メルケル細胞がんと、新たな薬剤が登場したメルケル細胞がん治療の最前線
- 公開日: 2018/1/20
11月6日大手町サンケイプラザにて「がん免疫と治療」プレスセミナーが行われました。解説は、国立がん研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野 先端医療開発センター 免疫トランスレーショナルリサーチ分野 分野長 西川 博嘉先生と、国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科科長 山﨑 直也先生です。新たに抗PD-L1抗体が承認されたことにより、これまで治療困難であったメルケル細胞がんが治療可能になりました。2医師は、免疫療法について研究、臨床の立場からそれぞれ解説しました。その様子をレポートします。
メルケル細胞がんとはどのようながんなのか
メルケル細胞とは、皮膚表皮層の最下部に位置している、神経内分泌細胞の一種です。感覚ニューロンと接しており、軽触覚に不可欠です。メルケル細胞がん(以下MCC)は、メルケル細胞から発生する皮膚がんで、一般的に悪性度が高いといわれる悪性黒色腫よりも悪性度が高いとされています。外観が特異的でない(痛みを伴わない、ドーム形、赤・紫・皮膚色、大きさが20mm未満)ため、生検前にMCCが疑われることはまれです。好発部位は日常的に日光に曝されている部位で、90%は白人に発症します。
米国国立がん研究所 SEER dataでは、MCCと診断された患者はこの十数年で増加傾向にあります。リスク因子には、年齢(66歳以上)、日光曝露、免疫抑制などの他に、MCCの発症に関与しているといわれるメルケルポリオーマウイルスというものがあります。このウイルスには、4〜8割の日本人が感染しているのではないかといわれていますが、不顕性であり感染は幼少期の頃と考えられるため、正確な数は不明です。また、感染しても必ず発症するわけではありません。
これまでのMCCの治療と訪れた変化
MCCは悪性度が高く、進行期における標準治療は確立されていません。遠隔転移がなければ50%の確率で、手術±放射線治療で根治が可能です1)。しかし、残りの50%では再発し、転移があれば1〜2年以内に死亡します1)。MCCの再発までの時間中央値は約8カ月で、90%が2年以内に生じるとされています2)。
化学療法の奏効率は55%ですが、MCCはすぐに耐性ができてしまうため奏功期間の中央値は85日と短くなっています3)。化学療法に使用する薬剤も、これまではMCCとタイプの似ている肺小細胞がん用の薬剤を使用していました。しかし、国内では唯一のMCC治療薬であるバベンチオが承認されたことで、これまでとは違い、MCCに対してより有効な治療が可能になったのです。
画期的な薬剤「バベンチオ」
臨床試験では、他の薬剤と比較して奏効までの時間が短く、かつ奏効期間が明らかに長いことがわかり、腫瘍サイズも多くの患者さんで縮小がみられました。全ての患者さんに有効なわけではありませんが、効果がみられた場合にはさまざまな点においてこれまでの治療薬よりも有効なことがわかりました3)4)5)6)7)。