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【連載】COPDとは全く違う! 知ってる? 間質性肺炎の看護

間質性肺炎患者への在宅酸素療法(HOT)の援助

  • 公開日: 2019/8/18
  • 更新日: 2020/3/27

目次


自宅での生活におけるHOTの援助

 間質性肺炎のHOTは、労作時の低酸素血症の是正を目的に、まずは労作時にのみ導入されることが多く、その目標は、生活動作の維持や生活の質の向上です。しかし、「酸素はあなたに必要ですから吸いましょう」と説明を繰り返すだけでは、援助とはいえません。

HOTの受け止めを傾聴する

 自宅での生活にHOTを取り入れていくためには、HOTを導入する目的が、低酸素の是正や息苦しさなどの症状の緩和、そして、生活活動の維持であることを患者ならびに家族がどのように受け止めているのかを傾聴します。
 
 「家族に心配をかけたくない」「酸素吸入の姿をみせたくない」という理由で酸素をあまり吸わないようにする患者もいます。また、家族もHOTに対して否定的な感情やHOTの姿を受け入れられないなどの思いをもっていると考えられる場合には、アドヒアランスに影響を及ぼす可能性を考慮し、継続して援助します。
 
 患者やその家族は、話せる相手を選んで話をしてくれると考えられます。日頃から自己の思考や言動の傾向などを意図的に振り返り、自分が、患者やその家族にとって“話せる相手”であるのかどうかを考えることが大切です。また、患者は呼吸困難感を有するため、かかわり方によっては、相手へのストレスとなり、症状を増悪させる可能性もあります。だからこそ、リフレクションが特に重要になります。
 

HOTとの生活を共に創り出す

 続いて、患者に、HOTでは「どのような生活場面で、何リットルを吸うのか」についての理解を確認をします。生活動作である洗面、食事、排泄、歩行、入浴、外出、車の運転などを振り返りながら傾聴しましょう。そして、間質性肺炎は労作時の低酸素が問題となるため、Ⅱ型呼吸不全の有無を確認のうえ、患者の“酸素を吸いすぎることへの不安”に配慮しながらかかわります。
 
 また、労作時と安静時の酸素流量の切り替えが確実に実施できるように、在宅酸素濃縮器のリモコンの設置、同居家族による協力、そして自宅での動線などの調整を行います。HOTにより息切れの改善がみられない場合には、指示酸素流量または吸入酸素濃度が足りていないことなども考えられるため、受診するように説明をします。そして、実施した援助については、ケアマネジャーや訪問看護師、在宅酸素業者と情報を共有し、継続して援助を行います。
 
 間質性肺炎の患者を対象としたHOTの体験に関するオーストラリアの研究では、“疾患の末期段階の象徴”と受け止める傾向が報告されています1)。HOT導入という出来事が、心理的また社会的に、患者に大きな影響を及ぼしていることがわかります。患者のHOTの使用状況、生活行動、病いの受け止めについては、丁寧に傾聴し、共に考える姿勢をもちかかわるようにしましょう。

退院後の訪問(自宅での生活状況のアセスメント)

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 HOT導入患者の退院支援として、患者がもつHOTへの思い、どのように過ごしたいと思っているのか、自宅の間取りと行動範囲といったことについて情報収集を行い、患者が望む生活ができるように酸素濃縮器の設置場所、休憩場所などを共に検討します。
 
 訪問時には、在宅生活を行うなかで問題がないのかを確認します。確認の際には、患者にトイレや風呂場まで歩行してもらったり、階段を昇り降りしてもらうなどして、何気ない動作時のSpO₂、脈拍、動作要領、休憩状況、酸素流量は適切であるかなどを確認します。そして、特に間質性肺炎の患者の場合は、労作時に低酸素になるため、実際の動作要領や休憩をどこでしたらよいのかなど、具体的に判断し調整します。
 
 また、在宅という場は、患者の価値観がみえるところでもあります。患者が大切にしていることを把握し、価値観が維持できるように支援します。ここで事例を1つ紹介します。

<事例紹介2)
●患者背景
・ Aさん、70歳代、男性

・間質性肺炎でHOT中%VC41.8%、%DLco19.8%。安静時、リザーバー付鼻カニューレ3L/分、労作時リザーバー付鼻カニューレ7L/分で使用。電気工事関係の会社自営、仕事は子どもに移譲中。生きがいは自分が築き上げた会社を子どもが運営できるようにサポートすること。

・退院前に、自宅の間取り図、行動範囲を踏まえて酸素濃縮器設置場所、酸素流量調整などを患者、家族と相談・確認をしていました。

●訪問して行ったこと
・環境調整:間取り図やAさんの話から抱いていた自宅のイメージとズレがあり、調整を行いました。玄関に椅子の設置と緊急時の予備のXLボンベを設置(ベッド横にも緊急時用のXLボンベを設置しているが追加)したほか、酸素濃縮器のリモコンの誤作動が起きない位置へ変更しました。

・酸素流量調整や休憩場所:トイレ、風呂場など、普段通りに歩行してもいました。酸素流量調整はできていましたが、退院前に話していた休憩を取り入れておらず、SpO₂83%、脈拍116/分。また、玄関で靴を履くときに、前傾姿勢が多く、SpO₂80%、脈拍120/分で、いずれもSpO₂低下と脈拍増加がありました。そこでモニタリングを提示しながら、室内での休憩場所の確認と、玄関に椅子を設置し、一旦、椅子に座って休憩すること、体幹前屈を防ぐ姿勢で靴を履くように練習しました。

・自尊感情向上:机に仕事関係の書類が置かれていたため、仕事に関する話を傾聴。会社を築きあげられたことは素晴らしいと称賛しながら、今後の仕事について語ってもらいました。

患者への継続した援助が重要

 事例では、訪問看護、看護外来と継続してかかわることにより、患者、訪問看護師と生活環境を共有できました。そうすることで、病状進行や生活に密着した具体的な療養法を患者、訪問看護師をはじめとする在宅医療従事者とともに検討することができます2)。看護外来のない施設においてもサマリーなどを活用し、病棟看護師、外来看護師、訪問看護師とで連携が図れるようにすることが重要です。
 
 ケアを受ける場が変わっても、継続した援助を保障することが、患者と家族の支えにつながります。 ケアを提供する体制の構築には、調整を担う看護師が必要です。イギリスには、がん患者とその家族を対象とした“Hospital 2Home”という援助手法があります3)。その方法は、専門看護師が患者と家族、病院と地域の援助者によるケースカンファレンス前に、患者とその家族に電話をし、現在の緩和ケアの検討事項と、ケースカンファレンスによる達成事項を特定します。検討事項には、終末期医療に関する事前指示の話し合いを患者が望んでいるかの決定も含まれます。そして、ケースカンファレンス後に、専門看護師が個別ケアプランを作成し、すべての参加者への伝達ならびに患者とその家族へのフォローアップを電話で行い、問題解決を目指すものです。

 Bajwahらが、これを肺線維症の人々を対象に実施したところ、4週間後の生活の質および症状に改善がみられたと報告しています3)。これは、調整の専門的知識を有する専門看護師をはじめ、患者の生活と医療、両方の判断をすることができる看護師だからこそ、患者と家族の新たな生活の構築とその人らしく生きることに貢献できたと考えます。

イラスト/カミヤ マリコ


引用文献

1) Khor YH,et al:Oxygen Therapy for Interstitial Lung Disease A Mismatch between Patient Expectations and Experiences.Ann Am Thorac Soc 2017;14(6):888‒95.
2)竹川幸恵:D-23:継続看護の実際と課題―看護外来を実施して―.第21回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会.2011年.長野県松本市
3) Bajwah S,et al:Palliative care for patients with advanced fibrotic lung disease:A randomised controlled phase II and feasibility trial of a community case conference intervention.Thorax 2015;70(9):830-39.


この記事はナース専科2018年7月号より転載しています。