AKIN基準
- 公開日: 2021/8/13
AKIN基準は何を判断するもの?
AKIN基準は、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の診断と重症度分類を行うためのスケールです。
以前は、腎機能の低下が短期間のうちに起こり、体液の浸透圧や電解質バランスの維持ができなくなった状態を「急性腎不全(acute renal failure:ARF)」としていました。
しかし、体液の恒常性維持が可能であったとしても、腎細胞に少しでも障害が生じている場合は速やかな医療的介入が必要であると考えられるようになり、軽度な腎機能悪化を含むAKIという概念が用いられるようになりました。
2004年に、AKIの重症度分類としては世界初となる「RIFLE基準」が提唱されました1)。RIFLE基準では、判断基準に糸球体濾過量(GFR)が用いられていますが、AKIでは腎機能の変動が起こりやすいため、Crの産生低下や体液の恒常性に影響を受けやすいGFR値を用いることが問題視されていました。
このことを踏まえ、GFR値を用いずにAKIの重症度を判定するための新たなスケールとして、2007年にAKIN基準が提唱されました2)。
AKIN基準はこう使う!
AKIN基準は、AKIを早期に検知し、医学的介入につなげることを目的としています。
わずかな血清クレアチニン(Cr)値の上昇でも生命予後に与える影響は大きい3)、4)ことから、より軽微な血清Cr値の上昇(≧0.3mg/dL)、血清Cr上昇の時間経過(48時間以内)を含めた定義とステージ分類が設定されています(表)。
表 AKIN基準
Mehta RL,et al:Acute Kidney Injury Network:report of an initiative to improve outcomes in acute kidney injury. Crit Care 2007;11(2):R31.をもとに作成
3つある定義のうち、1つでも該当すればAKIと診断し、血清Cr値と尿量をもとに重症度を確認します。
AKIN基準の結果を看護に活かす!
患者さんの生命予後の改善や、保存的治療のみでの回復を可能にするかどうかは、早期発見・早期介入が大きく影響します。看護の現場では、日頃から尿量や血液検査データの変化に注意しましょう。
AKIが疑われる場合はスケールと照らし合わせ、ステージ1以上に該当した際は速やかに医師に報告することが大切です。
また、AKIと診断された患者さんは、急激な腎機能低下を呈するケースも少なくありません。いつも以上に尿量、バイタルサイン、浮腫などの全身症状をしっかり観察し、把握するようにしましょう。
尿量や血液検査に変動が生じて重症度に変化を認めたときは、特に注意が必要です。速やかに医師や他の看護スタッフと共有し、適切な対処が講じられるよう準備します。
引用文献
1)Bellomo R, et al : Acute renal failure : Definition, outcome measures, animal models, fluid therapy and information technology needs. The Second International Consensus Conference of the Acute Dialysis Quality Initiative (ADQI)Group. Crit Care 2004;8(4):204-12.
2)Mehta RL,et al:Acute Kidney Injury Network:report of an initiative to improve outcomes in acute kidney injury. Crit Care 2007;11(2):R31.
3)Lassnigg A, et al: Minimal changes of serum creatinine predict prognosis in patients after cardiothoracic surgery:a prospective cohort study. J Am Soc Nephrol 2004;15(6):1597-605.
4)Chertow GM, et al. Acute kidney injury, mortality, length of stay, and costs in hospitalized patients. J Am Soc Nephrol. 2005;16(11):3365-70.
●AKI(急性腎障害)ガイドライン作成委員会 編:AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016.日腎会誌 2017;59(4):419‒533.(2021年7月16日閲覧)https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/419-533.pdf