年11月17日閲覧)https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1380006822_3.pdf
●日本熱傷学会:熱傷診療ガイドライン 改訂第2版.(2021年11月17日閲覧)http://www.jsbi-burn.org/members/guideline/pdf/guideline2.pdf
●寺島裕夫:第15回 軽度の熱傷処置.レジデント 2010;3(7):120-1.

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