1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 栄養管理
  5. Malnutrition Universal Screening Tool(MUST)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Malnutrition Universal Screening Tool(MUST)

  • 公開日: 2022/11/20

MUSTは何を判断するもの?

 Malnutrition Universal Screening Tool(MUST)とは、BMI、体重減少、急性疾患かつ栄養摂取不足の3項目から栄養状態をスクリーニングするスケールです。英国静脈経腸栄養学会が成人を対象に作成したスケールで、在宅や介護施設などで使用されるほか、入院患者さんに対しても広く用いられています1)

 低栄養は感染症や褥瘡のリスクを高めるなど、全身にあらゆる影響を及ぼします。そのため、高齢者をはじめとする低栄養の可能性がある患者さんの状態管理や治療を行う場合には、栄養状態を適切に評価することが大切です。

 MUSTは評価項目が少なく、検査データも必要としないことから、比較的簡便かつ短時間で栄養状態をスケーリングできるため、さまざまな属性の患者さんに使用され、栄養管理の方針を決める際の指標として役立てられています。

MUSTはこう使う!

 MUSTの評価項目は、BMI、体重減少、急性疾患かつ栄養摂取不足の3項目のみです。具体的には図のような流れで評価していきます。

図 MUST

BAPEN:THE ‘MUST’ EXPLANATORY BOOKLET A Guide to the ‘Malnutrition Universal Screening Tool’ (‘MUST’) for Adults,2011,p.5-19.(2022年11月8日閲覧)https://www.bapen.org.uk/pdfs/must/must_explan.pdfを参考に作成

 低栄養のリスクが低いと判断された場合は、通常の管理で問題ないとされますが、中等度リスクの場合は慎重な経過観察を必要とし、食事摂取状況に改善がみられなければ、食事摂取量の改善や食事形態の見直しなどが行われます。そして、高リスクの場合は、栄養士や栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)が積極的に介入して、栄養状態の改善を行うことが必要とされています1)

 栄養状態は日々変化していくため、入院時などの一度のみではなく、定期的に評価して栄養管理の方針を見直すことが必要です。

MUSTの結果を看護に活かす!

 高齢の患者さんや寝たきりの患者さんなど、低栄養のリスクがある患者さんに対応するときは、MUSTを活用して栄養状態の評価を行い、全身観察やバイタルサインのチェック、体位交換などの頻度を決める際の参考にするとよいでしょう。

 評価した時点で低リスクであっても、低栄養が進行する可能性が考えられるほか、栄養状態の低下が結核などの疾患の発見につながることもあるため、定期的な評価で変化を見逃さないようにします。

 栄養状態の変化が疑われる場合は、医学的な介入が必要になることも少なくありません。早急に医師や栄養士に報告・相談して、栄養管理方針の見直しや、低栄養を起こし得る疾患の検索につなげていくことが大切です。

引用・参考文献

1)BAPEN:THE ‘MUST’ EXPLANATORY BOOKLET A Guide to the ‘Malnutrition Universal Screening Tool’ (‘MUST’) for Adults,2011,p.19.(2022年11月8日閲覧)https://www.bapen.org.uk/pdfs/must/must_explan.pdf
●日本静脈傾聴栄養学会,編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,2013.
●百崎良,他:リハビリテーションにおける栄養スクリーニング.Jpn J Rehabil Med 2017;54:82-6.(2022年11月8日閲覧)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/2/54_82/_pdf

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949