1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 整形外科
  5. Gustilo分類(ガスティロ分類)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Gustilo分類(ガスティロ分類)

  • 公開日: 2022/10/9

Gustilo分類は何を判断するもの?

 Gustilo分類とは、開放骨折の重症度を評価するためのスケールです。

 開放骨折とは、骨折部が体表面の傷と直接つながった状態の骨折のことを指します。神経、血管、筋肉、軟部組織などの損傷を合併することが多く、骨折部が外界と交通しているため、適切な処置をしなければ重度な感染症を引き起こして、四肢の切断を余儀なくされるケースも少なくありません。

 開放骨折による感染症の発生率は、Gustilo分類のグレードの高さと関係しているとの報告もあり1)、スケールを用いて迅速に評価を行い、適切な初期治療につなげることが、患者さんの予後に大きな影響を与えると考えられています。

Gustilo分類はこう使う!

 Gustilo分類では、創の大きさ、汚染、骨折、軟部組織損傷の程度から、開放骨折の重症度を5つのグレード(typeⅠ、typeⅡ、typeⅢA、typeⅢB、typeⅢC)にスケーリングします(表)。

表 Gustilo分類

typeⅠ1cm以下の開放創。汚染と軟部組織損傷は軽度。骨折は単純またはわずかな粉砕
typeⅡ1cm以上の開放創。汚染と軟部組織損傷は中等度。骨折は中等度の粉砕
typeⅢA重度の汚染及び軟部組織損傷を認めるが、軟部組織で骨折部の被覆が可能
typeⅢB重度の汚染及び軟部組織損傷を認め、皮弁での被覆が必要
typeⅢC修復を要する動脈損傷を伴うすべての開放骨折
助川卓也,他:災害医療における骨折治療.Dokkyo Journal of Medical Sciences 2012;39(3):217-23./武田勇樹,他:第5回 外傷のプライマリケア.国立医療学会誌 2009;63(10):668-74./伊師森葉,他:重度四肢外傷における深部感染を回避するためのポイント.WOC Nursing 2021;9(4):18-26.を参考に作成

 Gustilo分類は重症度の評価とあわせて、治療方針を決める際の指標としても用いられます。例えば、typeⅢB/Cでは治療が難しく、深部感染率も高いとされていますが2)、初期治療としてデブリードマンと血行再建、骨折部の仮固定を行ったうえで損傷状態を再度評価し、骨軟部組織再建を行う「Fix&Flap」と呼ばれる治療法が一般的に選択されます3)、4)

Gustilo分類の結果を看護に活かす!

 前述したように、Gustilo分類ではグレードが高いほど(特にtypeⅢB/C)深部感染などの合併症を引き起こす可能性が高くなり、迅速かつ適切な初期治療を行うことが求められます。医師がスケーリングしたGustilo分類を念頭に、必要な処置・介助が速やかにできるよう準備し、重篤な合併症および後遺症リスクの低減につなげることが大切です。

 また、初期治療後の患者さんでは術後感染のリスクがあるほか、グレードが低く比較的軽症の患者さんであっても痛みが出現するおそれがあるため、バイタルサインの変化や患者さんの訴えを見逃さないようにしましょう。

引用・参考文献

1)Weber D,et al:Time to initial operative treatment following open fracture does not impact development of deep infection:A prospective cohort study of 736 subjects. J Orthop Trauma 2014;28(11):613-9.
2)R B Gustilo,et al:Classification of type III (severe) open fractures relative to treatment and results.Orthopedics 1987;10(12):1781-8.
3)土田芳彦,他:日本における重度四肢外傷治療体制への提言-救命救急センターは「重症四肢外傷患者」を直ちに専門施設へ転送すべきである.日外傷会誌 2016;30(4):467-8.
4)伊師森葉,他:重度四肢外傷における深部感染を回避するためのポイント.WOC Nursing 2021;9(4):18-26.
●小林由香,他:Gustilo 分類 type ⅢB 下腿開放骨折における有茎筋皮弁の治療経験.日外傷会誌 2018;32(1):1-8.
●小倉友介,他:重度前腕外傷に対しFix&Flapを行った1例.整形外科と災害外科 2018;67(2):317-5.
●助川卓也,他:災害医療における骨折治療.Dokkyo Journal of Medical Sciences 2012;39(3):217-23.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949