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【連載】COPDとは全く違う! 知ってる? 間質性肺炎の看護

その人らしさを支える看護とは|慢性疾患看護の視点で考える 間質性肺炎患者・家族の支援

  • 公開日: 2019/8/25
  • 更新日: 2020/10/21

目次


「その人らしさを支える看護」とは

求められる臨床看護の確立

 みなさんは、次のような声を聞いたことはありませんか? 「Aさん、間質性肺炎があるけど手術は受けられるのかな?」「Bさんの抗がん薬治療が、間質性肺炎で中止になった」などです。
 
 間質性肺炎は、もし見つかれば、予定されている手術や治療を立ち止まらせてしまう難しい疾患です。このような間質性肺炎には、薬剤性や膠原病性、そして原因のわからない特発性と呼ばれるものなど、数多くの種類があります。特に原因不明の特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)は、厚生労働省の指定難病であり、9種類に分けられ、治療や予後が大きく異なります1)
 
 IIPsは、現在、診断や治療法の確立に向けて研究が進められていますが、中でも最も比率が高いとされている特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)は、乾性咳嗽と労作時の呼吸困難感を特徴とし、予後は悪性疾患よりも短いケースがみられます。また症状を管理する薬剤も少なく、心身への負担が大きい疾患です2)

 イギリスでは、間質性肺疾患の専門看護師の資格があり、看護への期待が高まっています3)。しかしながら、わが国では、悪性腫瘍についてはがん看護専門看護師を中心に臨床看護の役割が確立されていますが、間質性肺炎においてはまだ確立しているとはいえません。本稿では、IPFを取りあげ、その人らしさを支える看護援助について検討していきます。

患者の尊厳を守り患者の人生を支える援助

 本稿の重要なテーマは、「その人らしさを支える看護」です。「その人らしさ」については、認知症の人々へのパーソンセンタードケアを提唱したキッドウッド博士が、“その人らしさとは、パーソンフッドであり、人として認めること、尊重、信頼である”との深い洞察を記しています4)。また、黒田ら5)は、“看護学分野における「その人らしさ」の概念分析”を実施し、その定義を「内在化された個人の根幹となる性質で、他とは違う個人の独自性をもち、終始一貫している個人本来の姿、他者が認識する人物像であり、人間としての尊厳が守られた状態という特性を指す」としました。

 このように「その人らしさを支える看護」とは、その人の固有の人生を支える援助を包含した概念と考えられます。

IPFの進行と療養の経過

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IPFの特徴的な症状

 IPFの自然経過は、緩徐に進行するものや、急速に進行するものなどさまざまなケースがありますが、いずれにせよ、必ず進行するということがわかっています(図)6)
 
IPFの自然経過
 
 IPFの特徴的な症状には、乾性咳嗽、労作時呼吸困難、抑うつや不安7)などがありますが、日本人におけるIPFの特徴は、その死因にあります。これは、海外での主な死因が慢性呼吸不全であるのに対して、日本では急性増悪による死亡が4割を占める8)と報告されており、呼吸状態の急激な悪化により死に至るケースが多いと考えられています。そのため、IPFのエンドオブライフケアの場面では、日本独自の看護援助のあり方を検討する必要があると筆者は考えています。

IPFの療養経過

 次に、IPFの療養の経過について、患者の共通した療養体験を抽出するために、筆者は、療養体験を記述した国内外の質的研究4論文によるメタ・シンセシスを実施しました9)。メタ・シンセシスとは、複数の質的研究の結果を統合し、共通性のあるテーマを導き出し、研究成果の解釈の可能性を広げること10)をいいます。

 その結果、合成された7つの重要な概念とメタファー(隠喩)を表1に示します。重要な7つの概念IPF患者は、身体の異変を感じながらも、長期間別の呼吸器疾患の治療を受けるなどの【診断までに要する長い時間】がありました。そして、IPFと診断を受けた後、治療や予後、急性増悪などの説明を受けて【病いの道行きへの苦悩】をし、病状の進行に伴い、呼吸困難感などにより徐々にADLの低下がみられ、社会的な役割の喪失といった【症状の負担と自立の喪失】を経験していました。
 
合成された7つの重要な概念とメタファー(隠喩)

 また、家族による手助けが必要になる、仕事ができず収入がなくなるなどの【家族役割の変化】を体験し、【在宅酸素による認容と生活制限】により、活動範囲や他者との社会的な交流の範囲を縮小せざるを得ず、【生きること(実存的)への苦痛】を抱えながらも、社会資源を使うための情報収集をするなどの【自立した生活維持への挑戦】をしていくという経過がみえてきました。
 
 こうして明らかになった療養の経過から、IPFがもたらす生活の変化は非常に大きく、援助が必要であると考えました。

IPF患者のアセスメント

アセスメントに必要な観察・傾聴・コミュニケーション

 IPF患者へのアセスメントでは、自然経過や療養の経過から、症状などの身体的な苦痛だけでなく、症状などによる情動面への影響、ならびに療養の体験そのものによる心理面、社会面、そして生きることへの苦痛に対するアセスメントが必要となります。
 
 こうしたアセスメントを行うためには、客観的情報を得るための十分な観察と、主観的情報を得るための傾聴とコミュニケーションが大切です。
 
 特にコミュニケーションについては、症状の程度によりオープン・クエスチョンやクローズド・クエスチョンなどを使い分けながら、発問を変えます。
 
 患者が息苦しさを強めない状態で答えられるようにし、呼吸困難感や咳嗽の悪化を防ぐとともに、心理的なストレスを与えないかかわりが大切です。これは、症状緩和の難しい人々に看護師が対峙したときのコミュニケーション技術としても重要です。

 また、呼吸困難感は感情的な側面への影響が大きいため11)、看護師のかかわり自体が患者への心理的ストレスとなっていないか、また、患者にどのように受け止められているのかを、常に洞察してケアを積み重ねていくことが必要となります。
 
 アセスメントの実施による「その人らしさを支える援助」の提供は、治らない病と生き抜いていく患者、ならびにその家族の支えになることです。
 
 アセスメントの具体的な視点を、IIPs診断と治療の手引き、IPFの治療ガイドライン、ならびに筆者の研究調査結果をもとに、表2にまとめました。

IPF患者を中心とした間質性肺炎患者へのアセスメントの視点

イラスト/カミヤ マリコ


引用・参考文献

1) 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂 第3版,南江堂,2016.
2) 猪飼やす子:特発性肺線維症患者が呼吸困難感と共に生きる体験.日本看護科学会誌 2016;36:238-46.
3) Burge G,et al:The value of a specialist nurse-lead interstitial lung disease clinic, patients’ views European Respiratory Journal 2015;
46:PA332.
4) トム・キットウッド,他訳:認知症のパーソンセンタードケア 新しいケアの文化へ.クリエイツかもがわ,2017.
5) 黒田寿美恵,他:看護学分野における『その人らしさ』の概念分析―Rodgersの概念分析法を用いて―.日本看護研究学会雑誌 2017; 40(2):141-50.
6) Raghu G,et al:An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management.Am J Respir Crit Care Med 2011;183(6):788-824.
7) Garibaldi BT,et al:Symptom-based management of the idiopathic interstitial pneumonia.Respirology 2016;21(8):1357-65.
8) Natsuizaka M,et al:Epidemiologic survey of Japanese patients with idiopathic pulmonary fibrosis and investigation of ethnic differences.Am J Respir Crit Care Med 2014;190(7):773-9.
9) Igai Y:End-of-life trajectory of coping and self-care of patients with idiopathic pulmonary fibrosis: A meta-synthesis using metaethnography.Japan Journal of Nursing Science 2018 doi:10. 1111 / jjns. 12213
10) Sandelowski M,et al:Focus on qualitative methods. Qualitative metasynthesis:issues and techniques.Res Nurs Health 1997;20(4):365‒71.
11) Kinzel T:Managing lung disease in late life: A new approach.Geriatrics 1991;46(1):54-6, 58-9.

● 猪飼やす子,他:進行期COPD及び慢性間質性肺炎患者の終末期医療に関する横断的研究.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2015;25(2):
225-30,2015.
● 猪飼やす子:特発性肺線維症患者が呼吸困難感と共に生きる体験.日本看護科学会誌 2016;36:238-46.
● 猪飼やす子:特発性間質性肺炎患者が認知する病気の不確かさと関連要因の探索.日本看護科学会誌2017;37:399-407.
● Igai,Y:End of life trajectory of coping and self-care of patients with idiopathic pulmonary fibrosis: A meta-synthesis using metaethnography.
Japan Journal of Nursing Science 2018(In Press).
● 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班 特発性線維症の治療ガイドライン作成委員会編:特発性肺
線維症の治療ガイドライン2017.南江堂,2017.
● 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂 第3版,南江堂,2016.


この記事はナース専科2018年7月号より転載しています。

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