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再確認しよう! 65歳以上の肺炎対策

  • 公開日: 2024/2/9

2023年8月28日に肺炎に関するメディアセミナーが開催されました。日本人の死因の第5位を占める肺炎の死亡者は、約98%が65歳以上の高齢者が占めています。そこで、「人生100年時代、いま改めて65歳以上が注意しておきたい肺炎対策—Life-course immunizationの中での高齢者ワクチン戦略―」と題して、高齢者の肺炎の特徴や原因、予防法などについて、独立行政法人国立病院機構・東京病院・感染症科 部長の永井英明先生による講演が行われました。この講演の概要を紹介します。

肺炎とは

 肺炎とはなんらかの原因により肺に炎症が起こることを指し、放射線による肺炎や化学物質による肺炎もありますが、圧倒的に多いのは微生物が原因となる肺炎です。原因となる微生物は肺炎球菌をはじめとする細菌が最も多く、ウイルスによる肺炎は滅多に遭遇しません。

 上気道とは鼻、口、咽頭、喉頭までですが、そこの炎症が上気道炎、つまり風邪です。気管から終末細気管支までが下気道で、そこの炎症は気管炎や気管支炎です。さらに奥の肺胞系、二酸化炭素と酸素のガス交換をする場、肺実質に起こる炎症が肺炎です。

 日本における死因別にみた死亡率の年次推移をみると、近年はトップはいつも悪性腫瘍です。2番目が心疾患で、これまで3番目であった脳血管疾患は減少してきており、2011年に肺炎が第3位に踊り出ています。2017年に肺炎の死亡率の順位が下がっているのですが、これは誤嚥性肺炎を肺炎の統計から除いたためで、誤嚥性肺炎と肺炎の数値を足せば3位のままとなっています。

 肺炎による年齢別死亡率をみると、肺炎の死亡者の約98%は65歳以上です。したがって肺炎そのものを抑えるということは、高齢者を守るために非常に大事だといえます。高齢者は慢性の心臓疾患、慢性の呼吸器疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病などさまざまな基礎疾患、併存疾患をもっており、肺炎などの感染症にかかりやすく、症状も重くなる傾向があります。

 また、肺炎は高齢者では気づかれにくい傾向にあります。肺炎の一般的症状は発熱、咳、痰ですが、高齢者では微熱程度で、熱があることに気づかなかったり、咳や痰などの呼吸器症状が乏しかったりします。そのため、気づくのが遅くなる可能性が十分にあり、急に症状が進み呼吸不全になって受診するということもあります。ですから高齢者については、健康状態について常に注意深く見ていく必要があると考えています。

肺炎球菌感染症とは

 肺炎を引き起こす病原菌で一番多いのは肺炎球菌です。感染経路は患者さんや保菌している人が、咳やくしゃみをすると、しぶきの中に含まれる細菌を吸い込んで感染する、飛沫感染です。成人も一部が保菌していますが、小児が鼻の奥に保菌していることが多く、小児から高齢者に菌を移して、高齢者が肺炎を発症させるという流れがあることもわかっています。

予後不良となるIPD

 肺炎球菌に感染し、髄液や血液など無菌的なところに菌が入り込んでしまった状態を「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」といいます。これは非常に重篤な病態になり、死亡や後遺症を起こすリスクが高くなります。IPDは予後不良で、成人では亡くなる人が5人に1人で、3分の1が死亡または、なんらかの後遺症が残るというデータがあります。また同じデータでは、入院後2日以内に半分以上の人が亡くなっています。入院初日に亡くなった人が22%ですので、非常に経過が早く急激に悪化するということがわかります1)

 IPDの罹患率を健康な人と併存疾患、基礎疾患を持っている人との比較でみると、慢性の肺疾患で16.4倍、慢性肝疾患で13倍、糖尿病で12.6倍、慢性心疾患で15.7倍、慢性腎疾患で25.2倍、がんでは43倍となっています。併存疾患があると、成人においてもIPDの罹患率が上がることもわかっています。

肺炎の予防とワクチン

 肺炎の予防は、身体に細菌やウイルスが入り込まないようにするために、マスクの着用、手洗い、うがいという日頃の衛生管理が非常に大事だと思っています。特に高齢者は誤嚥性肺炎予防のため、誤嚥を防ぐとともに口腔ケアも大切です。

 規則正しい生活、特に睡眠は身体の抵抗力を強めるためにも必要です。また、喫煙は明確に肺炎球菌感染症を増やします。タバコを吸っている人は、肺炎球菌ワクチンを打つことが推奨されていますし、禁煙は非常に大事です。また、基礎疾患の見直しも必要になります。

 ワクチンは小児と関連して話されることが多いですが、現在は小児から高齢者まで、全世代におけるワクチン接種を推奨する「Life-course immunization」という考え方が世界的に主流になっています。

 内科医の私としては、高齢者に対して常に4つのワクチン、①インフルエンザワクチン、②肺炎球菌ワクチン、③帯状疱疹ワクチン、④新型コロナワクチンの接種を推奨しています。

 新型コロナワクチン、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンの3つのワクチンの接種状況ですが、65歳以上で新型コロナの累積接種率(1~3回)は9割以上で非常に高くなっています2)。一方で肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは実施率となるため、一概に比較できませんが、肺炎球菌ワクチンは14%という数字が出ており高いとはいえません。インフルエンザワクチンも55%程度となっています3)

 肺炎球菌ワクチンは定期接種となりましたが、接種率が低く、接種率の向上が求められます。ワクチンの推進には医療従事者の勧めが大きな力となると考えています。

引用文献

1)厚生労働省科学研究費補助金 新型インフルエンザ等振興・再興感染症研究事業 重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析、その診断・治療に関する研究(2024年1月30日閲覧)http://strep.umin.jp/pneumococcus/case_study.html
2)首相官邸:新型コロナワクチンについて(2024年1月31日閲覧)https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
3)厚生労働省:定期予防接種実施者数 平成6年法律改正後(実施率の推移)(2024年1月31日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html


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